自転車で世界一周した轍はGoogleマップなどのオンライン地図サービスで表示可能
旅の最初からGPSを使っていたら、かなり高い精度で、自転車の轍を地図に残すことができます。GPSのログが無かった場合は、少し手間がかかりますが、地図に線を引いていくことで、かつてのルートが再現可能。この2つを組み合わせて、自転車世界一周で走った13万kmの轍をGoogleマップに表示してみました。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。少し時間ができたので、過去の記録とにらめっこしながら、黙々と地図に線を引いていました。ずっと中途半端だった作業が片付いてすっきり。この方法は世界一周に留まらず、短期の自転車旅行や日帰りのポタリングにも応用が可能です。これを知ってしまうと自転車により一層はまります。
◆バイクマップ
約10年前の旅立ちのとき「GPSを持つ」なんて思いもつきませんでした。その頃はスマートフォンもなく、GPSはそれほどメジャーじゃありませんでした。自転車の旅の記録といえば、手持ちの地図にラインマーカーを引いたものくらいです。私の旅だとオーストラリア、東南アジア、ユーラシア大陸、バルカン半島を周ってハンガリーまでは、そのような形でした。
こうしたアナログなデータはバイクマップという海外のサイトを使うことで、オンラインマップに線を引いていくことができます。
Bikemap
https://www.bikemap.net/
バイクマップは世界中の自転車ルートを集めたサイトで、多くのサイクリストに利用されています。今回は記録にしか使ってないのですが、計画にも使えそうな便利なサイトです。このサイトを使うやり方は知人のチャリダーに教えてもらいました。
デフォルトはオランダ語だったのですが、ページをフッターまでスクロールダウンすると言語の切り替えができます。日本語には対応していないので、英語で作業を進めます。できあがったデータを管理するために、アカウントは作っておきましょう。アカウントを作成したら、ページ右上にある「NEW ROUTE」をクリック。
作業画面に移ります。Googleマップのような操作で、地図の移動や拡大、縮小ができます。
地元である福岡の天神を始点に線を引いていきます。
オレンジ色の枠で囲んだ左上の「マグネットツール(magnet tool)」をメインに使っていました。ポイント間の最適なルートを自動的になぞってくれます。
ただ、まっすぐな線を引きたいのに、クネクネした線が表示されることも。
このようなときは、ポイントの間隔を小さくすることで修正可能です。
国道3号線をなぞっていたのですが、どの道か分からなくなってしまいました。
このようなときは、地図右上の地図を切り替えることで対処可能です。Googleマップだと、道路に国道番号が振られていました。ハングルだったりアラビア文字だったり、現地の地名が読めない時にも地図を切り替えていました。
たまにですが、マグネットツールが使えないことあります。まっすぐな線を引きたいのに、このような事になってしまいました。ポイント間の間隔を狭くしても、修正できません。
そんなときには、「ラインツール(line tool) 」を使います。こちらだとフリーハンドで線を引くことが可能です。
あ、ちょっと手が滑って線が歪んでしまいました。
このようなときは、途中のポイントを引っ張ることで修正できます。線の上にポイントの追加もでき、地図上の線はグニャグニャと自由に曲げることができました。
コツコツと線を引いていって福岡→北九州(新門司)というルートが完成。オーストラリアの前に、福岡から成田まで自転車で走ったルートのデジタル化でした。瀬戸内海はフェリーを使っています。
こちらができあがったルートのトップ画面。
このような作業を繰り返して、過去に走破したルートをデジタル化していきました。
注意点として、地図の拡大縮小の操作をすると、ページの読み込みに時間がかかります。この読み込みが完了していないのに、データを保存しようとすると失敗します。まめに保存すればいいのですが、そうしていなかったので2時間近くかけた作業が水の泡と消えたこともありました。
また、マグネットツールは使えたり使えなかったりと動作が不安定です。バルカン半島で線を引いている時に、どうしてもマグネットツールが動かずラインツールに切り替えてフリーハンドで線を引いたこともありました。ただ、ラインツールは精度が落ちるので、あまり使いたくありません。何かおかしい気がしたので、作業は途中で終了。また別の日に作業を再開させると、そのときはマグネットツールがサクサク動きました。ラインツールでしか駄目だったところも、マグネットツールが動くようになっていたので、同じ作業を一からやり直したりしています。
◆アナログをデジタルに
GPSを使っていなかった頃は、紙の地図を使って旅を進めていました。
走った道路をラインマーカーでなぞっていた作業が、今回のデジタル化の役に立っています。
あの頃は日記をつけていました。地図が見つからなかった場所は、宿泊地が記録されていた過去の日記を読み返していました。
ユーラシア大陸横断のスタートとなった壱岐は、この写真を見ながら線を引いています。
このような感じで、過去の走行をデジタル化しました。
◆データの変換
バイクマップで作成したルートは
1:バイクマップを使ってGPXファイルのダウンロード
2:マップソースというソフトを使ってデータの整理
3:轍というソフトを使ってGPXファイルをKMLファイルに変換
という手順を踏んで、Googleマップで扱えるファイルに加工します。
時間を見つけては過去のルートをデジタル化していました。船や飛行機を使うと、轍が途切れてしまうので、データを分けていました。インドネシアは6つの島々を移動しているので、6つのデータが存在しています。
シンガポールから香港まで走ったルートです。赤枠のGPXをクリックすると、GPXファイルをダウンロードすることができます。
こうして吐き出したGPXファイルを、ガーミン社のマップソース(MapSource)というソフトウェアで、まとめていました。画像ではインドネシアから香港までを一つにしています。データを軽くしたかったので、フィルタ機能を使ってポイントを間引いていました。
マップソースで加工したGPXファイルを、「轍(Wadachi)」というフリーソフトで読み込んでKMLファイルに変換します。
轍 ONLINE - GPSログを写真付きで地図上に表示・共有するサービス
http://map.cyclekikou.net/
◆GPSのデータ
この世界一周では2つのGPS機器を使ってデータを残していました。
東欧のハンガリーから、西アフリカのマリまではHOLUXのM-241CというGPSロガーを使っていました。地図は表示できませんが、移動したルートを記録してくれます。走ったルートをどうしてもデジタル化したくて、ネット通販で購入。日本からハンガリーに荷物を送る際に、GPSロガーも一緒に梱包してもらいました。
マリからは、こちらのガーミン(GARMIN)のGPSを使っています。友人チャリダーのGPSが1台余っていたので売ってもらいました。こちらも移動したルートを、記録することができます。アダプタがあればハンドルにも取り付けられるので、カーナビのように地図と現在位置を照らし合わせながら走ることも可能。放射状に道路が伸びるヨーロッパでは大活躍でした。もし、また世界一周するなら、最初からこのGPSを持っていくでしょう。
GPS機器が記録していたデータは
1:マップソースというソフトを使ってデータの整理
2:轍というソフトを使ってGPXファイルをKMLファイルに変換
という手順を踏みました。
一日ごとに記録されたガーミンのGPSのログ。自転車で走った日だけを抽出してまとめます。
このような感じで、台湾も一周していました。
連続したログは結合させたり、多すぎるポイントを間引いたりします。そうしてボルネオ島、太平洋の島国、フィリピン、台湾をまとめた一つのファイルが完成。GPXファイルで保存して、こちらも轍を通してKMLファイルを作ります。
◆オンラインマップ
そうして、吐き出されたKMLファイルをオンラインマップで表示させると……
チャリダーマンの自転車世界一周の軌跡をGoogleマップで表示してみる
http://shuutak.com/gps/gps.html
このようになりました。
ところどころショートカットしているのは残念ですが、それなりに頑張ったと思います。この後、もうちょっとだけ旅をするつもりなのですが、バックパッカーになるので、私の自転車世界一周の轍はこれが最終版になりそうです。
世界各地でお世話になった人たちに、この自転車世界一周の轍をプリントアウトして送りたかったのですが、Googleマップの規約に引っ掛かりそうでした。商用利用もしたかったので、何とかならないかと調べてみると、商用・非商用を問わずにデータを自由に扱えるオープンストリートマップを使う方法を見つけました。「ユーマップ(uMap)」というサイトを通すと、KMLファイルを読み込んだ地図が簡単に作成できます。
uMap
https://umap.openstreetmap.fr/ja/
チャリダーマンの自転車世界一周の轍 - uMap
https://umap.openstreetmap.fr/ja/map/map_79999
uMAPだとこんな感じに。
旅が終わろうとする今になって、この地図が完成したわけですが、リアルタイムでもっと自分の轍を確認するべきだったと反省しています。もっと世界に轍を刻みたかったです。ただ、世界一周が終わった後でも、海外を自転車で走ることは可能。機会があれば、この地図に線を足していきたいですね。死ぬまで飽きることのない道楽を見つけたのでした。
私だけではなく、友人のチャリダーも世界に轍を刻んでいました。
吉田責自(よしだせきじ)
http://www.acml-jp.net/cyclists/yoshidasekiji/index.html
神保広武(じんぼひろむ)
http://www.acml-jp.net/cyclists/jimbohiromu/index.html
浅地亮(あさじりょう)
http://www.acml-jp.net/cyclists/asajiryo/index.html
このような感じで、自転車の轍はデジタル化できます。
世の中は便利になっていく一方で、このような事ができるような時代になってしまいました。私としても全部が全部理解できている訳でもないですが、これから自転車で旅をする方々にはぜひとも知って欲しかったので、今回はこのようにまとめてみました。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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