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トンデモ発明品を作り続ける女性が語る「意味のないもの」を作り続ける意味とは?


発明家のシモーネ・ギールツ氏は、「実用には向かない意味のない発明品」を作ったムービーをYouTubeに投稿するYouTuberとして、YouTubeだけでなくTV番組にも出演する女性です。そんなギールツ氏が「意味のないもの」を作る意味について説明した、TEDのムービーが公開されています。

Why you should make useless things | Simone Giertz


「こんにちは。シモーネです」と語る女性。


ギールツ氏は「私はこのステージに立って、非常に緊張しています。じゃあ緊張をほぐすためにはどうしたらいいのでしょう?」と聴衆に語りかけます。


「大勢の人の前に立ってたくさんの目に見つめられているから、自分は緊張してしまうのではないか?では、こちらもあなたたちのことを見つめ返せば、ちょうどよくなるはずです」とギールツ氏は述べました。


「そこで私は、特製のTシャツを作りました」


そう言ったギールツ氏が取り出したのは……


大量の目玉が取り付けられたTシャツ。取り付けられた目玉がぶつかり合って、ジャラジャラと音を立てています。


「私は227個の目玉をつなぎ合わせてこのTシャツを作るのに、14時間もかかりました」と笑いながら話します。


ギールツ氏は「このTシャツを作った理由の半分は、私があなたたちを大量の目で見つめ返すことができるからです。そして、残り半分の理由はこれです」と言って体を振り、ジャラジャラと音を鳴らしました。聴衆から笑い声が響きます。


「私がやっているのは、だいたいこれと同じようなことです」と語るギールツ氏。


「人々が抱えるさまざまな問題に対する解決策を作るのです」


ギールツ氏が例に挙げたのは「歯磨き」。誰もが健康な歯を維持するために歯を磨かなければなりませんが、非常に面倒な作業でもあります。


「そこで私は、歯磨きの問題を解決するマシンを開発しました」そう言ってギールツ氏が取り出したのは……


ヘルメット前部のアームに歯磨きが取り付けられた謎のマシン。


ギールツ氏がコントローラーを操作すると、歯磨きが取り付けられたアームが横に動き、歯を磨く動作を開始しました。的を外しまくったあまりにも雑な動きに会場が笑いと拍手に包まれます。


ギールツ氏はヘルメットを取り外しながら、「残念ながらこのヘルメットは10人の歯科医中1人もオススメしてくれなかったため、歯磨き業界に革新を起こすことはありませんでした。しかし、私の人生は大きく変わりました」と語りました。


3年前にこのヘルメットを作ったギールツ氏は、ヘルメットを装着して実際に動かす、わずか7秒のムービーを投稿したとのこと。すると、そのムービーはインターネット上で大きく拡散され、ギールツ氏を一躍インターネットの人気者にしました。


「コメント欄には大量の男性から『結婚してくれ!』というコメントが付きましたが、私はそれを全部無視してYouTubeチャンネルを開設しました」と笑いながら話すギールツ氏。


ギールツ氏は「私は『役に立たない発明をする人』として、ニッチな分野を切り開いたのです。何かのトップに立ちたければ、他に誰もいない分野に行けばいいという簡単な話です」と語り、聴衆は笑いと拍手に包まれました。


ギールツ氏の発明品の1つ、ヘアカットドローンは……


残念ながら髪を安全にカットすることはできません。


また、絶対に起きられる目覚ましマシンは……


マシンに取り付けられた手が何度も頭をたたくという、少々手荒な代物です。


ギールツ氏は大学で工学を選択したわけではないそうですが、中学と高校は非常に「オールA(最高の評定)」という優秀な成績で卒業したとのこと。しかし、同時に大きなプレッシャーを感じていたとギールツ氏は述べています。


当時のギールツ氏が兄に送ったメールには、「人にバカだと思われたくない」というギールツ氏の心情が告白されていました。


しかし、あるときギールツ氏は数学のテストで「B」を取ってしまったそうで、「これは私にとって大きな出来事でした」とギールツ氏は語ります。


「その時、私はロボットを作ることに興味を持っていました。しかし、高度なハードウェアの分野で成功を収めようとしてもなかなか難しいものです。結局失敗して、自分があまりにも無知であり、バカであるということに気づいてしまう可能性が非常に高いだろう、と私は思いました。そこで私は、100%成功する計画を立てたのです」


「それは、『失敗する発明品を作る』というものです。これなら絶対に失敗しません」とギールツ氏は冗談めかして話します。


この「失敗する発明品を作る」という計画は、ギールツ氏にとってパフォーマンスの不安を抱えることなく、のびのびとやりたいことをやれるという利点もあったとのこと。


「発明品を作るには、まず解決したい問題を特定することが大事です。大きな問題でも小さい問題でもOKです」と語るギールツ氏。今回のTEDプレゼンテーションを行うに当たって、ギールツ氏は自分がどんな問題を起こしそうか考えました。


その中には、「しゃべる内容を忘れる」「聴衆が笑ってくれない」「社会の窓が開いている」というものの他に、「手が震える」という問題がありました。


ギールツ氏は「緊張して手が震えてしまう」そうで、学校でプレゼンテーションを行う時には、自分の手元を隠してスピーチの紙が震えているのが見えないようにしていたとのこと。


「しかし、手が震えているのを隠そうとすれば、しゃべっている最中に用意しておいたグラスの水を飲むことができません」と考えたギールツ氏は、自動で水を取ってくれるマシンを開発したとのこと。


目玉のついたTシャツを脱いで、代わりに取り出したのは……


首の周りをぐるりと囲む円盤が付いた装置。


この円盤はコントローラーに連動してグルグルと回り、円盤の上にいろんなものを置くことができるそうです。


ギールツ氏はポップコーンを取り出し円盤の上にセット。


早速クルクルと円盤を回転させますが、遠心力でぽろぽろとポップコーンが床に落ちてしまいます。しかしギールツ氏は「科学の発展には犠牲が付きものです」と、多少の犠牲には目をつぶる方針の模様。


無事顔の前までポップコーンを移動させると……


肩をすくめてポップコーンの位置と口の位置を合わせます。「どこからどう見ても手で食べたほうが楽だろう」というこの窮屈そうな姿勢に、会場から笑いが響きます。


そしてボタンで取り付けられた手を動かすと……


見事にポップコーンがギールツ氏の口に入りました。口に入らず飛び散ったポップコーンも相当数ありましたが、「科学には犠牲が付きもの」なので仕方ないといえるでしょう。


予想以上に装置がうまく動作し、ギールツ氏も笑顔。


「あなたたちが拍手している間に、口の中のポップコーンを食べちゃいますね」


さて、ポップコーンでのデモンストレーションが終了したところで、そもそもの問題であったグラスが登場しました。残念ながら今回は水を入れていない模様。


「まずはグラスを円盤の上にセットします。『この時、手が震えているのがわかっちゃうのでは?』と思う人もいるかもしれませんが、全く問題ありません。なぜなら、あなたはこの非常に魅力的な装置を身につけているため、他の人はそれ以外のことに注意が向かないからです」とギールツ氏は語ります。


微調整を繰り返しつつ、グラスを顔の前に持って来ました。ボタンで手を操作しますが……


残念ながら失敗。


「生きていることって、なんて美しいのだろうと思いませんか?」と言って紛らわせるギールツ氏に、会場から笑いと拍手が起こります。


装置を取り外したギールツ氏は、「私が作るマシンは確かに役に立たないマシンばかりですが、専門的なエンジニアにとって失われがちな『喜びと謙虚さ』を取り戻すことが可能です」と語ります。


ギールツ氏にとっては「頑張ってもうまくいかないのではないか」という恐れを、意味のないものを作ることで無効化することができたのです。


「私は今、『意味のないものを作ること』を仕事にしています。この仕事自体は、私が計画したものではないんですけどね」と言って、ギールツ氏は笑いました。


ギールツ氏は2018年4月にYouTubeへ公開したムービーで、自身が脳腫瘍を患っていて手術する必要があると述べています。手術は2018年5月末までに行うとのことで、ムービー投稿時点では良性腫瘍か判明していないそうですが、無事手術が終了すれば再びYouTubeへの投稿を再開するとしています。なお、ギールツ氏のおもしろ発明を集めたYouTubeチャンネルは、以下から見ることができます。

Simone Giertz

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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