液体空気をエネルギー貯蔵タンクにするというアイデアがイギリスで実現
By Jaime Pérez
液体空気は圧縮空気とも言われ、車にも利用される新しい動力の一つですが、イギリスのHighview Power Storage社の開発する液体空気の貯蔵システムが新しい蓄電方法として注目されています。
BBC News - Liquid air 'offers energy storage hope'
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-19785689
どういう仕組みかというと、まず電力をあまり必要としない夜間に風力発電によって生み出されたエネルギーを使って大気を取り入れます。次に、空気が冷却の際に凍ってしまわないようCO2と水蒸気を取り除きます。残った空気のほとんどは窒素ですが、それをー190度まで冷やすことで液化が完了。液体空気は電気が必要になるまで巨大な魔法瓶の中で保持され、蒸発時の爆発的な膨張エネルギーを使い発電タービンを稼働させます。これによって燃焼のプロセスを経ることなく電気を生み出すことが可能。エネルギー効率は現在25%しかありませんが、産業プラントや低品位排熱を生み出す発電所の隣に寒冷発生器を置くことによって70%にまで改善されるとのこと。
この技術はもともとPeter Dearmanさんが車の動力として生み出したものですが、イギリスのHighview社がその技術をパワーグリッドで使える蓄電システムに転用。政府の協力のもと、2年間をかけて技術を確立させました。
責任者のTim FoxさんはBBC Newsに「断続的に再生可能なエネルギーを生み出すことは僕たちが直面している問題だし、この場合、液体空気を燃料とするのはすごく見込みある解決策で、すばらしい挑戦だ」と語りました。Foxさんは間近に迫っている蓄電所に関する法改正において、液体空気を含めた他の技術に対しても奨励金を設けるよう政府に要求しているそうです。
電池のエネルギー効率は80%であり、70%にまで上昇すると考えられている液体空気のエネルギー効率は決して高いものではありませんが、IMechEによれば液体空気による蓄電システムはそのシンプルさと、蓄電問題に取り組んでいるだけでなく産業熱の無駄をどう扱うかという問題にも取り組んでいる点がすばらしい、とのこと。
将来的には現在電気自動車で使われているようなバッテリーが家庭での蓄電システムの役割を果たすことが予想されますが、今後数十年においてエネルギーを貯蔵する他の方法がますます重要になっていき、商業規模のものにおいては政府によって奨励されるべきだとNational Gridのエネルギー計画責任者であるRichard Smithさんは語ります。蓄電はわたしたちがエネルギーの需要と供給のバランスをとるための方法のうちの1つだ、とのことです。
発明者であるDearmanさんは、液体空気は電池のように原材料が不足することがないため、将来的には他の貯蓄エネルギーに勝ると信じています。「私はまだ10代だったころ、すべての人が車を持つには燃料が足りないと思い、そこから始めました。まったく別の方法を考えなくてはならなくて、それで空気を冷やして貯蔵する方法を思いついたんです」とのこと。イギリスでは水力による蓄電が行われているのですが、可能な場所が限られているため、新しい蓄電技術を低コストで展開できれば電力システムに非常に役立つことが予想されています。
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