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2011年の「タイ水害」がハードディスクの状況に与えた影響と今後の展望とは

By DVIDSHUB

2011年7月から翌年1月にかけてタイで発生して大きな被害をもたらしたタイ洪水は、電子機器の分野にも影響を与えました。タイは世界第2位のハードディスクドライブ生産国であったため、世界的なハードディスクの品薄状態を引き起こしたことも記憶に新しいところです。その事件がもたらした影響と今後予想される状況を、アメリカのオンラインストレージサービス提供企業であるBackblaze社が分析しています。

Backblaze Blog » Farming hard drives: 2 years and $1M later
http://blog.backblaze.com/2013/11/26/farming-hard-drives-2-years-and-1m-later/

Backblaze社はオンラインバックアップとデータバックアップのソフトウェアを開発する企業で、合計50ペタバイトという容量のストレージサービスを提供しています。常に数万台というハードディスクを稼働させており、以前にはその稼働状況を元にハードディスクの寿命傾向を統計的に分析していましたが、今回は新たにコスト面での分析を行いました。

◆危機による価格の変化
統計によると、1981年には100万ドル(当時のレートで約2億円)だったハードディスクのGB単価(ギガバイトあたりの価格)は、30年後の2011年には0.05ドル(約5円)と比べものにならないぐらい安くなりました。また、この価格の変化は一定のペースを守って推移していることがわかります。


しかし、2011年にタイで発生した大水害に端を発する「ハードディスク危機」がそのペースを崩すことになりました。2011年9月時点でのGB単価は0.044ドル(約4.4円)でしたが、危機による極度の品薄状態で価格は0.06ドル(約6円)付近に跳ね上がり、その価格が元の水準に戻るまでには2年という時間が必要でした。わずか0.02ドル(約2円)の違いではありますが、その期間中に50ペタバイト分の増量を行ったBackblaze社にとっては100万ドル(約1億円)の価格差となり、大きな打撃を与えることになります。


この状況をまとめたグラフが以下の通り。赤のグラフは「Status Quo(現状維持)」のGB単価で、タイ水害後に仕入れ元をいっさい変更しなかった場合にかかっていたであろうコストの試算です。紫の「Actual(実勢値)」は実際にかかったコストの遷移、そして緑の「Historical(当初予想)」はハードディスク危機が起こらなかった場合に予想された価格の変化です。


当時、同社がメインで使用していたハードディスクは日立製の「0S03230(3TB)」。危機が発生する前の2011年9月時点の価格は130ドル(約1万3000円)でしたが、2か月後の11月には249ドル(約2万5000円)にまで価格が急騰。GB単価は0.044ドル(約4.4円)から0.083(約8.3円)ドルと88%増加したと同時に、入手が非常に困難な状況に陥りました。上記の表では、同社が実際にかけたコストが紫のグラフで示されています。日立製のハードディスクが高コストとなったため、同社ではWestern Digital社とSeagate社に仕入れ先を変更しています。また、バルク品の入手が困難になった際には、量販店で家庭用ハードディスクを買い占めて分解したもの使用するという手法を用いたこともあるそうです。

これらの結果、同社では単価高騰によるコスト増を61万ドル(約6100万円)削減することに成功しました。

◆今後の見通し
先述の通り、同社におけるGB単価はようやく危機以前の水準に回復しました。下記のグラフが示すように、4TBハードディスクのGB単価の曲線は以前の実績とほぼ同じ動きを見せていることがわかります。


工場の移設や新設に時間がかかったことや、タブレットPCの普及で従来のPCのようなハードディスクへの需要が減ってしまってことなどさまざまな要因が考えられますが、回復のペースが鈍ってしまったのは事実。

物理ドライブを使用しないSSDのような記憶装置の普及が進みつつある中、ハードディスクの進化と単価の減少にどのような変化が起こるのかが気になるところです。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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