自転車世界一周で起きるトラブルの数々にどう対処するべきなのか
PCが起動しなくなって落ち込んでいるところへ、テントまで飛んで行くという衝撃的な展開。一瞬の隙をつかれて荒野へと転がり出したテントは、必死で追いかけるのも虚しく、遥かボリビア方面へ消え去ってしまいました。壊れたりなくしたりと、自転車世界一周の旅はトラブルの連続です。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。毎日が何事もなく過ぎて欲しいのですが、なかなかそうは行きません。最近はパタゴニアの雨に打たれて、すべてがびしょ濡れになりました。旅ではトラブルが起こる度に、何とかしないといけません。今回はそんなトラブルの記録をまとめてみました。少しは役に立つ情報があると嬉しいです。
◆PCが動かない
ボリビアから「宝石の道」というオフロードを走ってチリに抜けた際に、PCが起動しなくなりました。数日はセーフモードで起動できていたのですが、焦ってオンオフを繰り返しているとまったく動かない事態に……。電源もないテントでいじくり回しても駄目ですね。ようやくたどり着いたチリの最初の町アタカマは小さすぎたので、人口10万人を越えるカラマに移動して修理。PCパーツを扱っているお店もあったので、結局はHDDを交換しました。動かなくなった原因は掴めないのですが、PCは復旧しています。
ラップトップは一時帰国中にLenovoの「X121e」というモデルに新調。
本体をひっくり返して、ネジを外せば簡単に蓋は取れます。
HDDの脱着も簡単
古いHDDはHITACHI製
Seagate製の新しいHDDに交換して、Windowsを入れなおしました。それからラップトップは順調です。
新旧HDD。Seagate製の新しいHDDは500GBで4万9990ペソ(約1万円)という価格。
どうしても取り出したいデータがあったので、外付けのHDDケースを購入。こちらは6990ペソ(約1400円)でした。
箱を開けて……
古いHDDを装着します。
外付けのHDDのようにUSBで接続されたHDDケース。
インターネットで調べたコマンドプロントでチェックディスクをすると、動かなかった古いHDDが認識されるようになり、データは無事に回収。いざという時に慌てないように、マメなバックアップが必要ですね。
◆テントが飛んでいった
このアタカマからカラマに移動した際に、いつも通りにキャンプの支度をしていたら、突風にテントを持って行かれました。コロコロ転がっているテントを追いかけても、何もない荒野では差は縮まるどころか広がっていくばかり。そのまま視界から消え去ってしまいました。しばらく何かに引っかかってないかと、辺りを探したのですが見つかりません。テントを置く角度にこだわらず、早く荷物を入れるべきでした。
使っていたのはアライテントの「トレックライズII」というモデル。
このような場所にテントを張ろうとしていました。
仕方ないのでブルーシートの上にマットを敷いてエクストリーム野宿。
ただ、これからの旅を考えるとテントがないと困るので、カラマのホームセンターで繋ぎのテントを購入。中国製で9990ペソ(約2000円)でした。
ペットボトルで大きさを比較。ポールも中に入っています。
床が120cm×200cm、高さ95cm、重さ1.7kgという仕様。
テントを張ると、このような感じに。
横から見ると、こうなります。フライシートはありません。
このテントでしばらく旅をしていました。グランドシートがペラペラだったり、ポールを建てるのにコツが必要だったりと至らぬ点もありますが、2000円の値段を考えればよく出来ています。ただ雨に対しては弱そうで、本格的に降られた場合が気になりました。本体が水を弾くようになっているので、内部から結露してしまうのも弱点。
飛ばされてしまってから、どうするべきかと頭を悩ませていましたが、新調して日本から送ってもらうことにしました。パタゴニアの入口となるプエルト・モンで無事に受け取り。同じアライテントで「トレックライズI」という一回り小さいサイズを選択。残り短い旅なので、軽量化を重視しました。
宿で作業中。
街でボタンを入手しました。
ボタンの色を合わせることで、テント本体とフライシートの位置を確認。
こうして新しいテントでパタゴニアを旅しています。
1列はマットで、もう1列に荷物を並べているテント内。
◆最近のトラブル
「走行中にコツンコツン音がするな」と首を傾げていたらリムが割れていました。エクアドルで雨の日にブレーキをすり減らして、金属部分でリムを削ってしまったのが原因でしょう。リムは少し薄くなっていました。
チリの首都サンティアゴに「Mall Sport」というスポーツやアウトドアのお店で作られたモールがあって、そこの自転車屋さんでちょうど良さそうなリムをみつけたので購入。
ALEXRIMSというブランドの「XC-LITE」というモデルのリムに交換。古いのはSun Ringleというブランドの「Rhyno Lite XL」というモデル。
リムを背負って自転車屋さんへ。1万ペソ(約2000円)でホイールを組んでもらいました。
ただしスポークの長さが合わないのは心配。本来なら全部を交換したかったのですが、下手なスポークだと折れてしまいそうなので、古いスポークを流用しました。使っているスポークはDT Swissというブランドの「Champion 2.0」というモデルです。
また、宝石の道の最後にクランクがロックされる謎の現象が起きていたのですが、クランクを逆回転させると治ったので街までは走りきりました。落ち着いて調べてみると、ボトムブラケットが緩んでしまうのが原因でした。
ボトムブラケットにおけるホローテックIIの規格は特殊なスパナが必要で、自転車屋で何とかしようと思っていたら、面白い工具を発見したので買っちゃいました。別途で8mmのアーレンキー(六角スパナ)も必要ですが、表面でボトムブラケットの取り外しが可能で、裏面はクランク取付工具となっています。柄がない分だけ軽量化されているので持ち運びにも便利。
このボトムブラケットは走行距離が2万kmを越えてゴリゴリとした違和感があったので、首都サンティアゴ近郊のビーニャ・デル・マルに滞在している時に新品に交換しました。
こちらも宝石の道の最後で、オルトリーブのフロントバッグを取り付けるアタッチメントのワイヤーが破損。結束バンドと針金で応急処置をしています。
それだけじゃ、どうしてもバッグが下がるのでL字金具で受け止めることに。金具だけだとバッグの中身が飛び出してくるので、長い棒で圧力を分散させました。
テントと一緒に「イメージセンサークリーニングキット」に「レンズペン」と「ブロアー」といったカメラのメンテナンスキットを受け取ります。アメリカ大陸から一眼レフを使っているのですが、メンテナンスは全く考えていませんでした。
ペルーの終盤で一眼レフのイメージセンサーにこのような汚れがついて、アルコールと綿棒で応急処置を済ませていたものの、心配は尽きなかったので既成品を使って再度クリーニングしました。
エアーマットにも穴が開いてしまったので、テントの補修パッチで穴を塞いで、更に上からダクトテープを貼り付けています。ひとまずは、これで大丈夫。
フロントバッグを開け閉めするボタンも外れてしまいました。マジックテープを取り付ける予定です。
◆これまでのトラブル
自分が自転車関係で一番苦労するのがタイヤとチューブで、オーストラリアでは電話で取り寄せて立ち往生、アルメニアでは出発してもすぐにパンクして引き返しました。写真は試行錯誤中のアルメニアの宿。
そのアルメニアでは、根元が折れた仏式バルブにパンク修理のパッチを張って対処してみました。これで少しは走ったのですが、すぐに根元から空気が漏れ出す始末。米式のチューブは持っていたので、リムの穴を拡張して取り付けました。自転車チューブのバルブはママチャリの英式、車と同じ米式、ロードレーサーの仏式の3種類あるのですが、仏式を自分が扱うと根元が折れるので、米式のバルブを好んで使っています。
タイヤの接地面やサイドウォールに大きな傷が入るとチューブがお餅のようにはみ出してくるので、このように中から古いタイヤの切れ端などを当てていました。
タイヤのトラブルの解決にはタイヤが一番。使い終わったタイヤのサイドウォールを切り取って万が一に備えています。
アフリカのマラウイでもタイヤに問題が起きて大変でした。
100kmも持たないで破けてしまった5USドル(約500円)の中国製タイヤ。タイヤの安物はこれがあるから怖い。
鞄を取り付けるキャリアも、最初に選んだフロントの日東キャンピーが頼りなく、すぐに壊れてしまったので騙し騙し使っていました。四角い枠の△の頂点は特に弱くて、こうした金属の部品で全体を押し付けて固定という荒治療の日々。ちなみにリアキャリアも日東キャンピーですが、こちらは現在まで問題ありません。
このフロントキャリアが、投げ棄てたいほど面倒だったので、ヨーロッパ走行中に評判のいいドイツ製のチューブス(tubus)に新調。この頃はフロントバッグのキャリアも必要だったので、2つのキャリアを組み合わせてアフリカ大陸を走りました。
このチューブスのキャリアも、ネジが固着してしまったので、一時帰国中には電動ドリルなどで破壊するはめに。定期的にグリスを塗るべきですね。
トルコのイスタンブール到着前にもリムが割れています。ホイールの振れとりに失敗して、スポークの張りがおかしくなっていたと推測。
イスタンブールでRigidaというブランドの「SPUTNIK」というモデルのリムに交換しました。このリムは問題なかったのですが、一緒に交換したスポークが折れるので、アフリカに入る前に全部のスポークを太い種類に交換。おかげさまでアフリカではスポークは折れていません。
これまでは無縁のトラブルだったのですが、アメリカ大陸の旅ではハブの部品を交換しています。
ハブの中にはベアリングが入っているのですが、それを固定する玉押しに傷が入ったりしていました。
輪行してケニアへと飛んだ際の組み立て時に、きつく締めすぎてスターファングルナットを破損。フォークの底に入っていて、アヘッドセットやステムを固定する役割を担っています。
誤魔化しつつ走っていたのですが、ウガンダの首都カンパラの中古自転車市場で、このパーツを入手できたので問題は解決。
トルコで初めて手に入れたビンディングのペダルは、ヨーロッパしか走ってないのに破損。購入時に選択肢が2つあって、安いブランドを選んだ結果がこれ。最初から高くてシマノにするべきでした。
シマノの「PDーM520」に交換。
こちらもトルコで海岸にテントを張ったら、就寝中にネズミに侵入されて、朝起きるとこの有り様。
テントの補修パッチで穴を塞ぎます。ファスナーのレールを止めるのは安全ピン。噛じられたのがファスナーの端で幸いでした。
これまでは問題なかったのに、アメリカ大陸の旅ではサイドバッグのネジが外れてしまいました。気づいたらなくなっていたので、予備のネジで留めています。オルトリーブのここのネジは星形のドライバが必要となるのですが持っていません。
故障により現地で調達した中国製のヘッドライトがどうしようもなく、このように自転車用のライトを取り付けていました。
旅の序盤で使用していたPDAの「W-ZERO3」ですが、本体とディスプレイを繋ぐフレキシブルケーブルが、スライド式の本体の開閉によって傷むらしく、途中で使えなくなって困りました。
USBメモリの端子がバキバキっと……。
◆なくさないように
気をつけているのに忘れたり落としたりと、物がなくなってしまいます。
お手拭き、タオルは忘れ物の筆頭。
石鹸と浴用タオルもなくすことが多いです。
超重量の自転車を支えるスタンドもよく紛失します。メキシコで手に入れて長く愛用していたものは宝石の道で紛失。それから新しく作った写真の青いスタンドもすぐに紛失。現在は木の棒を使っています。
タイでこのヘルメットをなくした時は凹みました。宿を探すときに一々ヘルメットを外していたのが原因。それ以来、極力ヘルメットは付けたまま行動しています。
アフリカでは調理ストーブの燃料ポンプもなくしています。ガソリンの匂いが付くので、乾かしてから片付けようとしたのが原因。代替のガスカートリッジのストーブを買って、乗り切りました。
ストラップを手提げかばんに付けていたのに、その手提げかばんごとネットカフェに忘れるという大失態。デジタルカメラはなくしてしまうとデータが取り戻せなくなるから怖い……。
なくす可能性があるものには対策が必要です。財布はなくさないようにチェーンでズボンと繋いでいます。
爪切りもたまになくすので、小さなストラップを取り付けました。
デジタルカメラもウエストポーチから離れません。ストラップがないと、どこかで落としてしまいそうです。
旅を続けていると、どうしてもトラブルはやって来ます。そのたびにくよくよしたって仕方ありません。大切なのは、同じミスを繰り返さないこと。そのために「失敗ノート」を作るのもひとつの方法でしょう。自分はたまに記録しています。パタゴニアも強い風が吹いているので、テントが飛ばされるなんて大失態は繰り返さないようにしないとですね。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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