サイエンス

アウトドアのプロが教える「湧き水を浄化する低価格で安全な方法」とは?

By Alan Levine

山や森など奥地でのアウトドアでは、目の前に川や湖など浄水設備を通さない自然の水があふれていることがあり、「これぐらい澄んでいる水なら飲んでも、病原菌がいなくて美味しそう」という誘惑にかられてしまうかもしれません。基本的に、浄水していないの生水を飲むのは「科学的に危険」です。しかし一方で、極端に「生水を飲むには高級な浄水フィルターを使って飲まなければ危険」という考え方もまた科学的根拠がないとのこと。アウトドアの情報サイトOutside Online.comは、生水を科学的で安全に飲む方法を紹介しています。

Evidence-Based Medicine in the Wilderness: The Safety of Backcountry Water - Wilderness & Environmental Medicine
http://www.wemjournal.org/article/S1080-6032(04)70498-6/fulltext

Actually, Slate, You Really Should Filter Your Water | Outside Online
https://www.outsideonline.com/2279401/actually-slate-you-really-should-filter-your-water

Outside Online.comを運営しているWes Siler氏は自身のコラムで、「率直に言って、アウトドアを楽しんでいる時にその場にある水源から水を飲む時は、フィルターなどで処理するべきである」と主張しています。そのことを警告するための例として、最初にSiler氏の友人の体験談を紹介しています。その友人は2017年にカリフォルニアでキャンプをした後に、水などで感染する寄生虫を体内に入れることが原因で起きる病気、慢性的なジアルジア症に感染してしまいました。感染してしまった友人は、その年を通して予想不能の下痢に襲われる度にトイレへ駆け込まなければ行けなくなりました。これは時代にかかわらず生水には寄生虫や病原菌がいるということを示しています。

By wanderingchiara

一方で、生水は安全と主張する人もいます。生物学者のEthan Linck氏は、「奥地の水源の水に含まれる汚染物質は非常にまれであることが2004年のThomas R. Welch氏が執筆した論文に記載されており、奥地の生水の多くは安全です。私は、アメリカとカナダでアウトドアをする時はいつも水を浄化していません」とし、生水は安全であることを主張しています。

この主張に使われたWelch氏の論文は、カリフォルニア州にある山の生水の水質を調査したものです。その中では、水質調査した生水には有害な寄生虫は微量にしか含まれておらず、飲料水としての汚染度合いは「人が7リットルほど飲むと体調を崩す」程度なので、「奥地の水源の水に汚染物質が含まれることは非常にまれ」という内容が示されています。

By Jim Dollar

このLinck氏の主張に対してSiler氏は、「Welch氏の論文を引用して生水は安全」という考え方は疫学的証拠がないものであると反論しています。「2004年のWelch氏による論文には、アメリカの奥地の水源は本質的に安全と記述されているとはいえず、飲んでも大丈夫であるという疫学的証拠はない」という内容だとSiler氏は主張。

Siler氏は、すべての奥地の水源がこの論文で調査した水源と同じ水質であるとは限らないとし、「この論文の結果で調査した西海岸のカリフォルニア州の水源の水質1箇所のみ」に依存しており、アメリカやカナダなどの他の複数の地域の水源をまたいで調査したわけでないので、「この論文の結果を約4000km離れたアメリカの東岸側の水源と同じ水質とするのは間違っている」と主張しています。

Siler氏は、「体調不良の原因になる病原菌の汚染度合いは流動的であることを知っておく必要があります。汚染の度合いは、水源の周りの雨量や温度、気象、季節そして動物の行動により変化します。また、論文で調査された水源1箇所の汚染度合いは毎月、毎年変化するでしょう」とのこと。

By chapstickaddict

一方で「奥地の生水を飲むには、約1万円以上(99ドル)する浄水フィルターを使って飲まなければ危険」という極端な考え方も疫学的に根拠がないとのこと。Siler氏は、手ごろな出費で奥地で生水を飲む方法として、2009年に「Centers for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病予防管理センター)」(CDC)が示した水の浄化ガイド「Drinking Water Treatment Methods for Backcountry and Travel Use(奥地および旅行用飲料水処理方法)」を挙げています。

Drinking Water Treatment Methods for Backcountry and Travel Use|Centers for Disease Control and Prevention
(PDFファイル)https://www.cdc.gov/healthywater/pdf/drinking/Backcountry_Water_Treatment.pdf

CDCが示したガイドによると「アウトドアの時に1粒約54円(50セント)で市販されているChlorine Dioxide(二酸化塩素)のタブレットを生水に入れることで、人にとって有害な寄生虫類やバクテリア、アメーバ類そしてウィルスなど防ぐことが可能」とのこと。


また、「ストーブを持っていれば、生水を加熱することにより、ほぼ無料で効果的に殺菌できる」とのこと。


Siler氏は「CDCによると、子どもが生水をそのまま飲んでジアルジア症になると、肉体や精神の成長が阻害され、発達の遅れ、そして栄養失調などの重症に結びつくことがある」と主張し、生水をそのまま飲むことに対して警告しています。

By lisadonoghue(away)

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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