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Amazon上で書籍関連の詐欺的行為が横行、被害者はAmazonではなくアマチュア小説家たち

By Tim Lucas

Amazonがアメリカ・イギリス・イタリア・スペイン・ブラジル・フランス・メキシコ・カナダ・ドイツ・インドで提供している定期購読サービスが「Kindle Unlimited(KU)」です。月々の購読料を支払うことで、自分の好きな本を利用期間の制限なく読むことができる同サービスの中で「詐欺まがいの行為が行われている」として、元海軍士官であり、現在SF作家として活動中のアン・クリスティー氏が指摘しています。

KU Scammers on Amazon – What’s Going On? | Ann Christy | Navy Commander by Day, Secret Writer by Night! | AnnChristy.com
http://www.annchristy.com/ku-scammers-on-amazon-what-you-need-to-know/

定期購読サービスのKUは無制限に登録されている著書を読みあさることのできるサービスですが、読書家がこれらの機能を駆使してAmazonで次に読むべき本を拾い読みすることは非常に困難になってきている、とのこと。これを困難にしているのはKUの中に氾濫している詐欺師の存在だそうです。

KUは定期購読サービスなので、同サービスで利用できる本とそうでないものが存在します。KUに登録されている本の著者は、本の値段に基づいて利用料を得られるわけではなく、「ユーザーがどの著書を何ページ読んだか」から収益が算出されます。よって、ユーザーがある本をKUで100ページ読み、「これは読まないでおこう」と考えたとしても、100ページ分の収益が本の著者には支払われます。対して、面白くて読まずにはいられないような本をユーザーが全ページ読破したとしても、ページ数分の収益が著者に支払われることとなります。

By Zhao !

書籍の権利者が得られる収益は、1ページ当たりわずか0.0045ドル(約0.5円)なので、350ページ分(約本1冊分)読まれたとしても、得られる収益はわずか1.575ドル(約170円)です。Amazonは読者がどの本がどれだけ読まれたのかは理解しているものの、そのページの内容までは把握しておらず、Amazonが理解しているのはユーザーが本の「どのページで読むのを辞めたか」のみです。これを基にKUに登録されている書籍の著者にページ数に応じた支払いが行われる、というわけ。

また、KUは端末で本を読み終わるまで同期しない(ページ数をカウントしない)という方式が取り入れられています。よって、前のページに戻って内容を確認しても読書ページ数が増えるということはありません。しかし、ユーザーが本の1ページ目にあるリンクをクリックして「Fire HDX 8.9」やAmazonギフトカードのページに飛び、その後本の3000ページ目までジャンプしたとすれば、著者には3000ページ分の利用料が支払われることとなります。この特性を利用して不正に読まれたページ数を荒稼ぎする詐欺師がKUの中に出没している、というわけ。


Amazonはこういった詐欺的行為が起こっていることを把握していたため、最近になって、突如KU内の書籍のページ数上限を3000ページに設定しました。この設定が有効になるまでの間、KUには1万ページ超えの書籍が多数存在していたそうです。なお、1ページ当たりの利用料として得られる最低額は0.0041ドル(約0.45円)ですが、1万ページ読まれれば4500円の収益を得られるため、ごく一般的な書籍の著者にとっては厳しい値段設定に感じるものの、詐欺師にとっては「うまみのあるシステム」になっている模様。

また、詐欺師の中にはKUで多くの利用料を得るためのノウハウを公開している者までいます。YouTube上でKUの仕組みを利用して詐欺的行為を行ったという15歳の少年は、なんとひと月で7万ドル(約760万円)を稼ぎ出したとのこと。この詐欺師が公開したチュートリアルによると、KUで大金を稼ぐ方法は以下の通りです。

1:粗悪な書籍もしくは書籍の一部を、広告もしくは実際の著者から購入。Amazonの審査は最初の数ページをパッと見てチェックするだけなので、そこさえしっかりしていればOK。
2:最初の数ページ以外にゴミページを3000ページほど追加
3:カバーやタイトルを変えるなどして同じような3000ページほどの書籍を25冊ほど用意。Amazonの自動審査を通過するためのものなので、もちろん最初の数ページ以外は無意味なものでOK。
4:きれいなEIN(米国納税者番号)を使って新しくKDPアカウントを作成
5:25個の書籍を25人の異なる著者名でKUにアップロード。書籍が公開されたらすぐに「5日間の無料広告」を使って書籍を宣伝。
6:「クリック農場」もしくは「クリック協同組合」を行う
7A:「クリック農場」は、書籍をアップロードした本人が自身のアップロードした書籍の「読まれたページ数」を、KUアカウントを使って地道に積み重ねていくという方法
7B:「クリック協同組合」は、アップロードした書籍のリンクを共有して複数のKUアカウントを使って書籍の「読まれたページ数」を稼ぐ、という方法
8:これらを行うことで、詐欺師は数千ドルを稼ぎ出すことが可能になる
9:詐欺師の中には書籍のランキングを上げるために人を雇う者も存在する
10:もしも書籍が一部ユーザーに通報されれば、ライブラリから書籍が削除されることもあります。そうなれば稼いだ資金も得られなくなるので、ページ数を稼いだ後は削除される前に書籍を非公開にし、Amazonからの支払いを確実に得られるようにします。
11:書籍を全て非公開にしたあと、支払日までKDPアカウントを維持しておく
12:Amazonからの支払いを得られたのち、書籍のカバーなどを変え、新しいKDPアカウントとEIN、著者名を駆使してもう一度稼ぎます。

これらを繰り返すことで、1冊につき600ドル(約6万5000円)を稼ぎ出すことが可能とのこと。つまり、25冊の偽装本で1万5000ドル(約160万円)を荒稼ぎできる模様。週に1度この詐欺的行為を行うだけで、ひと月で6万ドル(約650万円)の収入が得られるようになるとのこと。

実際にクリスティー氏が発見したという偽装本のひとつと見られるものが以下のもの。


実際に中身を読んでみたところ、粗悪なフォーマットではあるものの、最初の100ページ目あたりまでは本としての様相を保っているとのこと。しかし、それ以降は「混乱がスタートする」とのこと。


さらに、書籍の詳細をチェックしてみると、とてもひどいタイトル&表紙であるにも関わらず、同書籍はKindle Free Storeで公開されているあまたの書籍の中で2974番目にランクインしていることがわかります。また、挿絵なしの書籍であるにも関わらずデータのサイズは2837KBと非常に巨大である点も、詐欺に使用された偽装本であることを示すわかりやすい指標のひとつであるとのこと。さらに、公開日が4月10日なのに約1週間が経過した時点で既に非公開になっているという点も、偽装本の特徴のひとつとのことです。


システム上に明らかな欠陥が存在しており、それを詐欺師に使用されてしまっているKUですが、その被害者がAmazonではなくアマチュアの小説家たちであるという点は強い憤りを覚える状況です。

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in メモ, Posted by logu_ii

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