本当に手が叩き起こしてくれる目覚ましや髪の毛を自動的に洗ってくれるロボットを自作し続けるロボットの女王Simone Giertz
YouTubeで80万回以上も再生された、自力でプログラミングして口紅を塗るロボットを作成して大変なことになったというムービーの作者が女性エンジニアのSimone Giertzさんです。Giertzさんはスウェーデン・ストックホルム在住で、自作ロボットの数々をYouTubeで公開しているのですが、いずれもムービーがすさまじすぎるとして話題になっており、テクノロジー系ニュースサイトのThe Vergeが「Giertzさんは一体どういう人物なのか?」ということを明らかにすべく、取材を試みています。
Robot queen Simone Giertz on inventions, the internet, and not winning a Darwin Award | The Verge
http://www.theverge.com/2016/5/24/11723234/simone-giertz-queen-of-shitty-robots-interview-youtube
「自作ロボット」と聞くと近未来感あふれる響きなのですが、Giertzさんが作成しているのは子どもが思いついて身近にあるもので作ってしまった、というような遊び心のある作品です。
例えば、Giertzさんの作品の1つとして挙げられるのが「目覚ましロボット」。YouTubeで120万回以上再生されている以下のムービーを見れば、Giertzさんの作品の雰囲気がよくわかります。
The Wake-up Machine VLOG - YouTube
ということで、目覚ましロボットを自作……するはずなのですが、Giertzさんが手に持っているのはオモチャの右腕。
これはハロウィン用の血まみれの右腕を、除光液でキレイにしたそうです。
基板はArduino Unoを利用し、お菓子の缶のようなものに入れています。缶の外側に目覚まし時計を設置するという、手作り感満載の仕様です。
実際に手作りした目覚ましマシーンに起こしてもらう様子は以下。オモチャのハンドがガムテープでがっちりと缶&目覚ましに接着されています。時間になると……
ハンドがぐるんぐるんと回転しだしました。
Giertzさんの額をベチベチとたたきまくるハンド。
痛みからか、うっとおしさからか、Giertzさんは非常に険しい表情です。
目覚ましを止めると……
ハンドの回転も止まりました。
さらにテイク2、テイク3と続き……
ハンドが髪に絡まるという事態が発生。
ハンドを取り外してみると、軸の部分にがっちりと絡まっていて、起きられません。
缶のフタを外し……
髪を無理やり引っ張ってなんとか脱出しました。
また、「忙しい朝に、ロボットが全自動で朝食を作って食べさせてくれればいいのに……」という願いをかなえる「朝食マシーン」は以下のような感じです。
The Breakfast Machine - YouTube
クレーンのようなマシーンがシリアルの箱をベッと倒します。
吸盤を使って箱を持ち上げ……
派手に中身をぶちまけながらお皿にシリアルを入れます。
次は牛乳のパックを倒して……
吸盤でパックを持ち上げてシリアルの入ったお皿に牛乳を注ぎます……が、むちゃくちゃ腕にかかっています。
最後はスプーンを持ち上げ……
何もすくえていませんが、シリアルをすくうような動きをします。
そして何ものっていないスプーンをGiertzさんの口に運んでくれました。
さらに、「全自動で髪を洗ってくれるロボット」も作成。
I built a hair washing robot - YouTube
「髪の毛を全自動で洗ってくれる」と聞くと未来的ですが、作成したのは、やはりハンドを使ったオモチャっぽいロボット。
Giertzさんがロボットの下で歯を磨いていると……
勝手にシャンプーボトルからシャンプーがうにょーんと垂れてきました。
そしてハンドが動き出し、目覚ましマシーンのようにGiertzさんの頭をべしべしはたきます。
何度か試しているうちにちょっとずつ髪が泡だってきており、実用レベルと言えなくもないです。
Giertzさんは記事作成時点で25歳。3~4年前からYouTubeに複数のチャンネルを作りさまざまなムービーをアップロードしており、過去にはマンガっぽい落書きや風刺的な内容のムービーもあったのですが、現在は自作ロボットのムービーを公開するSIMONE'S ROBOTSというチャンネルのみを公開しています。ロボットを作り出した時はブログとして公開することも考えていましたが、のちにムービーの方がいいだろうと考えなおしたそうです。
ヘルメットにロボットをくっつけた、「歯磨きロボット」がGiertzさんが行った最初のプロジェクト。以下のムービーからその内容を確認できます。
The Toothbrush Machine - YouTube
シンプルな装置ですが、朝食ロボット・目覚ましロボットを続けて見てきたからか「意外に実用的かも……」と思えてきます。
初めてムービーを作成した時に用いたのはWebカメラとAppleのムービー制作ソフト・iMovieのみで、現在もこの2つをメインとしてムービーの制作を行っているとのこと。
YouTubeにアップロードされているムービーはコメディタッチですが、自身のムービーは「科学」と「テクノロジー」のカテゴリに属するとGiertzさんは考えています。「ユーモアをプラスすると物事は簡単に進むのです。作品を面白くすることができたら多くの人に見てもらえるでしょう」とはGiertzさんの言葉。
SIMONE'S ROBOTSを始めた当時は、視聴者の90%は男性でした。しかし今では女性の視聴者も増え、男性80%、女性20%の割合になっています。25~34歳のユーザーが主で、普段からテクノロジー分野に興味があるエンジニアが多いとのことですが、Giertzさんは普段テクノロジーの分野に触れない人々にもムービーを見てもらいたいと願っています。
女性でありながらテクノロジー分野のムービーを制作・アップロードしているGiertzさんは取材などでよく「テクノロジー分野で活躍する女性」として取り上げられることに気が引けているそうです。「少数の人が取り組んでいる分野に入ると、誰でも自動的に『その分野の代表』になってしまいます。すばらしい女性たちのインタビューは『女性であること』に注目されすぎるがあまりにダメになってしまうことがよくあります」とGiertzさんは語りました。
人生における野望はありますか?という質問に対しては「今はダーウィン賞を受賞しないようにすること」と語るGiertzさん。ダーウィン賞は進化論者のチャールズ・ダーウィンにちなんで名づけられた皮肉の名誉であり、「愚かな行為により死亡する、もしくは生殖能力を無くすことによって自らの劣った遺伝子を抹消し、人類の進化に貢献した人に贈られる賞」となっています。
その他、スケールの大きなもので言えば宇宙に行くことと潜水艦を買うこと、小さなもので言えば10年以内に溶接を学ぶこと、運転免許を取得することなどを挙げています。また、Giertzさんの目的は「コンテンツを作ること」と「面白いことをすること」なので、ムービー以外の可能性も視野に入れているとのこと。
数々のロボットを生み出しながらも、「自分の作ったロボットたちに反逆される悪夢」を見ることはないというGiertzさん。しかし「ロボットは自分の子どものようなものだから?」という質問に対しては「いいえ、自作ロボットの中にはすごく怖いものもあります。カットマシーンについては『なんてものを作ってしまったのだろう』と恐怖を感じることもあります」と答えました。
以下が恐怖の全自動野菜カットマシーンです。
I built a chopping machine - YouTube
マシーンのスイッチを入れ……
2本の包丁がセッティングされた機械の下にニンジンを置くGiertzさん。
包丁が激しく動き出しました。
バラバラとカットされていくニンジンたち。
スイッチをオフするとマシーンはストップ。
カットされたニンジンを手にとり……
手間いらずで新鮮な野菜が楽しめるというわけです。
この他のGiertzさんのムービーは以下から見ることができます。なお、Giertzさんは現在、TestedというYouTubeチャンネルとコレボレーションして全自動ポップコーン食べさせマシーンを開発中です。
Simone Giertz - YouTube
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