睡眠時間の短さを競い合う「寝てない自慢」はダメという理由
By herval
人間の脳は睡眠中にも活動し、記憶の整理や定着を行っているといわれています。生き物にとって寝ることは非常に大事なわけですが、「昨日も徹夜しちゃったよ~」と寝てない自慢をする人も少なくありません。しかし、睡眠時間を削ることを長い目で見ると、後になって重い「ツケ」が回ってくると指摘するエントリが公開されています。
Sleep deprivation is not a badge of honor — Signal v. Noise — Medium
https://m.signalvnoise.com/sleep-deprivation-is-not-a-badge-of-honor-f24fbff47a75#.fegiyikxq
ブログでこのエントリを公開したDHH(David Heinemeier Hansson)さんは、「夜に寝ないで済まそうとすることは、高利貸しからお金を借りることと同じです」と危険性を語っています。DHHさんはウェブアプリケーション・フレームワークのRuby on Railsを作り上げ、ウェブベースのプロジェクトマネジメントツールのBasecampの設立者でありCTOを務める人物で、自らもプログラマーである経験から、睡眠時間を削ることで起こり得る危険性を次のように指摘しています。
◆融通が利かなくなる
人は疲れ切ってしまったとき、その後の作業スケジュールを見直そうとはせずに、どんどんと雲行きが悪くなる、いわゆる「ドツボにハマる」作業に陥りがちです。その様子をDHHさんが「まるで砂漠の中をさまようように」と表現しているように、十分な睡眠がとれていない状況では、キリのない作業を延々と続けてしまいがちになります。
◆生産性が欠ける
他の人よりも生産性が10倍高いプログラマーと普通のプログラマーとの違いは、10倍多くコードを書いているからではないとDHHさんは語ります。その代わり、生産性が高い人は10倍高い問題解決能力を発揮しているとのこと。このような能力は、疲れているときにはガクンと低くなってしまうので、やはり睡眠は重要。
◆やる気が減退する
脳がフル稼働していない状態だと、人はあまり面倒くさくない仕事を選んでしまうものです。RSSリーダーに流れてくるニュースに目を通したり、どうでもいい記事に目を奪われるのはその最たる例といえるとのこと。この状態では、本当に重要な問題に取りかかることはできません。
◆怒りやすくなってしまう
十分な睡眠がとれていないときに、近くに失礼な人が来ると、怒りをぶつけてしまうことが多くなります。我慢強さや寛容性は、自分の疲れのレベルに大きく影響を受けます。DHHさんも、「ちゃんと眠れていないときの自分は最悪な状態にある」と語っています。
これらはDHHさんが自らの体験をもとにして、睡眠がとれていないときの悪い状況を挙げたもの。いずれも決して好ましいものではなく、いずれ問題となって自分に返ってくるツケになるといいます。DHHさんがいるようなテック系の業界では、自分がいかに寝ていないかという「寝てない自慢」をする人が多いとのことですが、果たしてその意味はどこにあるのでしょうか。DHHさんは、「自分が重要だと思わせたい?必要とされている?犠牲を強いられている?いいえ、あなたはそこまで重要ではないし、必要ともされていない。今やってるその仕事は、そんなに急ぎではありませんよ」と、考えを和らげることを促しています。
By Kanghee Rhee
そしてDHHさんはこう核心を語ります。「ソフトウェア開発は短距離競走ではなく、むしろマラソンのようなものです。それも、いくつもが平行するマラソンのようなもの。なので、今日は100パーセントの力を発揮して、明日は70パーセントの力しか出ないというのは問題があります。その結果、能力のピークが77パーセントにとどまっている、ということであれば、これは大きな問題です」
そのため、DHHさんは日ごろ、少なくとも8時間半の睡眠をとるように心がけることで、よいメンタルの状態を保つようにしているとのこと。「中にはもっと短い睡眠時間で十分という人もいるかもしれませんが、『6時間も寝れば十分だ』と思っているのは幻想です」と、十分な睡眠をとる必要性を語っています。さらに悪いことには、あまり寝ていない人に限って睡眠の重要性を認識していないという事実があるとのこと。睡眠時間の不足は、確実に自分に悪い影響を及ぼすことになると指摘しています。
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