火事や水害でボロボロになった紙幣を無料で補償してくれる公的機関とは?
アメリカ合衆国の紙幣を印刷する製版印刷局には「The Mutilated Currency Division(損傷紙幣課)」と呼ばれる部署があります。火災や水害でぼろぼろになった紙幣を数え上げて、無償で元の新しい紙幣に取り替えるという公的サービスを提供する損傷紙幣課で、具体的にどのような業務が行われているのか、Great Big Storyがその姿に迫っています。
Mutilated Money? This Place Will Give You a Fresh Stack - YouTube
アメリカ合衆国財務省内の政府機関である製版印刷局
製版印刷局の中に損傷紙幣課があります。火事で焼けてしまったり、水害で水びたしになったり、動物や虫に食べられてしまったことでボロボロになった紙幣を数えて、同額分を補償するサービスを提供している政府組織です。
オフィスでは、20人ほどの職員が各作業ブース内で損傷紙幣の調査を行っています。
損傷紙幣課のアシスタントマネージャーを務めるエリック・ウォルシュ氏
ウォルシュ氏によると、損傷紙幣課には「だめになった紙幣をなんとかしてほしい」と年に2万3000件以上の問い合わせがあり、毎年4000万ドル(約44億円)に相当する損傷紙幣を処理しているとのこと。
アメリカの現行紙幣と確認できる損傷紙幣の51%以上がその形を半分以上とどめている場合、損傷紙幣課は金額をすべて数え上げて財務省に報告し、確認できた紙幣と同額の小切手を持ち主へ送ります。ただし、損傷紙幣のほとんどが小さな切れ端ばかりだと補償が下りないことも。損傷紙幣の保証はすべて公的サービスとして無償で行われます。
損傷紙幣課は、アメリカ政府が紙幣の発行を開始してから間もない1866年に設立されました。
150年以上も歴史がある損傷紙幣課では、紙幣を数えるためにはさみやデザインナイフ、のりなどを使っていました。
今でも損傷紙幣課で使われている道具は基本的に変わっていません。
損傷紙幣の調査で最も難しいケースは、水にぬれてしまい乾いて固まった紙幣だとのこと。よくあるのが「犬が紙幣を食べてしまった」というもので、一年に数百件の事例があるそうです。他にも、うっかりオーブンに入れてしまったというケースや、濡れた紙幣を乾かそうと電子レンジに入れた結果燃やしてしまったというケースが多いようです。
これまでの損傷紙幣課で史上最も難しかったといわれる事例が、1980年代に牧場で働く男性が財布を牛に食べられたというもの。
男性は農作業の際、うっかり牧場に財布を落としてしまっていました。
気付いたときには、既に財布は牛に食べられてしまっていたとのこと。
男性は自分の財布は牛が食べたと確信し、すぐに牛の腹を開いて胃袋を取り出したところ、どろどろになった自分の財布を発見。なんとかして財布の中に入っていたお金が帰ってこないかと、損傷通貨局へ財布を送ります。
牛の胃液で消化されかけていた財布は損傷通貨局によって確認され、男性はアメリカ合衆国製版印刷局から600ドル(約6万6000円)の小切手を受け取ったとのこと。
アメリカではここ数年ハリケーンや自然火災による被害が増えていて、それに伴って損傷紙幣の問い合わせも増えているとウォルシュ氏は語ります。
「火事や水害の後にお金を物理的になくしてしまった人は、損傷紙幣課のサービスを受けることで経済的な補償を少しでも得られます。普段は必要ないようなサービスですが、何かが起こった時のために私たちがいます」というウォルシュ氏の言葉でムービーは終わります。
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