ハードディスクの寿命傾向がストレージ会社が集めたデータから明らかに
By Kevin Collins
仕事やプライベートにもコンピューターが深く入り込んできて、多くのデータや情報がパソコンのハードディスクに保存されている人も多いはず。しかし、そんなハードディスクにトラブルが発生し、中のデータが失われてしまったら……。機械である限り、間違いなくいつかは故障するハードディスクですが、そんなハードディスクの寿命について、興味深いデータが発表されています。
Backblaze Blog » How long do disk drives last?
http://blog.backblaze.com/2013/11/12/how-long-do-disk-drives-last/
このデータを発表したのは、アメリカでオンラインバックアップとデータバックアップのソフトウェアを開発するBackblaze社です。これまでの5年にわたるサービスから取得されたデータを分析し、ハードディスクの寿命を予測しました。同社で稼動している何万台というハードディスクのうち、78%には問題が発生しておらず、残る22%だけが4年の間に何らかのトラブルに見舞われていることがわかっています。
◆ハードディスクの使用環境
Backblaze社では、48個のハードディスクを搭載できるBackblaze Storage Podと呼ばれる専用のドックを、データセンターのラックに設置して使用しています。新規ユーザーが増えるたびにハードディスクは増設され続けており、現在のストレージ量は75ペタバイトに達しています。
◆使用されているハードディスク
このシステムで使用されているのは、サーバ専用に設計されたものではなく一般的に市販されているコンシューマー向けのハードディスクです。メーカーからは「RAID環境下で24時間/週7日でフル稼働するワークロード向けには設計されていない」とされているため、同社では冗長性ソフトウェアを導入してデータの保護を行っています。
使用されているハードディスクは、ほぼ全てがバルク品や「内蔵型」のような、むき出しで取り扱われるタイプのものです。2011年にタイで発生した大水害に端を発する「ハードディスク危機」が起こったとき、そのようなバルク品を安く手に入れることは非常に難しくなってしまいました。それに対応するため、Backblaze社では社員が街中のUSB接続の外付けハードディスクを買いあさって分解し、代替のハードディスクとして使用しました。そのときに導入したハードディスクは6ペタバイト分にも及び、今回のデータにも含まれています。
以下の表では、データセンターで使用されているハードディスクを製造年度別に示しています。同社の成長とユーザーの増加に従い、ハードディスクの数も増加をつづけていることがわかります。
◆故障率と「バスタブ曲線」
まず、「故障率」が何を意味するのか?それは次のとおりです。あるメーカーのハードディスクが、6ヶ月間は100%の安定性を保証しながらも、その直後に故障するとします。常に100台のハードディスクを稼動させ続けるためには、すべてのドライブを1年に2回交換する必要があります。1年に200台のハードディスクを交換する必要があるため、この場合の年間故障率は200%ということになります。
機器の故障発生時期を予測する際には、「バスタブ曲線」と呼ばれるものが引き合いに出されます。機器が故障する時期には、工場出荷時の不具合に起因する初期故障期、偶発故障期、機器の消耗による摩耗故障期の3種類があるとする理論です。
この理論のグラフは、Backblaze社の実際の故障発生件数データと合致しています。以下のグラフでは四半期ごとの故障発生数が示されており、最初の18ヶ月間は5%程度で推移した故障率は、その後にいったん落ち込みを見せますが、3年に達するタイミングで顕著に増加の傾向を見せます。この「3年目」という時期が、ハードディスクの寿命の一つのポイントと考えることができそうです。
◆平均余命を計算する
「ハードディスクの平均余命」とは何を指す言葉でしょうか?人間の平均余命は、全体の平均寿命から年齢を差し引いたものが平均余命とみなされています。2010年の段階で生まれたばかりの赤ん坊の平均余命は67.2歳であり、たとえ120歳まで生きたとしても、平均寿命は67.2歳ということになります。一方のハードディスクに関して言えば、およそすべてのハードディスクは10年以内に寿命を迎えます。しかし、中には20年から30年動き続けるものが存在して、平均の計算に悪影響を与えるものが出てくる可能性があります。そのため、そのような異常値は計算の段階で排除されることになっています。
この数値は近いうちに結果が明らかになります。新品ハードディスクの寿命の中心値が明らかになり、「どの時点で、ハードディスクの半数が寿命を迎えるか」が判明します。
◆ハードディスクの生存率
インターネットを使っても、「ハードディスクの寿命」の答えを得ることは非常に難しいものです。得られるものは、一般的な体験談であったり、Googleやカーネギー・メロン大学(CMU)の統計などのように、はっきりとした答えが出ていないものばかりです。
下記のグラフは、Backblaze社が使用しているハードディスクの生存率を示したものです。最初の18か月間は、年換算5.1%の故障率で推移し、19か月から36か月の間は年換算1.4%という低い水準で推移することがわかります。そして36ヶ月を超えるあたりから、故障率は11.8%と急激に増加していることもわかります(グラフの傾きが平坦ではなく急に角度が付いていくということ)。
全体で見ればどの程度のハードディスクが生き残っているのかを表したのが以下のグラフです。4年を経た時点においても、実に80%のハードディスクには問題が発生していないことが明らかになっています。
◆それから先、ハードディスクはいつまで使えるのか?
5年を過ぎたハードディスクの寿命はどうなるのでしょうか?これについては、GoogleもCMUも、5年を過ぎたハードディスクに関するデータは出していませんが、CMUは論文の結論において「5年を境に故障率は増加するだろう」というコメントを寄せているのは注目に値します。同社で使われてきたハードディスクはすべて新品からのもので、5年を超えるハードディスクに関するデータはまだ取得できておらず、今後も引き続きデータを取り続けていくこととしています。
前出のチャートをもとに予測される、半数のハードディスクが寿命を迎えるポイントを予測すると、ハードディスクの寿命中間点は、6年を少し超えたあたり、ということになりそうです。
このように、ハードディスクの寿命は一般的に予想されているよりも長いかもしれないことが判明しました。とはいえ、いつかは壊れるということも明確な事実なので、万が一の状況に備えてバックアップやRAID構築などのリスク回避策をとっておくことは重要です。
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