任天堂の海賊版配信サイトに対する訴訟を受けて18年続いた老舗ROMサイトがデータ配布終了宣言
by sebastiaan stam
任天堂が2018年7月末、ゲームのROMデータを違法配布している海賊版配信サイトに対して訴訟を起こし、大きな話題となりました。損害賠償の請求額は最大200万ドル(約2億2000万円)に上り、訴えられた2つのサイトは即座に閉鎖されました。この、任天堂による海賊版撲滅の動きを受けて、18年続いたROMデータ配布サイトの老舗「Emuparadise」が、「我々も変わる必要がある」と、海賊版配信をやめることを宣言しました。
EmuParadise is Changing
Spooked By Nintendo, Popular ROM Site 'Changes' After 18 Years
https://kotaku.com/spooked-by-nintendo-popular-rom-site-closes-after-18-y-1828207099
エミュレーター上でさまざまなゲームがプレイ可能になるROMデータを違法に配信するサイト「LoveROMS.com」および「LoveRETRO.co」に対し、任天堂は「2つのサイトは海賊版ビデオゲームのための最もオープンで有名なオンラインハブの1つとなっている」として訴訟を提起しました。訴えの内容は以下の記事で詳しく触れています。
任天堂が海賊版ゲームを配布する有名サイトを訴える、損害賠償額は数億円規模か - GIGAZINE
これを受け、2000年からROMデータ配布サイト「Emuparadise」を運営してきたMasJさんが「EmuParadise is Changing」と題した記事を公開。「我々は新しいスタートを切ることに決めました。引き続き情熱的なレトロゲーマーであり、レトロゲーム界隈で何かクールなことを続けて行きたいと考えていますが、今はEmuparadiseからレトロゲームを入手することはできません」と、ROMデータ配布の終了を宣言しました。
MasJさんは記事の中で「私には、年間を通して良心的にサイト運営に貢献してきてくれたメンバーの未来を危険にさらすことはできません。我々Emuparadiseは、レトロゲームへの愛と、それらを楽しむことのできる時間をユーザーに提供するために働いてきました。しかし残念ながら、現在のところ誰もが幸せになり、困ってしまうことがないようにするための方法が見つかりません」と記しています。
このMasJさんの宣言についてゲームニュースサイトのKotakuは、任天堂に訴えられた「LoveROMS.com」および「LoveRETRO.co」の運営者であるJacob Mathias氏が最大200万ドル(約2億2000万円)もの損害賠償を請求される可能性があることから「Emuparadiseの判断を責めることはできない」とコメント。また、「こういったゲームを無料でプレイできるようにすることは技術的には違法ですが、他のゲームパブリッシャーがより厳しく取り締まっていたにもかかわらず、任天堂のような規模の会社がバック・カタログをROMサイトが作成可能にしていたという事実こそが、そもそもまずいのでは」と指摘しています。
by Pat Kwon
Kotakuは利便性とアクセシビリティの観点から、ゲーム業界での海賊版問題は「違法コピーが蔓延した音楽業界の海賊版配信サイトとの戦い」とよく似ていると主張。しかし、任天堂やセガのような企業が、自社コンテンツのバック・カタログとしてSpotifyやNetflixのようなサービスを利用するという答えを導き出すことは難しいだろうとも記しており、メーカーを横断してあらゆるゲームが楽しめるようなプラットフォームが登場することは期待薄であるとしています。
なお、レトロゲームの保存活動を進めるVideo Game History Foundationの創設者であるFrank Cifaldi氏は、「ROMサイトの閉鎖は、ビデオゲーム産業があらゆるゲームを常にプレイ可能な状態にしてこなかったからこそ、多くの人が大きな出来事であると感じているのだと思います。しかし、過去のゲームの99%が海賊版であり、(海賊版でプレイする以外の)選択肢はほとんどありませんでした。忘れ去られようとしているゲームにとって海賊版が唯一生き残る道でした。ROMサイトはコードを保存し、誰もがアクセス可能な状態に保つ唯一の存在でした。エミュレーターの作者は讃えられるべき存在です」とTwitter上で主張しています。
The pirates are the only ones keeping these games alive, both literally and metaphorically: they are the ones who saved the code, and they are the ones who keep them accessible so that people remember them.
— Frank Cifaldi (@frankcifaldi) 2018年8月8日
さらに、ゲームのダウンロード販売プラットフォームであるGOGなどは、エミュレーター文化がなければビジネスになると誰も考えなかった分野であり、エミュレーターやROMデータ自体が非難されるべきではないとし、批判されるべきはあくまでもROMデータの配信を通じてお金を稼ごうとする人々であると記しています。
I am NOT. ADVOCATING. CASUAL. PIRACY. I especially am not a fan of websites generating ad revenue by offering downloads of other people's work without permission. In fact I doubt any of these shutdowns would be happening if money was not involved.
— Frank Cifaldi (@frankcifaldi) 2018年8月8日
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