取材

全くの素人が「自転車世界一周報告会」というイベントをやり遂げるまで


「人生最良の日」だったかもしれません。口下手でそんなキャラでもないのに人前で話をしてみたかった。やるかやらないかと選択肢。やるを選んだらあとはそこを目指すだけ。だから、1つずつ手順を踏んでいきました。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。2016年10月16日(日)に東京の御徒町で旅の報告会をやりました。たくさんの方に足を運んでいただき感無量でした。

◆決意する
ある人は報告会。ある人は写真展。長い長い旅を終えた後、友人のチャリダーたちは何かしらイベントをやっていました。だから私も興味はありました。「卓也さんも何かやりましょうよ。チャリダーマンなら会場埋まりますよ」と声をかけてくれる友人もいました。


2016年7月29日の帰国で旅は終わりました。150カ国の訪問と13万1214.54kmを走破という自転車世界一周でした。

150カ国と13万1214.54kmを走破した自転車世界一周における記録の数々 - GIGAZINE


しばらくは地元の福岡にいたのですが、8月のお盆を過ぎて長崎と愛媛にいる祖母に会いにいきました。旅中は後回しで約10年振りでした。それにも関わらず元気でいてくれました。平均寿命に差し掛かっているというのに。「ひとまず区切りをつけました」と伝えることができました。

父方の祖母が愛媛に。


母方の祖母が長崎に。


その旅では大阪にも立ち寄りました。いつものドヤ街に部屋を確保して、旅先で会った友人と再会していました。京都や奈良にも足を運びます。お世話になっていたアウトドアメーカーのモンベルにも挨拶することができました。出会いから10年以上は経っているでしょう。旅先からのメールも必ず返してくれました。いつも同じ方でした。


「ようやくですが終わることができました」と報告がてら雑談。これまでの旅のエピソードから新しい道具のアイデアまで大いに盛り上がりました。最後にこれからの予定を訊かれて「1度でいいから報告会をやってみたいんですけどね~」と返すと「モンベルの店舗にイベントスペースがありますがどうでしょう?」と予想外の提案。この流れに乗るしかありません。

◆遠藤隼
会場は何とかなりそうでした。でも、私には経験がありません。今回の報告会にはパートナーが必要でした。それを遠藤隼くん(以下、隼くん)にお願いしました。「報告会やりましょうよ」と声をかけてくれたのも彼です。


隼くんとは南米チリの日本人が集まる宿で一緒でした。彼もまたチャリダーで自転車で世界一周中。うたのおにいさんのように爽やかで人あたりのいい青年でした。旅前は富士山麓で子どもキャンプとエコツアーガイドとして活動していたという経歴。現在は地元の栃木で自然学校を営んでいます。


隼くんなしでは今回の報告会は有り得なかったです。何から何まで彼に頼りっぱなしでした。前職はガイドさんですし、イベントだって何度もこなしていてその道のプロ。場を盛り上げるトークテクニックを幾つも持っています。だから、報告会の司会を引き受けてもらいました。

◆告知する
平日だと働いている人が多いので開催するなら週末。10月16日の日曜日に開催を決めました。会場をお借りするモンベルの広報に申請書を送付。当日まで3週間ほど告知期間がありました。予約を集めるのに「こくちーずプロ」というサービスを利用します。これも隼くんに教えてもらいました。

150カ国と13万1214.54kmを走破したチャリダーマンの自転車世界一周報告会 2016年10月16日 - こくちーずプロ(告知'sプロ)
http://www.kokuchpro.com/event/0dff47fd7da5b6d1d9a31e85cbdd1cd4/


「ほとんど人が来なかったらどうしよう」と心配ばかり。でも20、30と席は埋まっていきます。何とか形になりそうでほっと一息。

こくちーずプロの「注目セミナー・イベント」にも載りました。


「なりふり構わず席を埋めてやる」といつになく熱心に宣伝しました。おかげさまで定員の90席が1週間前には満席に。ただ、今回のやり方には一つだけ弱点がありました。

◆勉強する
いざやると決めても報告会(講演会)のイメージが掴めません。ちょうどいいタイミングで世界一周チャリダーのイベントがあったので参加してきました。

・10月5日、小口 良平さん


小口良平さんは2007年3月から2016年9月にかけて157カ国と15万5502kmを走ったチャリダーです。アフリカも東と西でそれぞれ縦断しています。同じ時期に同じように世界を旅したチャリダー仲間です。2014年にチュニジアで2日だけですが一緒になりました。それ以来の再会でした。ニューヨークから帰国したばかり。旅人のオーラをまとっていました。


そのイベントも圧巻でした。全部一人で進めていたのですが話がお上手。会場を巻き込みながら旅の世界に引き込んでいていました。

・10月9日、伊藤 篤史さん


もう1つイベントがあったのでこちらにも参加しました。伊藤篤史くんも世界一周チャリダーで、2011年6月から4年半の旅で71カ国と7万3000kmを走っています。タイからミャンマー経由のインドや中国からモンゴルを往復と珍しいルートを走破。現在は折り畳み自転車に乗り換えて日本の島を巡る旅をやっています。過去の職場という縁あって無印良品で記事を書かれていました。今回のイベントも無印良品の店舗でした。

「旅と道具」がテーマのイベントでした。ゲストは伊藤くんだけでなくもう2人。1人が司会進行で伊藤くんにも話しを振っていきました。私たちが目指す報告会と近く勉強になりました。何より面識がなかったので、リアルでお友達となったのが嬉しい。

店舗に飾ってあった彼の旅行用自転車。


◆準備する
せっかくの晴れ舞台。いろいろと揃えるものがありました。

10月3日、隼くんと一緒に会場となるモンベル御徒町店へご挨拶と下見。そのあと2人で打ち合わせ。


飾りたかったので100円ショップの世界地図を購入。かなり大まかにですが、これまでのルートを線で引きました。


展示用の写真をネットプリントで用意。2Lサイズ(普通写真の2倍)で1枚20円ですから、そこまで費用もかかりません。


100円ショップでいろいろと買い出し。


自転車世界一周が終わって「旅の記録をまとめた報告書」「自転車の轍を記した世界地図」を作成。事あるごとに人に渡しています。今回の報告会でも配布させていただきました。その資料に直筆でメッセージも書きました。


当日にプロジェクターで流す写真はお客さんに分かりやすいように文字を入れていきます。これも隼くんのアドバイスでした。


◆報告する
報告会をすると決めてから当日まであっという間でした。当日は9時に司会の隼くんと打ち合わせ。お昼にはちょっと用事があったので解散ますが、13時には会場となるモンベル御徒町店に集合して準備に取り掛かります。


当日は
14:00 開場
14:30 はじめ
16:30 おわり
というスケジュールでした。

受付を製作中。


会場の準備と片付けで、
・世界を走るチャリダーでありながらフリーハグの活動でも有名な桑原功一くん。
・2013年に南米のペルーを一緒に走った染谷裕太くん。
・2009年11月から2012年6月まで自転車で世界一周をしていた鈴木孝浩くん。
にも手伝ってもらっていました。

来場者に「報告書」「世界地図」「アンケート」を渡します。


この報告会のために滞在先のタイで用意した飴ちゃん。受付に置いてお客さんに持っていってもらうのです。


過去の新聞記事をA4のカードケースに入れて掲示。


現像した写真も長机に置いときました。


14時の開場と同時に受付に列ができました。名前だけで来場者の名簿を作った私の不手際で、受付に時間がかってしまい申し訳なかったです。1人1人と会場が埋まっていきます。

「牛にしか見つめられたことないのに」と大勢の人たちから向けられた視線に戸惑います。それが牛なら無表情を通してくれますが人間はそうなりません。感情があります。かなりのプレッシャーでした。

それでも報告会の幕は上がります。


スライドショーで写真を紹介しながら、司会の隼くんが質問を入れるという形でした。

当日は、あまり人の前で話しているって気持ちではなく、僕と個人的にしゃべっている位の気持ちでいきましょう。リラックスして。
特に喋り口調も自然な感じでいいので。
(敬語・丁寧語などは意識せずに)

という打ち合わせ通りでした。


最初はかなりガチガチだったのですが、喋って喋って喋るに連れて緊張が解きほぐされていきます。旅のエピソードなら何度も何度も人に話しているので、そこまで詰まることも無かったです。それ以外では頭が真っ白になることもありました。見事に動揺していました。

でも、カンペじゃないですが大まかなタイムラインはあったんですよ。

1:司会者挨拶と自己紹介
2:私の自己紹介。
死ぬまでに世界を見てみたかった。
アルバイトのできる高校に進学。
ひたすらバイトに明け暮れる。
久留米、伊万里、北九州、京都、日本一周と徐々に経験を積んでいく。
3:自転車の旅とは。
◆ルート
世界地図を見せる。何カ国。何万キロ。
国境越え:214回
自転車走行なしが22カ国ある。
2回以上訪れた国34カ国。最多訪問はタイの6回
フライト回数72回。162万7150円
◆道路
砂、こんな道路を走っていました。
◆持ち物
中に何が入っているか。
日本人旅行者は荷物が多い。ジョークになっている。
フロントバッグには貴重品。一眼レフを入れる。
洗面器について熱く語る。
◆宿泊
人がいないとこ、物価の高い国ではキャンプ
テント飛んでったでござる
物価の安い国では安宿を使う。
シャワーについて
オチは川にも入ります。地元の人から二度見されます。洗面器が役に立ちます。
…………

このような感じで、喋りたいエピソードを羅列していました。

シャワーの話もしました。「高級」はボイラータンク。


「中級」は電気式。


「初級」は蛇口水


バケツは修行のようでした。


オチは「バケツと見せかけて、実は『川』でした」トークを繋ぎます。体を洗うために洗面器を片手に川へ繰り出すのです。地元民は目を丸くして驚くのですが「ちょっとすいませんお邪魔しますね」と頭を下げるとニッコリした笑みを返してくれます。そんな話に会場が少しザワッとしました。そんな反応にゾクッと高揚感を覚えるのでした。

「危ない国境とかありませんでした?」「賄賂の要求とかどうしてました?」など質問もたくさん出てきて助かりました。ただ、すいません……動揺して、嘘を1つ言っていました。「飛行機移動のとき、自転車はどうしていますか?」と質問があったときに「事前にホームページを確認したり、荷物の重量はだいたい把握しているのでミスしないようにしています」と取り繕いました。でも、実はそれをやらなくて、1番最初のオーストラリアへ向かう航空券を無駄にしています。航空券と同じ重量超過の代金を請求されて飛行機に乗れませんでした。それ以降はかなり慎重になったというわけです。


イベントの2時間はあっという間でした。司会の隼くんのおかげで私は話すことに専念。タイムスケジュールや場の盛り上げは彼に全部任せっきりでした。私1人しかいなかったら更にあたふたしたでしょう。いろいろと勉強させてもらいました。「卓也さん、今後のためにもアンケート取りましょうよ」と持ちかけたのも彼でした。思いつきもしませんでした。アンケートに残してくれた数々の言葉は一生ものの宝物だったりします。イベントのパートナーとして最高の働きをして下さりました。

◆感謝する
「何のために生まれてきたか?」という問いに「最愛の人」や「自分の子ども」をぶつけられたら最高です。そう願っています。でも、旅を終えた私は高卒の無職。誰も捕まえられそうにありません。そんな負のオーラから抜けられない以上、今回の報告会は忘れられない1日でした。たくさんの人たちの目的に「チャリダーマン」「周藤卓也」があって、自分の存在に少しでも価値観を見出すことができました。そんな想いがあったからこそ、配布用の報告書に「会いに来てくれたことに感謝、ありがとうございました」と書かせていただきました。

2002年の日本一周で、2006年のオーストラリアで、2014年のイスラエルで、2015年のインドで、旅先で会った友人も遊びに来てくれました。ツイッターやフェイスブックの繋がりだけで面識がなかった人も遊びに来てくれました。繋がりがなくてもGIGAZINEの記事や自分のブログで旅を追いかけてくれた人も遊びに来てくれました。今までやってきた活動が目に見える形で返ってきて感無量でした。


自転車五大陸走破―喜望峰への13万キロ」という本の作者である井上洋平さんにもお会いできました。1987年~1993年にかけて世界を走り周った伝説のサイクリストです。憧れの人でした。私が高校生のときに初めて手にした自転車旅の本が井上さん著作でした。電気スタンドの灯りの下、ページをめくりながら旅への想いを募らせました。ちょうど手元に本があったのでサインまで頂いちゃいました。


東京で働いている弟も来てくれました。


ただ弱点として無料のイベントだったので当日キャンセルも結構ありました。当日にお会いできなかったのは残念ですが、興味を持っていただいたことは嬉しく、またの機会に遊びに来て欲しい思っております。

◆大阪でもする
「東京の報告会を記事にしていいですか?」と相談したところ「GIGAZINEでも10月にイベントやるのでお話しませんか?」というお誘いをいただき、大阪でもお話させていただきました。

「世界一周をついに終えたチャリダーマンだけど何か質問ある?」ということでチャリダーマンこと周藤卓也さんにアレコレ聞いてみた~前半~ - GIGAZINE


「世界一周をついに終えたチャリダーマンだけど何か質問ある?」ということでチャリダーマンこと周藤卓也さんにアレコレ聞いてみた~後半~ - GIGAZINE(シークレットクラブ会員向け)

2回目ということもあって幾分かリラックスできました。

◆仕事にする
大阪のイベントを終えて、どうするか迷っていたのですが、シェアハウスに空きがあったので上京してみました。一生一度くらいは東京に住んでみたかったのです。そして何かやるなら東京だと思っていました。それなのに何の成果を出すことなく、腐りかけつつありますが……。

それでも縁あって友人と一緒にイベントをやることになりました。

総距離46万キロ?! 4人のスーパーチャリダーズ‼ 発表会 | 予約システム「Coubic (クービック)」
https://coubic.com/cyclist/175244


写真展とトークライブとなっております。フリーザ様には負けますが「46万」ですよ。これほどのチャリダーが揃う機会はなかなかありません。お時間ある方は遊びに来てください。

そしてチャリダーマン個人としても、自転車世界一周の体験をお話できる機会を作っていきたいと思っています。そんなチャンスを掴むべく、とりあえずヤフオクに出品してみました。

150カ国と13万mを走破したチャリダーマンの自転車世界一周報告会 - ヤフオク!
http://page8.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h243247086


それだけの価値があるのか分かりません。でも、私には旅しかありません。15歳で決意し、ひたすらに自転車世界一周ばかりやってきました。どんな形でもいいのでお話できる場を作っていただけましたら幸いです。

このような感じでイベントをやってみました。旅と同様に轍を踏んでいく私らしいやり方でした。生きた証を少し刻めたようで忘れられない1日でした。でも、これで終わることなく、更なる高みを目指します。お話を聞きに来てくれたみなさま、本当にありがとうございました。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

(イベント司会:遠藤隼@ネイチャーガイド
サシバの里自然学校 http://www.sashiba-ns.com/
)

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in 取材,   乗り物, Posted by logc_nt

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