メモ

向上し続ける生産能率の恩恵は誰が受けているのか?

By James Yu

どんな仕事にも期間内にこなすべきタスクが存在するものですが、仕事に取り組む際の「生産能率」が向上すればそういったタスクも素早くこなせるようになるもの。さらにタスクが素早くこなせるようになれば、週の労働時間は徐々に短くなっていくはずですが……。技術の進歩と共に指数関数的に向上してきた人間の「生産能率」ですが、その影響はいったいどこに現れているのでしょうか。

Productivity and the Workweek - shorter hours
http://groups.csail.mit.edu/mac/users/rauch/worktime/


週休2日で1日8時間労働すれば、1週間の労働時間は40時間になります。この「40時間」をベースにこれまでの人類の生産能率の向上を見てみます。例えば、1950年の平均的な労働者が1週間に40時間働いた際の生産力は、2003年の平均的な労働者が1週間に11時間働いた際と同等とのこと。これはアメリカ労働統計局の集めたアメリカ国内のデータですが、ヨーロッパや日本でも同じような割合で生産能率が上昇している、とのことで先進国では類似の結果がでているのではと考えられています。

以下のグラフは1950年の平均的労働者が40時間働いた際の生産力をベースとして、各年の平均的労働者がこれと同じだけの生産をするには1週間当たりどれだけ働く必要があるかを表したグラフ。グラフを見ると、1970年代の中頃には、1950年の半分の時間で同じだけの生産ができるくらいに生産能率が向上しています。


アメリカで行われた世論調査によれば、1950年代にアメリカの田舎で過ごしていた人々は、現代のアメリカ人よりも「自身が満たされている」と感じていたことが分かっています。確かに多くの研究で「収入の増加は人々の幸福度を上げる」ことが分かっていますが、しかしそれは「基礎的な欲求が満たされるレベル」までの話で、一定以上の収入になるとそれと比例して幸福度が上がるということはない、とのこと。

時代が進むにつれて生産能率はグングン向上してきたわけですが、1975年以降は生産能率の向上速度が遅くなっています。1950年の平均的労働者による40時間分の労働は、1975年の20時間分に相当したわけですが、1975年の平均的な労働者による40時間分の労働は、2003年の23時間分、さらに1990年の40時間分の労働は2003年の29時間分。


生産能率の向上と労働者の幸福との関係について重要な事実が見落とされています。それは、「生産能率が長期間向上しているので、高い生産性を保ちながらも急激に職務時間を減少させることはできるはず」という点。これは実施可能なはずですが、なぜか行われません。

それでは生産能率の向上による恩恵を受けているのはどこの誰なのでしょうか?


アメリカ政府の統計によれば、「労働者」の国民所得は過去50年に渡って一定のままだそうです。しかし、この「労働者」というくくりの中にはビル・ゲイツのような億万長者も含まれており、むしろアメリカでは収入格差が昔よりも進んでいることを示唆します。そして、この収入格差の広がりは多くの一般労働人口が生産能率向上による恩恵を受けられずにいる、ということも表しています。

一定レベルの生活水準までは、ちょっとした生産能率の向上でも、人間の業務時間を劇的に減らしてくれる効果があります。しかし、現代はそのレベルを超えてしまっており、生産能率が向上したから業務時間がそれに比例して減少していく、ということにはなりません。なお、近年生産能率の向上率は低くなってはいますが、人間の生産能率は2050年までは向上し続けるだろう、とのことです。

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in メモ, Posted by logu_ii

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