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Amazonにバレることなく2年間もKindle電子書籍で売れ行きを偽装して不当に2億円以上を荒稼ぎしたプログラマが登場


Amazon.comで販売されているKindle用の電子書籍は、読者のレビュー(書評)やダウンロード数を参考にして書籍をダウンロードするかどうかを決めることができます。それまでどれくらいの読者に読まれた本なのかという情報は、Kindle電子書籍の販売の行方を大きく左右する重要な要素ですが、この情報をねつ造してダウンロード数を荒稼ぎするという行為「catfishing」を、なんと2年間もの長きにわたってAmazonにばれることなく淡々と実行したプログラマの存在が明らかになりました。

Revealed: How one Amazon Kindle scam made millions of dollars | ZDNet
http://www.zdnet.com/article/exclusive-inside-a-million-dollar-amazon-kindle-catfishing-scam/

Amazon.com上で、偽のレビューをねつ造することで書籍を不当に多数の読者に販売していたのはカナダのヴァレリー・シェルシェノフという人物です。シェルシェノフはMicrosoftなどでソフトウェア開発者として10年以上働いた経験を持つプログラマで、現在はスタートアップAlteroxityの代表を務めています。ZDNetによると、シェルシェノフは、料理やダイエット、健康に関する本などをゴーストライターに執筆させて、それを同一名義の著者の作品としてKindle電子書籍として出版していました。

これはシェルシェノフの作り出したエマ・ムーアという著者の書籍。実際にはエマ・ムーアなる人物は存在せず、ゴーストライターが書いた書籍がエマ・ムーア名義で発行されていました。ちなみにエマ・ムーアは一カ月間に5つの書籍を執筆して、Kindle電子書籍として出版していたそうです。


このような仮名での出版行為自体は違法ではありませんが、今回の大きな問題は、シェルシェノフが架空の人物の書籍の「売れ行き」をねつ造した点にあります。シェルシェノフは200個のプロキシサーバーを経由させつつ、Selenium web driverというツールを使ってあたかも実在する人間がAmazon.comにサインアップするかのように偽装することで、確認されているだけでも8万3899個の偽のAmazonアカウントを作成しました。


さらに、シェルシェノフは印税収入が入らないことを承知の上で、短時間のみ無料でダウンロード配信を行い、匿名ネットワークのTorを経由させてIPアドレスを隠蔽した状態で、架空のAmazonアカウントに書籍をダウンロードさせました。シェルシェノフは比較的ニッチなカテゴリーに絞って本を出版していたため、短期間にダウンロードされたことから売れ筋の本トップ100にランクインさせることができたとのこと。このトップ100にランクインしていることは、本が多くの人に読まれていることを示しているので、そのランクインの状況を見た人がシェルシェノフの本を購入するという行動に出て、シェルシェノフはまんまと印税をせしめたというわけです。


シェルシェノフはこのcatfishingによって、1453作品をKendle電子書籍として出版して2年間に244万ドル(約2億5000万円)もの大金をゲットしたとのこと。さらにKindle電子書籍と同時に書籍としても8万3340ドル(約840万円)もの売上があったそうです。シェルシェノフの行為は不当なことは間違い有りませんが、Amazonのシステムを悪用して書籍を販売した行為が違法な詐欺にあたるのかどうかは明らかではありません。AmazonのKindle電子書籍においては、これまでにも既存の電子書籍をコピーして新しい表紙と題名を付けて無断で販売するなどの悪質な行為が横行しており、Amazonは常に対策を余儀なくされています。

・おまけ
日本でもKindle電子書籍事業を展開するAmazonですが、読み放題サービス「Kindle Unlimited」で、講談社の作品が売れすぎたことを理由に一方的に無料ダウンロード対象から外したあげく、講談社からの抗議を受けると1000タイトル以上の講談社作品すべてを一方的に削除するという驚きの行動に出て、講談社とトラブルになっています。

アマゾン「キンドル アンリミテッド」サービスにおける講談社作品の配信停止につきまして
(PDFファイル)http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20161003amazon.pdf


また、佐藤秀峰さんが、Amazonから契約条件の不利益変更を求められ拒否したところ、作品を削除されたとして賠償を求める内容証明郵便を送付したことをTwitterで明らかにしています。

Kindle unlimitedに関して、アマゾンジャパン合同会社から契約条件の不利益変更を求められ、これを拒んだ所、それまでエントリーされていた作品の大半が削除され、その後の追加エントリーも受け付けられない件について、同社に対し賠償などを求める内容証明を送付しました。

— 佐藤秀峰 (@shuho_sato)

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in メモ,   ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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