サイエンス

ペニスと陰嚢を移植して性器を再建し性機能も回復させる手術が世界で初めて行われる


戦争で性器を損傷した男性兵士がペニス・陰嚢・腹壁などを移植することで性器を再建し、排尿機能や性機能を回復させるための手術を行いました。

Johns Hopkins Performs First Total Penis and Scrotum Transplant in the World - 04/23/2018
https://www.hopkinsmedicine.org/news/media/releases/johns_hopkins_performs_first_total_penis_and_scrotum_transplant_in_the_world

US soldier gets world's first penis and scrotum transplant - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-43873058

戦地に赴いた兵士の多くが見える傷・見えない傷を負います。時に即席爆発装置によって性器の一部あるいは全部を失う人も存在し、2016年には陰茎の移植手術が成功していますが、新たに陰茎・陰嚢を含めた全生殖器の移植手術がジョンズ・ホプキンズ大学によって行われました。

W.P.アンドリュー・リー医師らのチームは形成外科医9人と泌尿器科の医師2人によって構成され、3月26日、14時間にも及ぶ手術を成功させました。ドナーから患者に移植されたのはペニス、睾丸を除く陰嚢、そして部分的な腹壁です。なお、睾丸は倫理的な問題によって移植されませんでした。


アフガニスタンで傷を負い、手術を受けた退役兵士の男性は「これは本当に深い傷で、簡単に受け入れられるものではありませんでした」「術後初めて意識を取り戻した時、ようやく自身を取り戻し、自分が普通になれたのだと感じました」と語っています。男性は回復しており、近いうちに退院する予定。6カ月~12カ月で完全に回復できるものと見られています。

ペニスの再建手術は、体の他の部分の組織を使って行うことも可能ですが、勃起のためには人工的なインプラントが必要であり、また感染率も高まってしまいます。加えて、兵士の中には体の他の部分にも傷があることで移植が難しいこともあるとのこと。


他人の体から体のパーツや組織を移植する「血管柄付複合組織移植」の場合、移植パーツに肌・筋肉・腱(けん)・神経・骨・血管などを含むことから拒絶反応が問題となるため、免疫抑制薬の必要が出て来ます。リー氏のチームは、これら免疫抑制薬の量を最小化するための免疫調整プロトコル開発しました。

形成外科医のリー医師によると、兵士が性器を損傷することは、戦争における「隠れた傷」として存在するとのこと。2014年のシンポジウムで兵士が負う性器の損傷がいかに本人のアイデンティティや自尊心、他者との関係を傷つけるかということを配偶者・家族・介護者から聞いたことが、今回の移植手術へとつながったようです。

左から2番目の男性がリー医師。


「移植手術によって、この若い男性の正常な排尿機能・性機能を回復させることができることを願っています」と語りました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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