メモ

スマホに搭載可能な「Bitcoinマイニングチップ」を開発したスタートアップ企業「21」とその戦略とは


シリコンバレーで新たに立ち上げられたスタートアップ企業「21」が、仮想通貨「Bitcoin(ビットコイン)」を生みだすことが可能なチップ「BitShare」を開発しました。一般的には巨大な設備が必要といわれるBitcoinマイニングの世界とは全く逆の方向性を示す「21」の戦略ですが、そこには従来にない新たなBitcoin活用の構想が秘められているようです。

Bitcoin Startup 21 Unveils Product Plan: Embeddable Chips for Smartphones - Digits - WSJ
http://blogs.wsj.com/digits/2015/05/18/bitcoin-startup-21-unveils-product-plan-embeddable-mining-chips/

仮想通貨「Bitcoin」と一般的に流通しているお金の根本的な違いは、Bitcoinは「マイニング」と呼ばれる行為によって個人がBitcoinを次々と採掘できるというところにあります。そのため、中国を中心に世界中でBitcoinを掘り出すための巨大施設が稼働しており、今のこの瞬間もBitcoinマイニングが進められています。

By Marko Ahtisaari

そんな中でスタートアップ企業「21」が開発したのは、Bitcoinマイニング専用の小さなチップセットの「BitShare」。スマートフォンのような端末にも内蔵できるほど小さなチップであるBitShareは、世界の潮流に逆行するとも言えるものですが、その背景にはBitcoinマイニングをこれまでの「金儲け」としての手段ではなく、より暮らしやすい社会を実現するための手法として活用するという構想が隠されています。

◆スタートアップ企業「21」とその構想
2015年5月に正式に立ち上げを発表した「21」は、18か月にも及ぶ詳細なBitcoinコミュニティの動向調査を経て事業を開始した企業。「スタートアップ」と聞くと、数人の設立者が集まって起業した小規模な会社が連想されることも多いものですが、「21」はそのような小規模スタートアップ企業とは全く異なる様相を呈しています。

まず、2013年11月に同社が立ち上げられた時に集まった出資額の合計額は500万ドル(当時レートで約5億円)というもので、さらにそこから約16か月を経た2015年3月にはベンチャーキャピタル(VC)などから1億1600万ドル(約139億円)という巨額の資金を集めることに成功。投資者の中には、アンドリーセン・ホロウィッツRREベンチャーズといった著名VCのほか、チップメーカーのQualcomm(クアルコム)、さらにeBayやPayPal、Dropbox、Expediaといった企業の創設者などが名を連ねており、多くの注目を集めている様子を伺い知ることができます。

「21」の創設メンバーの1人であるバラジ・スリニバサン氏はスタンフォード大学出身の起業家で、シリコンバレーの中でも存在感を持つ人物。数々の実績を持ち、前述のアンドリーセン・ホロウィッツのゼネラルパートナーを務める人物でもあります。


さらに「21」は2015年5月の正式スタートにあわせ、同社の諮問団メンバーに元アメリカ財務長官のローレンス・サマーズ氏を迎え入れるなど、各界の人物を大きく巻き込んだ活動を進めています。

By Wikipedia

スリニバサン氏は5月18日に掲載した自身のブログで、「21」の構想について解説。BitShareを活用した今後のBitcoinの活用方法が詳細に述べられています。

A bitcoin miner in every device and in every hand — Medium


構想の中で語られるBitcoinマイニングチップはBitShareと呼ばれており、さまざまなフォームファクタ(規格)で提供が可能な組み込み用チップセットとして開発されているとのこと。インターネット接続端末に組み込まれるチップ単体として、また既存のチップセットに統合させる形での利用が可能とされています。具体的な形状写真などは公開されていませんが、さまざまな用途に合わせて活用することを念頭に開発されている模様。

ブログの中でスリニバサン氏は、BitShareの目的について「Bitcoinを掘り出して単に金儲けするためのデバイスではなく、産業における活用(industrial uses)を狙っている」と解説。各デバイス上に搭載したマイニングチップによる組み込み型マイニング(embedded mining)を行うことで、「利益のためではなく、利便性のためのBitcoin (Bitcoin for convenience, not profit)」という概念を実現するという構想が語られています。

これまでのBitcoinマイニングには巨大な施設に専用の演算装置がずらりと並べられたマイニングセンターが用いられていたのに対し、BitShareが普及した世界では無数の端末上でBitcoinマイニングを行うことにより、数多くのメリットが生みだされるというのが「21」が描く将来像となっています。例えば各端末で生みだされたBitcoinを使い、通常のクレジットカード決済では対応しきれないマイクロペイメント(超少額決済)が可能になるなど、従来の決済システムでは実現不可能だったサービスが可能になるとされています。

By Jonathan Waller

さらに、Bitcoinが広く普及すると予測されている途上国での活用も視野に入れられている模様。今後、多くの人が通信端末を持つことで仮想通貨の普及が進むと、特に通貨の不安定な途上国では安定性が高いと考えられるBitcoinの使用率が高まると予測されています。BitShareを搭載した端末が広く普及することで、Bitcoinによる経済が確実なものになると考えられているとのこと。

このように、「21」によるBitcoinマイニングチップ「BitShare」を理解するためには、これまでのBitcoinに対するものとは異なる視点を持つことが必要といえそうです。「Bitcoinは通貨か否か」という議論は世界中で現在進行中のトピックですが、今回のような新たな概念が登場することで、さらにその存在意義が形づくられていくことになりそうです。

By BTC Keychain

なお、サマーズ元長官はこの件に関して、スリニバサン氏のブログに書かれている以上のコメントを行わないことを公表しています。ブログでサマーズ元長官は「『21』によるチップはBitcoinの可能性に新たな次元を付け加えることになるでしょう。最初に私たちは、組み込みマイニング技術の登場に衝撃を受けることになります。次に衝撃を受けるのは、その技術が手元にないことに気づいた時でしょう」と、BitShareが広く普及する時代を先見するようなコメントを行っています。

「21」では、BitShareを用いた開発環境を提供しているとのこと。以下のサイトからアクセスして、開発キットをリクエストできるようになっています。

21 - 21 million bitcoins, infinite possibilities.

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
仮想通貨「Bitcoin」とは一体何か、どういう仕組みかが一発で分かるまとめ - GIGAZINE

仮想通貨「Bitcoin」を完璧に理解するために知っておきたいことまとめ - GIGAZINE

「Bitcoinは通貨ではないので課税対象」との見解をアメリカ政府が発表 - GIGAZINE

世界各国・地域の政府機関のBitcoinに対する姿勢・方針はどんな感じなのか? - GIGAZINE

数万台のコンピューターを導入して行われるBitcoinマイニングの現状はこんな感じ - GIGAZINE

1ヶ月で約1億8000万円を仮想通貨で稼ぎ出す巨大施設に潜入、知られざるその実態とは? - GIGAZINE

in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.