「サマータイムが本当に必要か？」EUで世論調査が開始される

サマータイム(夏時間)は1年の間で日照時間の長い夏の期間だけ時間を早めるというものです。しかし、サマータイム制度で時刻を変更することは、さまざまなリスクを抱えていると指摘する声が数多くあり、制度自体を否定する声が日に日に大きくなっています。サマータイムを採用しているEUでは、フィンランド国民から「サマータイムを廃止するべき」との大量の署名を受け取ったことをきっかけに「サマータイムが本当に必要か？」について本格的に議論されるようになり、EU加盟国の人々の意見を探るべく世論調査が開始されました。

The European Commission is polling citizens if daylight savings should be abolished - The Verge
https://www.theverge.com/2018/7/5/17536400/european-union-polling-citizens-daylight-saving-time-necessary

EUに加盟する28カ国は全て夏の期間だけ時刻が1時間早められ、冬になると元に戻るサマータイム制度を導入しています。サマータイムを導入することで、日照時間の長い夏は、早い時間に就寝することで電力使用量の節約につながったり、明るい時間帯に仕事や学業を終え帰宅することで交通事故の低下につながったり、暗い時間に営業する店舗数が減ることで犯罪低下につながったりするなど、多くの面でメリットがあると期待されていました。

しかし、サマータイムには問題点があると指摘する研究が後を絶たず、「サマータイムを導入することで、逆に電力使用量が増加する」と言ったものや、「サマータイムの導入で体内時計を大きく狂わせることになり、長期的に見ると健康被害を生む可能性がある」と指摘する声があがっています。

また、2018年初頭にフィンランドでは、「EUはサマータイムを廃止するべき」とした7万人以上の署名を集めたことで話題となりました。実際、フィンランドの位置する北極圏の国々には、夏に一日中明るいままの白夜、冬には一日中太陽が昇らない極夜があり、サマータイムの存在意義が皆無に等しい自然環境となっています。これにもかかわらず、全てのEU加盟諸国はサマータイム制度を順守しないといけないことから、多くのフィンランド国民は「不公平だ」と考えていました。

通常、1国の意見だけでEUを動かすことは非常に難しいものですが、健康被害の可能性を指摘する研究者たちの意見も相まって、フィンランド国民の署名はEUの政策を握る欧州共同体(EC)を動かすことに成功。ECの中で「サマータイムの在り方」が大きく議論されることになりました。

そして、ECはEUに住む人々の意見を探るべく、サマータイム制度を廃止すべきか世論調査を開始しています。この投票は2018年8月16日まで行われており、投票結果によっては「EUがサマータイム制度を廃止する」という判断が下されることになるかもしれません。