尿を人工心臓で送り出して動力にできる「エコボット」とは?
廃棄物から自分の動力を生成する「エコボット」の研究の一環で、人工心臓を使い尿を動力に換えてロボットを稼働させる仕組みがイギリスのブリストル大学と西イングランド大学によって開発されました。
Pumping Fuel in Ecobot
http://www.brl.ac.uk/brlnews/pumpingfuelinecobot.aspx
両大学は形状記憶合金を用い、人間の心臓が持つポンプの仕組みを取り入れて尿をロボットの動力に換える仕組みを開発。人工心臓を使って人間の尿をまるで血液のように循環させていくというわけです。これは自分の動力を自分で廃棄物から生成するロボットである「エコボット」研究の一環で、過去10年に両大学は死んだハエや腐ったリンゴなどを食べて動くロボットEcoBot-IIなど計4体を開発しています。EcoBot-IIは微生物燃料電池を内蔵し、微生物で食物を分解しエネルギーを生成するというものでしたが、エネルギーレベルは低くロボットの動きは緩慢だったとのこと。
以下は2004年に開発されたEcoBot-II。
2010年に作られたEcoBot-IIIはこんな感じ。
エコボットはメンテナンスに人間の手があまり必要でないため、将来的に汚染がひどい地域や危険生物が存在する場所でのモニタリング用ロボットして開発されていく予定。研究チームのリーダーPeter Walters博士は「市街地において燃料になる尿は公衆トイレから集めることができ、また田舎であれば農地の廃水を使うこともできます」と語りました。
人工心臓に使われている形状記憶合金は電流で熱せられると中央部分を圧縮し、燃料電池に循環させるのに十分な強さで尿を送り出して、電流がなくなると人工心臓は冷却され元の形に戻って液体の排出が止まるという仕組み。このとき人工心臓は弛緩しており、次のサイクルに向けて液体が流動しはじめます。また24個の微生物の燃料電池でコンデンサを充電し、そのエネルギーによって人工心臓が動かされるとのこと。「従来のモーター・ポンプは機械的に複雑な仕組みで、形状記憶合金がポンプの動きをするという人工心臓はより単純なメカニズムです」とWalters博士は語ります。モーター・ポンプには故障しやすいという問題がありましたが、人工心臓はシンプル故に壊れにくいというわけです。
また、エコボットと同じ微生物を使った燃料電池で尿を携帯電話の動力にする研究も行われています。
Mobile phone runs on urine power
http://www.brl.ac.uk/brlnews/urinepower.aspx
人間の排泄したものがロボットのエナジードリンクとして作用するというユニークな仕組みですが、今後、研究グループは人工心臓の効率性の向上に焦点を当てるとともに、微生物燃料電池を使った次世代のロボットに人工心臓がどのように取り入れられるか研究を進めていく方針です。
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