飛行機内でインフルエンザなどに感染するリスクは低いと研究者が指摘
多くのメディアが飛行機内の感染からパンデミックが起こるという報道を行っていますが、新たな研究によると、飛行機の客席内にインフルエンザなどの呼吸器感染症に感染している乗客がいたとしても、感染者の前後左右に座らない限り、病気がうつるリスクは低いことが示されています。
Behaviors, movements, and transmission of droplet-mediated respiratory diseases during transcontinental airline flights | Proceedings of the National Academy of Sciences
http://www.pnas.org/content/early/2018/03/13/1711611115
No, One Sick Passenger Won't Infect Everyone on the Plane
https://www.livescience.com/62060-respiratory-viruses-airplane-transmission.html
エモリー大学のヴィッキー・ストーヴァー・ハーツバーグ氏らの研究によると、呼吸器感染症に感染している乗客の半径1m以内(前後左右の座席)に座っている人だけが病気をうつされるリスクが高く、それ以外の座席の乗客に感染する可能性は非常に低いとのことです。
アメリカ感染症学会のスポークスマンであるアメッシュ・アダリヤ博士は「メディアの報道では、飛行機内での感染がパンデミックの原因だと大きく報道されていますが、本当に感染症を伝播させているかの確証はありませんでした。しかし、この研究では、すぐ近くに座っている人だけが、呼吸器感染症をうつされるリスクがあることを示しており、機内の全員に影響を及ぼさないことがわかっています。このため、安心して飛行機に乗れるはずです」と語っています。
これまで、インフルエンザウイルスなどによる機内感染のリスクは、ほとんど知られていませんでした。そこで研究チームはインフルエンザの流行時期に3.5時間~5時間のフライトを調査のため10回行ったとのことです。この10回のフライトの内、7回のフライトは満員で、残り3回のフライトも空席はわずかだったことが報告されています。
研究者らはフライト中の客席内で人々が座席を離れてどこに移動したか、何秒離れていたか、他の人とやり取りした頻度を記録しており、さらに離陸前、飛行中、着陸後に「客室の空気」「シートベルトのバックル」「トレイテーブル」「お手洗いのドアノブ」など、ウイルスに汚染された可能性のある場所からサンプルを取得したそうです。研究によると、取得したサンプルにウイルスの存在を示す確たる証拠は得られなかったとのこと。
ハーツバーグ氏らの研究チームは、収集した情報を使用して、航空機の中央にある通路沿いの座席にインフルエンザ感染者が座っていると仮定し、ウイルスがどのように伝播するかをコンピューターでシミュレーションしました。中央の通路沿いの座席に感染者を配置した理由は、客室内で最も多くの人が通り、ウイルスを共有する可能性が最も高くなることが理由です。なお、客席内で座席を離れた乗客は、通路座席に座っていた人のうち80%、中央の座席に座っていた人のうち62%、窓際席に座っていた人のうち43%で、シミュレーション内でもこのモデルを使用しているとのこと。
このシミュレーションモデルに基づいたシミュレーションが行われた結果、インフルエンザなどのウイルスに感染する可能性が高かったのは、感染者の半径1m以内(前後左右)に座っていた乗客で、感染率は約80%でした。それ以外の座席に座っていた乗客の感染率は3%未満であり、隣接する座席とそれ以外の座席では極端に確率が変化することが示されています。
アダリヤ博士は「たとえ隣の席の乗客にインフルエンザなどの感染症の疑いがある場合でも、座席を変更することはできません。しかし、いくつか感染を回避する方法があります。1番目は感染者から顔をそらすこと。2番目は顔や目に触らないこと。3番目は可能なかぎり他の乗客が触れる場所は触らないようにし、触った場合は消毒用アルコールを使うことをおすすめします」と語っています。
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