デザイン

UXに「権威の原則」を当てはめてウェブサイトの信頼性を高める方法


ユーザービリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセン氏が設立したニールセン・ノーマン・グループが「権威の原則」をUXに利用してウェブサイトの信頼性を上げる方法を公開しています。

The Authority Principle
https://www.nngroup.com/articles/authority-principle/


心理学者のレオナルド・ビックマン氏が行った実験により、「ユニフォーム効果」というものが確認されています。1974年、ビックマン氏は3パターンの衣装を着た人に、歩行者を呼び止めて「向こうにいる男性に駐車のための1セントを与えてください」といった頼みごとをしてもらいました。この時の3つの衣装とは「ガードマンの制服」「牛乳屋さんの制服」「スポーツジャケットとネクタイという一般人の格好」というものでした。実験の結果、歩行者の75%がガードマンの指示には従った一方で、牛乳屋さんに従ったのは47%、一般人の格好の人に従ったのは29%だったことから、「人は権威・権力のあるように見える人に従いやすい」と言われています。

社会心理学者のロバート・B・チャルディーニ氏も著書「影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか」の中で影響の6原則の1つとして「権威」の力を挙げています。チャルディーニ氏の「権威の原則」の定義は、権力を持つポジションにいることが多い人、つまり政治の指導者、法執行における代表、医者、弁護士、教授の他、さまざまな分野の専門家などを指します。

人は物事の判断に際してバイアスがかかりやすく、制服を着ることで「知恵と力のあるポジションにいる」、すなわち「よりよい結果を生み出せる」ということを暗示的に示せば、より簡単な判断を好む人間はその人の指示に従ってしまうというわけです。これは、子どもが親や教師の判断や教える内容を信じるのと同じこと。大人になって疑う力を身につけてからも、人は自分自身よりも医師や弁護士、科学者といった人々を信頼する傾向にあります。


このことが最も明示的に示されたのは心理学者のスタンレー・ミルグラム氏が行ったミルグラム実験と言えます。

ミルグラム氏は、ユダヤ人を絶滅収容所に輸送した責任者の心理に迫るため、人々を「生徒役」と「教師役」に分けて実験を行いました。この実験の目的は「学習における罰の効果を見ること」だと教師役の被験者らには伝えられていました。

実験では、教師役の被験者らは最小15Vから最大450Vまでの電気ショックを与えるボタンの前に座らされ、別の部屋にいる生徒役が問題に間違えると15Vずつ電圧があがるボタンを押すよう指示されます。この時、実際には生徒役に対して電気が流されるわけではなく、ボタンが押されるとあらかじめ録音されていた生徒役の絶叫が流れるようになっていましたが、教師役は生徒たちが本当に苦しんでいると思っているわけです。

もちろん教師役の被験者は実験の続行を拒否しようとしますが、このとき、白衣を着た「権威ある」博士らしき男性が登場し、超然とした態度で以下のように教師役に告げます。

「続行してください」
「この実験は、あなたに続行していただかなくてはいけません」
「あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです」
「迷うことはありません、あなたは続けるべきです」

実験の結果、教師役の被験者が最後までボタンを押す確率は何と65%に達したとのこと。実際の実験の様子は以下のムービーから見ることができます。

Milgram experiment - Jeroen Busscher - YouTube


ミルグラム実験が示すのは、例え道徳に反することであっても、人は意志決定の際に権威に頼る傾向にあるということ。しかし、現実に人々が遭遇する「判断を必要とする状況」には倫理に反しないことも多々あり、専門家の意見を聞くことは解決策の1つとして大きな効果を発揮するもの。特に金融サービス・法律サービス・医療といった専門性の高い分野では、人々は複雑かつ大量の情報を比較して判断を行う必要があります。そしてインターネット上でこのような比較を行う際、ユーザーは「権威」の姿を探す可能性があります。

ニールセン・ノーマン・グループによると、UXのプロは、権威原則を利用することでウェブデザインの信頼性を高められるとのこと。具体的には、以下のような素材を用いることで、信頼性を高めることができるとされています。

・「スーツを着た弁護士」「白衣を着た科学者や医者」といった権威のあるポジションにいることがわかる人々の写真
・医術の象徴であるアスクレピオスの杖や法の象徴である正義のはかりなど、権威のシンボル
・評判のよいロゴ
・専門家・有名人や権威者からの支持を示すものや引用

例えば弁護士事務所のウェブサイトでは、ウェブサイトのトップにスーツを着た弁護士の写真で権威を示し、その下には他の弁護士の写真が実務年数とともに掲載されています。


また、有名なニュースサイトや出版社が注目していることをロゴで示し……


最後にMcAfeeのロゴを提示することで「このウェブサイトは守られている」ということを示します。


また、スタートアップのプランニングを行うサービスPassion Plannerのウェブサイトでは、Business InsiderやAmazonレビューの引用が掲載されています。


Elena’s Home of Finest Filipino Foodsというレストランのウェブサイトには、サイトの一番上にテレビ番組のホストであるGuy Fieri氏がお店を取材した時の写真、その下には直近に受賞したローカルな料理賞のマークが示されています。


不動産投資家に対して地域の犯罪データを提供するNeighborhoodScoutのウェブサイトには、アメリカの連邦機関のような「権威」のロゴが並ぶことで、「権威のある機関が使っているサービスである」ということをアピール。


もちろん、このようなUXは倫理に反しない範囲で使う必要があります。写真やロゴ、引用などが虚偽であったり、真実であっても「ファッションデザイナーが勧める数学教材」など関連性の小さなものであれば正当な評価を示すものではないと言えます。また、ロゴを掲げることでクライアントの秘密保持契約に違反しないか、ということも考慮すべき点。もし自分のデザインに疑念が生じた時は、「そのデザインが『自分がされたら嫌なこと』をユーザーに強要しようとしていないか」と自問自答すべきとのことです。

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in デザイン, Posted by darkhorse_log

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