サイエンス

体内で分解する、人体に無害な「生分解性小型バッテリー」の開発に成功


スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスが大きな注目を集めていますが、究極のウェアラブルデバイスとして、体内で健康状態をチェックしてくれる「体内ロボット」が挙げられており、いつの日か実現することが期待されています。その時に大きな問題となるのがロボットを駆動させるバッテリーです。現在、ハードウェアの主力バッテリーとして使われているリチウムイオンバッテリーは人体に有害であるため体内ロボットの用途では使えそうにないため、新たなバッテリーの開発が不可欠となっています。そんな体内ロボット用のバッテリーに応用できるかもしれない「生分解性バッテリー」が開発されました。

Materials, Designs, and Operational Characteristics for Fully Biodegradable Primary Batteries - Yin - 2014 - Advanced Materials - Wiley Online Library
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201306304/abstract

Biodegradable battery could melt inside the body : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/biodegradable-battery-could-melt-inside-the-body-1.14919

Battery that dissolves in the body could power embedded health sensors | The Verge
http://www.theverge.com/2014/3/25/5547344/biodegradable-battery-could-power-medical-sensors

イリノイ大学の研究チームが体内で自然に分解する生分解性バッテリーの開発に成功し、その成果をAdvanced Materialsで発表しています。

2012年にイリノイ大学の材料学者のジョン・ロジャース博士が体内で温度や機械的な負荷をモニターして外部に無線通信できる生分解性を持つシリコンチップの開発に成功しました。しかし、このチップは電磁誘導を利用して動力を外部から送電する必要があるため、体内ロボットとして用いるには支障がありました。

そこで生分解性バッテリーの開発に着手したロジャース博士とその研究チームは、今回、陽極にマグネシウム箔を、陰極に鉄・モリブデン・タングステンを、電極間の電解質としてリン酸緩衝生理食塩水を用いたバッテリーを開発しました。バッテリーに用いられた合金は低イオン濃度を保つ限り生体に害を与えず、またバッテリーを構成する容器には生分解性ポリマーが用いられるなど、体内で溶解しても無害な素材が使用されている、とのこと。


実験でバッテリーは約0.45から0.75ボルトの電圧を24時間以上出力を維持し、LED電球を発光させることに成功。さらに、このバッテリーは積層させることで直列化できる設計で、華氏98.6度(セ氏37度)の生理食塩水の中に浸したところ11日で積層構造がばらけ、さらに華氏185度(セ氏85度)にしたところ、さらに8日で完全に分解し水溶液に溶解したとのこと。


今回作製されたバッテリーは出力がそれほど大きくなく、積層させた状態である厚さ4ミリメートル・3センチ×1.3センチというサイズは、体内で使うにはかなりの大きさですが、ロジャース博士は「電極の表面処理をもっと複雑にすることで、より小さくより大きな出力のバッテリーが実現できる」としており、将来的にはドラッグデリバリーシステムに利用可能な生分解性バッテリーの実現が期待できると述べています。

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in サイエンス, Posted by logv_to