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AmazonのKindleストアで盗作を投稿してランキング1位になる方法とは?

by quattrostagioni

盗作の小説を使ってKindleストアのロマンス小説カテゴリ1位に輝いたJohn Havelさんが、わずか5日間で1800人もの読者を獲得してAmazonの2つのカテゴリでランキング1位に躍り出る方法を公開しています。

Part 2: Confessions from the Scammy, Underground World of Kindle eBooks | The Hustle
http://thehustle.co/part-2-confessions-from-the-scammy-underground-world-of-kindle-ebooks


John Havelさんは、「他人の小説を安く買いたたいてKindleストアで自分の作品だと称して公開する」という手法で年間15万ドル(約1900万円)を手に入れたSidd Finchさんの話を知り、「他人の作品を利用してAmazonに投稿するだけで簡単にランキング1位になれるものなのか?」と疑問に思ったそうです。そしてHavelさんは、Finchさんの手法の大部分を真似して、実際にKindleストアでランキング1位を獲得できるかどうかを試すことにしました。

Havelさんは「Finchさんの手法を真似て1週間以内にAmazonの売上1位になる」ことを目標に掲げて本格ロマンス小説のカテゴリに挑戦。なお、他人の作品を自分のものだと偽って販売する行為は「読者をだます」ことにも近いため、Havelさんは最初からKindleストアの売上をすべてチャリティ団体に寄付すると決めていたそうです。

◆作品の制作
「制作」とはいってもHavelさんは自分で文章を書くのではなく、最初はパブリックドメイン化したロマンス小説を組み合わせて2万語程度の短編小説を作っていったそうです。ロマンス小説を選んだ理由は、Kindleストアで人気のあるカテゴリであり、Finchさんが「盗作を投稿するのが簡単なカテゴリだ」と評価していて、さらにHavelさんが好きなジャンルだったからだそうです。しかし複数の小説を組み合わせる手法は物語の背景や舞台がかみ合わず、つじつまの合わない作品になってしまったとのこと。

Havelさんは、誰が読んでも5つ星評価を与えたくなるような面白い筋書きの作品を投稿したいと考えて、パブリックドメインのロマンス小説のうちHavelさんが読んで面白いと感じた作品の登場人物の名前だけを変えて、表紙を作り直してKindleストアに出すことにしたそうです。Finchさんによれば、Kindleストアで人気の小説には億万長者や軍人が登場し、異人種間の恋愛が描かれることが多いそうで、Havelさんは主人公の男性を黒人という設定に変更。数時間の作業を経て6万語の作品を160ページのWord文書として改変したとのこと。

◆表紙とあらすじの制作
「本の内容を表紙で決めつけてはいけない」と言われますが、Kindleストアで本を売る場合は表紙の装丁が本の売れ行きに大きく影響します。読者は小さなアイキャッチ画像を頼りに本を選んでおり、さらに商品ページの説明を読んで購入する傾向があり、実際の本の内容は二の次になっているとのこと。そのため、Havelさんは筆記体とサンセリフの2種類のフォントを組み合わせて、腹筋の割れた黒人男性と上目遣いの女性の写真を左右に配置したデザインの表紙を作成しました。


◆Amazon上で配信
Amazonへ電子書籍をアップロードするのは簡単なステップをいくつか踏むだけで、数時間後にKindleストアでの配信が始まったそうです。Havelさんは評価欄に書かれたコメントを読んで「完全に『盗作すること』のとりこになってしまった」そうです。

しかし、作品を投稿してまもなくAmazonからHavelさん宛に、「あなたの作品の一部にウェブ上で無料公開されている文章がある」という指摘のメールが届いたとのこと。Havelさんはこのメールを見た途端に、自分の盗作が暴かれて全てが終わったように感じたのですが、その5日後にAmazonから新たなメールが届き、「小説を書き直して再投稿するか、ストア上から削除するかどちらかを選ぶように」と言われたとのこと。Havelさんはすぐさま内容を修正して再投稿したそうです。

以下のメールがAmazonから届いた2通目のもので、「作品を再投稿するか、パブリックドメインの作品だと認めて作者紹介を記入するか、Kindleストアから削除するかを5日以内に決めてください」と書かれています。


次にHavelさんはAmazonの「Author Pages」というサービス上で、小説の筆者Amber Wardの紹介ページ作りを始めました。架空の作者像を作り上げる作業はHavelさんにとって楽しい時間だったようで、現実味を持たせるために5人の実在の作家からヒントを得て小説家Amber Wardを作り上げたとのこと。最終的に「世界を旅しながら育ったAmber Wardは、心理学部を卒業してビジネスの最前線で働く女性。3人の兄がいる環境で成長したことから小さい頃にロマンス小説を書き始め、以来ずっとロマンスジャンルに注力して作品を書き続けています。あらゆる種類の時計が大好きで、嫌いなものは緑色の食べ物。夕暮れにシャルドネを飲むのが好きで、現在は夫と2人の娘とヨークシャーテリアと一緒にオハイオ州で暮らしています」という人物紹介ができあがりました。

以下のスクリーンショットがAuthor Page上に作成されたAmber Wardの作者紹介ページです。紹介ページ内の「JH Book Reviews」や「Pacific Weekly」という批評サイトの名前ももちろん本物ではなくHavelさんが作り上げたもの。


◆プロモーション活動
Amazon上で商品の購入ボタンをクリックしてもらうためには、とにかく商品ページのレビュー欄をコメントで埋め尽くすことが効果的で、HavelさんはGoogleスプレッドシートを使って60冊の本のレビューを組み合わせてコメントを次々と投稿。つまりHavelさんがKindleストアで配信した作品はコメント欄に至るまで「盗作」だったというわけです。それだけではなく、Havelさんは友人たち50人に本を送って、45個のレビューで平均4.8の評価を受けたとのこと。この一連のプロモーション活動には2日間かかったそうです。「もしも本を送るような相手がいなくても、偽のレビューを作成するサービスはいくつもあるので、それらを利用する手もある」とHavelさんは語っています。

Havelさんは本のダウンロード数を増やすため、Finchさんの助けを借りてAmazon側に「本のカテゴリを変更してほしい」と要望を出しました。Havelさんの本は当初ロマンス小説カテゴリのうち「アフリカ系アメリカ人の歴史ロマンス」という小カテゴリに入っていたのですが、「古代世界のロマンス」という小カテゴリも追加することで、実際の本の内容とは関係ないカテゴリにも関わらず瞬く間に両カテゴリで1位に躍り出たそうです。

Havelさんの本のダウンロード数を示したのが以下のグラフ。Kindleストアでは作品の投稿後に数日間ユーザーが作品を無料でゲットできる「フリーダウンロード期間(PROMOTIONAL PERIOD)」が設定されていて、Havelさんは2日間の「作品制作」と3日間のプロモーション活動を経て、フリーダウンロード期間中に1815回のダウンロード数を獲得してついにカテゴリランキング1位という目標を達成することに成功しました。


以下のスクリーンショットはAmazonの商品ページ上の作品紹介欄で、Havelさんの本が「Ancient World」と「Historical」部門でカテゴリ1位になっていることが分かります。


◆Amazonのシステムを悪用するのは簡単
Havelさんは既にKindleストア上から作品を削除済みですが、「真実味のある文章を作ればAmazonをだますことが可能」だと断言しています。さらにHavelさんは「Kindleで莫大な利益を上げている人の中には、私が試した手法と同様にAmazonのシステムの裏道を使って『ベストセラー』を自称している人もいる」としてKindleストアのシステム設計を批判しています。

なお、Havelさんの作品はほとんどが無料期間中にダウンロードされたので利益はほぼゼロで、さらにKindleストアに作品を投稿する登録料として9.96ドル(約1200円)が必要だったとのこと。Havelさんは今後、別の作品をKindleストアに5カ月間出してみて、生活できるレベルの売上が得られるのかどうかを試してみるとのことです。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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