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ビル・ゲイツ氏も関心と予算を向ける「CO2固定化事業」のために巨大なプラントが建設される


世界有数の資産家となったMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏は、妻のメリンダさんとともに世界最大の慈善基金団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を創設してさまざまな慈善事業に資金を投じています。いま、ゲイツ氏が関心を寄せている事業の一つに、大気中の二酸化炭素を吸着して固定化し、燃料などを作り出すというものがあり、カナダでは実際に巨大な二酸化炭素固定化プラントが建設されています。

How Bill Gates aims to clean up the planet | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2018/feb/04/carbon-emissions-negative-emissions-technologies-capture-storage-bill-gates

地球温暖化の原因の一つであるとされる温室効果ガス・二酸化炭素の空気中濃度を下げるために、世界各地でさまざまな研究や取り組みが進められています。そんな中では、「空気中の二酸化炭素を分離して再び大気に放出しない」という手法の研究も進められています。

カナダ西部のブリティッシュコロンビア州にあるスコーミッシュという都市に、以下のような巨大な施設が建設されています。この施設では、いくつも並ぶ巨大なファンで大気を引き寄せ、内部にある特殊な装置を使うことで大気から二酸化炭素と水を分離。そして分離した二酸化炭素と水の電気分解によって得られる水素をつかうことで、自動車やバスなどを走らせることができるバイオ燃料を作り出すことが可能です。


内部の仕組みの概念はこんな感じ。この装置では、二酸化炭素濃度が400ppmという大気を特許技術である特殊なフィルタに通すことで二酸化炭素を分離・固定化して濃度を100ppm程度にまで下げて再び送り出すことが可能。この手法は「ダイレクト・エア・キャプチャ (DAC)」と呼ばれ、問題とされる大気中の二酸化炭素濃度を文字どおりダイレクトに捕らえて固定化し、他の用途に利用することが可能になります。


この事業は、2009年に設立されたスタートアップでスコーミッシュに拠点を構えるCarbon Engineeringが進めているもの。ここで使われている技術は特別新しいものであるとはいえませんが、いくつかの古い技術を組み合わせることで問題を解決しようというもので、ゲイツ氏や石油業界の大物であるノーマン・マレー・エドワーズ氏などがこの事業に資金を投じています。

Carbon Engineering: CO2 capture and the synthesis of clean transportation fuels
http://carbonengineering.com/


Carbon Engineeringでは、カリフォルニアのエネルギー関連企業「Greyrock」とタッグを組み、大気中から集められた二酸化炭素、そして水を分解して作られる水素をもとにバイオ燃料を作り出すAir to Fuels (A2F)と呼ばれるプロセスの実現に成功しているとのこと。Carbon Engineeringのジェフ・ホルムズ氏は「A2Fはゲームチェンジャーとなる潜在性を秘めたもので、大規模化によるスケーリング効果によって安価な再生可能エネルギー源を実現することができます」と述べています。

このプロセスが実現すると、地球上で作り出される二酸化炭素の3分の1を排出しているといわれる交通機関からの二酸化炭素を固定化し、燃料として「リサイクル」することでトータルの二酸化炭素排出量がゼロになる「ゼロ・エミッション」を実現し、さらには徐々に大気中の二酸化炭素を減少させる「ネガティブ・エミッション」に近づくことも可能になるとのこと。


もし実現すれば画期的な二酸化炭素対策という事になるDAC技術ですが、その実現にいたる道のりは必ずしも平坦ではなく、その実効性に疑問を投げかける科学者も少なからず存在しているとのこと。科学誌「Science」に掲載されたThe trouble with negative emissions(ネガティブ・エミッションに関する問題)と題された論文では、2名の専門家が「ネガティブ・エミッション技術に反対するものではない」としながらも、それは「決して大規模な結果を持つものではない」という前提で取り組みが行われるべきであると述べ、そのような視点を持たないことは「重大なモラルハザードである」と指摘しています。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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