Apple Watch用の心電図測定バンドが高カリウム血症の測定を可能に
血中カリウム濃度が正常値より高い「高カリウム血症」は重篤な不整脈による心停止につながる可能性があり、自覚症状がないことが多いとされる厄介な病気です。AliveCorによると、Apple Watchで心電図を測定できる「KardiaBand」に新しいアルゴリズムを搭載することで、高カリウム血症の判定を高い精度で行うことが可能になったとのことです。
Apple Watch wristband sensor claims to detect potassium in your blood — without needles - The Verge
https://www.theverge.com/2018/3/12/17109036/apple-watch-kardiaband-alivecor-ekg-reader-hyperkalemia-health-artificial-intelligence
KardiaBandはApple Watch用のバンドですが、バンドに心電図を測定するためのセンサーが付いており簡単な操作で心電図の取得ができるというもので、アメリカ食品医薬品局(FDA)の認証を受けています。
KardiaBand – AliveCor Store
2018年3月11日(日)にフロリダ州で開催されたアメリカ心臓病学会(ACC)において、KardiaBandを開発するAliveCorのCEOであるヴィック・ガンドトラ氏がメイヨー・クリニックで行われた研究と同じ技術をKardiaBandに使用することで、高カリウム血症の判定が可能であることを発表しました。高カリウム血症は糖尿病や脱水症状、慢性腎臓病などによって引き起こされ、重篤な不整脈による心停止につながる可能性がある病気ですが、一般に自覚症状はないとされています。
By Tripp
血中のカリウム濃度が高くなると、心臓細胞などの細胞の電気的な活動が妨害されますが、同時に心電図に変化を与えるとのことです。ガンドトラ氏によると、心電図の波形パターンを読み取ることで高カリウム血症を検出できると考え、AliveCorとメイヨー・クリニックが共同で研究し、KardiaBand用の新しいアルゴリズムを開発したそうです。
このアルゴリズムは人工知能(AI)が心電図を分析し、高カリウム血症かそうでないかを判定するものです。AIの学習には23年に渡って収集された400万の血中カリウム濃度の測定値とそれに紐付く200万の心電図データを使用しているそうで、KardiaBandは約90~94%という高い精度で高カリウム血症を検出できたと報告しています。
従来研究の中には心電図から高カリウム血症を読み解く方法は優れた方法ではないとするものも存在しますが、バージニア大学医学部のウィリアム・J・ブレイディー教授は、「異常のない心電図であっても高カリウム血症を患っているケースがあることは研究により明らかになっているものの、通常の高カリウム血症の場合は心電図に明らかな異常を引き起こすことがわかっているので、血液検査を行う前に心電図を見て症状の有無を判断しています」と話しており、現場レベルでは高カリウム血症の検査に心電図が用いられていることを明かしています。
By Juhan Sonin
ガンドトラ氏によると、高カリウム血症を判定する新技術がFDAの承認を得ていないとのことで、実際にKardiaBandに搭載されるまでには時間がかかると説明しています。今後承認を得るためには多くの臨床試験を行っていく必要があるようです。
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