ゲノム編集技術「CRISPR」を使い簡単な検査でHPV・デング熱・ジカ熱の検出が容易となった安価なデバイスが開発される


遺伝子編集技術「CRISPR」を使った簡単な検査で、「HPV」「デング熱」「ジカ熱」の有無を迅速に診断できる安価なデバイスが開発されているとのことです。これが実現すれば、発展途上国で「HPV」「デング熱」「ジカ熱」などのウイルスを迅速に検知し対応する方法に革命をもたらす可能性があるとされています。

New CRISPR tools can detect infections like HPV, dengue, and Zika - The Verge
https://www.theverge.com/2018/2/15/17012866/crispr-detectr-sherlock-zika-dengue-hpv-diagnostic-tools

CRISPRのパイオニアであるJennifer Doudna氏とFeng Zhang氏はScienceにそれぞれ論文を掲載しています。Doudna氏のチームによる論文「CRISPR-Cas12a target binding unleashes indiscriminate single-stranded DNase activity」では、「DETECTR」と呼ばれるシステムが開発されており、このシステムでは人から取得したサンプル内のさまざまな種類のHPVを正確に識別できるとのこと。また、「Multiplexed and portable nucleic acid detection platform with Cas13, Cas12a, and Csm6」では、Zhang氏のチームが2017年に発表した、人のサンプルから「ジカウイルス」「デングウイルス」などの有害な細菌を検出するために示された「SHERLOCK」のアップグレードバージョンについて記述されています。

By CDC Global

これらの2つの論文について、ロチェスター大学の助教のMitchell O’Connell氏は「これらの研究は現在の技術よりも広く普及し、よりコストパフォーマンスの高い診断を可能にします」と語っています。科学者たちは、CRISPRを使った遺伝子コードを編集するメカニズムを作り出し、病気の治療に役立てようとしているそうで、特に「CRISPR/Cas9」と呼ばれるゲノム編集ツールがよく知られています。これ以外にもさまざまなタイプのCRISPRが存在するとのことです。

Doudna氏のチームが使用したCRISPRは「CRISPR/Cas12a」と呼ばれています。「CRISPR/Cas12a」が二本鎖DNAを切り取ると、一本鎖DNAの破壊を開始するという興味深いことが起こることを発見しました。共同研究者のJanice Chen氏は「こいつはクレイジーだ!」と声を上げるほど、あまりに予想外の発見に驚きを隠せなかったようです。そして、この現象はDNA配列を検出するための全く新しい手段を提供することにつながります。

Chen氏らはCas12aを「DETECTR」と呼ばれる診断ツールに組み込むことを決めました。CRISPRは人の細胞内のHPV DNAを検出するようにプログラムされており、HPV DNAを検知すると、蛍光シグナルを放出する一本鎖DNAの「レポーター分子」を切断します。細胞がHPVに感染している場合、科学者はこのシグナルを見るだけで診断が可能になるというわけです。DETECTRはHPV16を100%、HPV18を92%の高い精度で検出できるとのことです。なお、これらの2つのHPVは男性と女性にがんを引き起こす可能性があるため、特に危険とされています。

By Ed Uthman

Chen氏は「技術的な進歩も素晴らしいことですが、DETECTRのテストは1ドル(約110円)以下で、約1時間ほどの時間で診断できます。これは他のテストと比較しても安価で早い」と語り、コストパフォーマンスがとても高いことが重要だとしています。現在Chen氏らは、蛍光シグナルを誰でも簡単に読み取れるハードウェアの開発に取り組んでいます。

DETECTRと比較して、Zhang氏の論文に記載されている診断ツール「SHERLOCK」は、実際の現場での利用に近づいています。このシステムは、Cas12aを含むさまざまなCRISPRの酵素を使用しています。2017年には「ジカウイルス」、「デングウイルス」、および他の細菌の遺伝子配列、がんの突然変異に関する配列を見つけるために「CRISPR/Cas13a」を使用することを発表しました。現在「SHERLOCK」は感度が100倍に高められており、「ジカ熱」や「デング熱」などの複数のウイルスをたった1つのサンプルで同時に検出します。

「さまざまなCRISPRの酵素を1本のチューブに入れることで、互いの酵素が協力して働き、私たちが通常得ることのできない情報を伝えてくれるのは、素晴らしいことです」とZhang氏の共同研究者Jonathan Gootenberg氏が述べています。

SHERROCKはDETECTRのような蛍光シグナルを使用しますが、Zhang氏のチームは妊娠検査と同様の紙切れを開発しました。それは特別な装置を必要としないため、とても使いやすくなっています。O’Connell氏は「災害時に電気がない中でも検査でき、その場で処分もできます」と語っています。なお、SHERLOCKの検査に必要な紙はわずか2ドル(約210円)とのことです。


DETECTRとSHERLOCKは、実際の患者に使用する前にこれらのシステムが本当に高い精度を持っているかを確認する必要があるなど、数多くのタスクが残っています。しかし、これらの技術が利用できるようになれば、「人間の健康と社会に影響を及ぼす可能性は高い」とZhang氏の共同研究者Omar Abudayyeh氏が語っています。

・関連記事
遺伝子編集技術「CRISPR」とは何かがわかるムービー、そして人類の未来はどうなるのか? - GIGAZINE

ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」を用いて中国ではすでに86人の遺伝子改変が行われたことが判明 - GIGAZINE

ヒト受精卵へのゲノム編集による遺伝子改変にアメリカの研究チームが成功、一体何を実現できるのか? - GIGAZINE

「CRISPR」をもとに遺伝子編集を進歩させる2件の研究成果がほぼ同時に発表される - GIGAZINE

遺伝子編集技術「CRISPR-Cas9」でアルゴリズムの予測外の領域での変化発生の可能性が指摘される - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1j_ty