レビュー

徳を積んで石を並べ作庭していく純和風ボードゲーム「枯山水」


あまりの人気で一時はゲーム屋にいっても売り切れが続出していた庭園制作ボードゲーム「枯山水」が、新装版になったおかげかようやく手に入ったので、遊んでみました。

枯山水 新装版 - New Games Order, LLC.
http://www.newgamesorder.jp/games/stone-garden

◆ゲーム準備
パッケージにはママダユースケさんによる味のあるイラストが描かれています。ゲームの作者は山田空太さん。


ふたを開けるとこんな感じ。


「枯山水」の名前にふさわしく、庭園に並べる石がぎっしり。


大きいものだと45gと、手にするとちょっとした重さを感じます。


たくさんの石がありますが、種類で分けるとこの写真に並べたように立石(大)、立石(小)、臥石、横石、舟石と5種類です。


それぞれの石の裏側には種類を間違えないように印がついています。


そしてこれがボード類。左から寺院ボード、庭園ボード4枚、砂紋タイル80枚(シート4枚分)。


作庭家カード9枚、名庭園カード14枚。


禅僧駒と円相駒が4個ずつ。プレイ人数は2人から4人ですが、人数は多い方が楽しいです。


初回プレイ前に、タイルはシートから外す必要があります。そして、裏返してしっかり混ぜます。


寺院ボードの石庭部分に、タイルを9つの山に分けて置き……


裏側の庭に石を並べます。石はのちほどプレイヤーが自分の庭園に並べるので、どの石なのかわかるように種類別にまとめておいた方が便利です。周囲には0から80までの目盛りがついていますが、これはゲーム終了後の勝利点確認用トラックで、ゲーム中は使いません。


寺院ボード中央はこんな感じで「徳ポイントトラック」になっていて、円相駒を使って各自の徳がいまどれぐらいかを示しています。溜めた徳の値に応じて、自分の庭園に石を配置できます。


これでゲーム開始の準備は完了です。


ゲーム開始時の手元はこんな感じで、庭園ボード・禅僧駒が配置され、名庭園カード・作庭家カードが1人1枚ずつ配られます。このカードは他のプレイヤーに見られないよう注意。


「名庭園カード」というのは、ゲーム終了時にこのカードに描かれたとおりに石を配置していたらボーナス点が入るというもの。これは「東福寺」で、庭園左上角に△の印で示された立石(小)、その右下に横石(□)、右端中央に何らかの石(☆)を置けば、カード右肩に書かれた10点が得られます。


名庭園には再現しやすさによって10点から15点まであります。これは15点の「西芳寺」で、石を4つ置かなければなりません。また「石は原則的に縦・横に隣接しておくことはできない」というルールがあるので、中央列に描かれた隣接した2つの石を置くためには「苔タイルの上なら石を隣接しておくことができる」というルールを利用する必要があります。


「作庭家カード」は、ゲーム中で1人1回だけ使えるお助けカード。例えば「夢窓疎石」だと、「寺院ボードから石を1つ取り、自分の庭園の任意のタイルに設置する」という効果があります。


「雪舟」は「山札からタイルを3枚引き、これらから1枚選んで自分の庭園に配置する。残りの2枚は廃棄する」。いずれの作庭家も、ここぞというところでプレイヤーを助けてくれるので、使いどころが肝心。


◆ゲーム開始
今回、自分(橙)の名庭園は「天授庵」、作庭家カードは「雪舟」でした。天授庵は石を3つ配置する庭園で、そのうち2つはどの種類の石でもよいので、積極的に狙っていきたい庭園です。


まず、自分の手番が来たらタイルを1枚引きます。このとき、タイルは全員に見せます。


このタイルについて「配置」「譲渡」「廃棄」「保管」のいずれかを行います。「配置」は配置済みタイルに隣接する場所に置く、「譲渡」は希望する人にタイルを渡して徳を2点得る、「廃棄」はタイルを置かずに箱に捨てて徳を1点失う、「保管」はタイルを仮置き場に置く、です。ゲーム開始直後は徳が0なので「廃棄」はできませんが、必ず「配置」しなければいけないわけではなく、譲渡して欲しい人がいればあげてもOK。


「配置」を宣言。タイル1枚目は左上か左下に置きます。


今回は左下に配置。そして、禅僧駒をこの上に置きます。


ここまでが手番の中の「手順1」で、続いて「手順2」を行います。手順2は、「座禅で徳を1点得る」「禅僧駒を配置済みタイル上で1マス移動させる」「徳を0に戻して石を獲得し禅僧駒のある縦列のタイル上に設置する」「作庭家カードを出して記載の効果を得る」の4つから1つを選んで行います。


開始直後なので、座禅をして徳を積みました。


プレイヤー青の手番。引いてきたタイルはこんな、小さな渦がついたもの。


これは、自分が先ほど置いたタイルにつなげれば半円になるタイル。このゲームでは石の配置以外に、砂紋タイルをどう配置していくかということもとても重要で、砂紋で半円を作れば構成するタイル1枚につき1点、真円を作れば構成するタイル1枚につき2点が得られます。しかし、砂紋の境界が繋がらない場合は1ヵ所につきマイナス2点なので要注意。……つまり、このタイルをもらえれば半円ができて点になるということなので、「欲しい!」と主張してみました。


しかし、まだ1枚目ということもあって、青は「配置」を宣言し、庭園の左上に置きました。この「配置」宣言があった後、徳2点を消費してタイルを「強奪」することも可能です。


プレイヤー黒は苔のついたタイルを獲得し、左下に配置しました。


プレイヤー紫も1枚目を左上に配置。


2巡目の青は、先ほどの渦とは大きさの違う大きな渦タイルを獲得。渦の大きさが違うと半円は構成できません。


青はタイルを売り込みにかかりますが、誰も欲しがる人間がいなかったため、仮置き場に保管しました。保管したタイルは自分の手番が来たとき、手順1の前後に配置することが可能で、引いたタイルと入れ替えることも可能。ただし、「引いてきたタイルと仮置き場のタイルを入れ替えて、もともと仮置き場にあったタイルを譲渡・廃棄」はできません。


じわじわとみんなの徳が溜まってきました。


徳が2溜まったところで、橙が1つ目の石を配置。


石は種類によって必要な徳が異なりますが、徳が6溜まっていれば得た石を庭園の任意の場所に置くことが可能。徳は6までしか溜まらないので、ただただ徳を積むのではなく、適度に使っていくことが大事。なお、石を獲得すると徳は0に戻ります。


今度は、青が石を獲得。禅僧駒のいる縦列にはタイルが1つしかないので、禅僧駒が今いるタイルに置くことに。


このとき、ボーナス移動が発生して、禅僧駒を1コマ移動させることができます。通常、禅僧駒は手順2で移動させなければならないので、うまくこのボーナス移動を活用したいところ。


やがて、全員がぞれぞれ庭園に1つずつ石を配置するところまで来ました。庭園のタイル枚数は譲渡などがあるため、全員が同じ枚数で進んでいくとは限りません。


黒が、庭園の中央横列に苔タイルを配置。タイルは砂だけのものが多く、また、苔が全面を覆っているタイルは存在しないので、この位置にこの種の苔タイルを配置することはかなり異例。間違いなく、何かを狙っています。


そうこうしている間に、自分の庭園は残り4枚。ここまで砂紋の流れはきれいに繋がっているので、中央上部と中央下部の苔もうまく繋げておきたいところ。そこで、作庭家「雪舟」の出番です。山札から3枚のタイルを引き、その中から好きな1枚を配置するという効果がかなり強力だということがわかります。


ところが、なんたることか、引いた3枚はいずれも苔のないタイル。どれだけ作庭家が強くても、タイルの引きが弱くては……。


黒も作庭家「善阿弥」を出してきました。効果は「山札からタイルを2枚引き、これらを任意の順番で自分の庭園に配置する」で、もし不要なら徳を消費することなく廃棄できます。これもまた、強い……。


自分は残り3枚、そのうち2枚に苔タイルが欲しいのですが、引いてきたのは大きな渦のタイル……。


しかし、ここで青が、仮置き場のカードを組み合わせることで半円ができることに気づいて「欲しい」と言ってくれました。指さしているのが譲渡したタイルで、青は次の手番で上のスペースに仮置き場のタイルを置けば大きな半円が完成。これはWin-Winの譲渡でした。


徳を積んだことで、手前の苔の上に舟石を置くことができました。天授庵を再現するには、あとは臥石を中央に置くだけ。ちゃんと隣接して配置できるように、苔タイルを配置済みです。(石を隣接させるからといって、苔の模様が繋がっている必要はありません。)


黒の庭園は残り5枚。ここで、苔タイルではあるものの、今ある苔とはうまく繋がらないタイルを引き当てました。


このタイルは、自分にとっては上の横列の苔にピッタリ。「ぜひ欲しい!」と名乗り出たのですが、「保管」されてしまいました。こういうときに「強奪」すればいいのですが、先ほど石を配置したせいで、徳が足りません……。


そして、自分の庭園は残り2枚へ。引き当てたのは、どうやっても繋がらない砂紋のみのタイル。


これをまた青が「欲しい」と言ってくれました。実は、青にしてみれば最初に配置した小さい渦つきタイルのペアがいつまでも出てこず、終盤まで埋まらなかったところへ渡りに船のタイルだったというわけです。


そして、青がとうとう15枚目のタイルを引きました。ゲームは全員が15枚のタイルを配置するまで終わりませんが、誰かが15枚揃えると、以後は手順1で「譲渡」「廃棄」ができなくなります。また、揃えた人は手順1を飛ばして、手順2のみを行います。


青に渦つきタイルを譲渡することで、チャンスをもらった状態でしたが、次の手番に引いたのはまたも砂……。もう青が15枚のタイルを揃えたので、あとは配置か保管しかありません。


隣の苔とつながらないとわかった上で、配置。


黒は橙とは反対に、砂だけのタイルが欲しいのに苔がついてきて苦しんでいました。保管しているタイルと入れ替えたとしても、周囲の砂とどうやっても合いません。


そして、紫が15枚目を引き、配置。


これでゲームは終了、勝利点の計算に入ります。


庭園にいた禅僧駒を、寺院ボードの角にある「0」に置きます。


「枯山水」は、お互いの庭園が見えていても勝っているのか負けているのかわからないところがあり、計算で各自の点数が見える過程もまた1つの楽しみ。

そこで、それぞれの要素点ごとに各自の数字を出していくことにします。


1番目は「砂の基礎点」、これは砂のみのタイルで構成された区画のうち、最も大きい部分の面積を加算します。下記図だと横2×縦3で6点。


各自計算をしてみると、トップは紫で8点、次いで橙と青が6点で並び、黒は3点。


2番目は「苔の基礎点」。苔タイル1枚につき2点が入ります。下記図だと5枚あるので10点。


ここは苔タイルを引きまくった黒が大きく点を伸ばし、一気にトップに。


3番目は「対称性ボーナス」。横列の5枚が左右対称なら1列につき5点入ります。今回のプレーではありませんが、下記の例だと上段・下段がそれぞれ左右対称なので、5点×2で10点。


4番目の「渦ボーナス」は、真円なら構成するタイル枚数×2点、半円なら構成するタイル枚数×1点。下記例だと2枚で作った半円が2つなので、1×2×2の4点。タイルの中には1枚に半円が描かれているものがあるので、もしそれを得られたら1枚で1点、2枚揃えて真円を作れば4点です。


黒は苔が多かった分、あまり渦が作れず、ここで他のプレイヤーに追いつかれることに。


そして5番目、「砂紋の評価」。繋がっていないタイルの境界1か所につきマイナス2点で、もし15枚がすべて繋がっていれば7点。下記例は赤い印をした2か所で繋がっていないのでマイナス4点。この例はいずれも苔をうまく繋げられませんでした。基本的に、砂同士であれば横は必ず繋がるようになっているのですが、円を構成するタイルが出てくると縦方向の繋がりが難しくなります。


ここは唯一、点がマイナスされる可能性のあるところ。それだけに、ここでしっかりボーナスを獲得できると大きく差がつきます。今回のプレイでも、青のみが砂紋をすべて繋げて、他3人は繋げられなかった結果、上から下までで実に11点もの差が……。


6番目は「石の基礎点」。庭園に配置した石1種類につき2点。石は5種類あるので、最大10点です。下記の庭園は配置した石がすべて異なる種類なので、4種類で8点。


7番目は「石組の評価」。2×3のタイルの対角に石2つを配置する「桂馬置きボーナス」(1か所5点)、3×3のタイルの対角線上に石を3つ配置する「斜め置きボーナス」(7点)、上段横列に立石(大)2つを隣接して配置する「蓬莱山ボーナス」(1人1回のみ・10点)、上段横列に立石(小)・立石(大)・立石(小)の順で配置する「三尊石ボーナス」(1人1回・15点)、中央縦列に臥石を配置する「臥石ボーナス」(1つ3点)、下段横列に舟石を配置する「舟石ボーナス」(3点・庭園における舟石は1個のみ)を加算します。

注意点として、桂馬&桂馬、桂馬&斜めができそうなとき、石を重複カウントするのは不可。また、桂馬・斜めとも、成立要件のタイル内に他の石があるとボーナスは成立しません。このため、斜め置きボーナスは1つの庭園で1つしか成立しないはず。他方、「桂馬&蓬莱山」や「斜め&舟石」のような組み合わせの場合は、石の重複カウントはOK。

この庭園の場合、下段中央の舟石を起点に桂馬のような形が2か所ありますが、どちらの2×3エリア内にも臥石が入ってくるので桂馬置きボーナスは不成立。臥石ボーナスと舟石ボーナスは成立するので6点。


8番目は「名庭園ボーナス」。最初に配られた名庭園カードの庭園を再現できていれば、カードに書かれた点数が加算されます。橙は天授庵を再現することに成功、11点。


なんと、黒も瑞峯院の再現に成功していて13点獲得。あの中段に置かれた苔は、この立石(小)を2つ並べるためのものだったわけです。


この時点で、トップは橙(41点)。青が40点で続き、名庭園を再現した黒は石組ボーナスがまったく入らず32点、紫は30点。……しかし最後に、ゲーム終了時に残していた「徳」1点=勝利点1点として換算します。


徳を使い切っていた橙に対して、早くタイルを揃えて座禅していた青は徳を2溜めていたので、最後に2点加算。最後の最後に、徳の差で青が逆転勝利しました。


実は、青は苔タイルがうまく引けなかったことから早々に名庭園を諦めることになり、斜め置きボーナス(7点)と舟石ボーナス(3点)、そして砂紋評価(7点)を狙っていたことが判明。

最終的なそれぞれの庭園はこんな感じになりました。まずは橙の庭園。


青の庭園


黒の庭園


紫の庭園


こうして見てみると、名庭園にこだわった橙と黒は石を置くために無理な苔タイルの配置をした結果、終盤で自由にタイル選択ができなくなってから、境界の繋がらないタイルを置かざるを得なくなり、点を失ってしまったことがわかります。青の庭園は、トップにふさわしい落ち着いた庭園で、敗北に納得。名庭園の再現を追いかけるのではなく、自分なりの庭園をいかに作り上げるのかがコツなのかもしれません。

なお、プレイ時間目安は60分~90分となっており、慣れるとちょうど60分ぐらいでプレイできました。


「枯山水」は現在、Amazon.co.jpでもマーケットプレイスに新品・中古品が出品されています。新品の場合、記事執筆時点での価格は1万1980円でした。

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in レビュー,   ゲーム, Posted by logc_nt

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