取材

ガンダムサングラスからアナログ空中浮遊まで第16回文化庁メディア芸術祭の展示作品いろいろ


「アート」「エンターテインメント」「アニメーション」「マンガ」の4部門で優秀だった作品を選出する「文化庁メディア芸術祭」は今年で16回目。メイン会場となる六本木の国立新美術館では、賞に選ばれた作品を実際に体験したり、アニメやマンガであれば選出作品の映像や原稿・設定画などを見ることができるようになっています。主な展示作品を以下にまとめてみました。

第16回文化庁メディア芸術祭
http://j-mediaarts.jp/



・エンターテインメント部門
Perfume “Global Site Project”(真鍋大度/MIKIKO/中田ヤスタカ/堀井哲史/木村浩康)

エンターテインメント部門の大賞を受賞したのは「Perfume」で、ティザーサイト、オープンソースプロジェクト、メンバーによるライブパフォーマンスまでを包括した大プロジェクト。


サイトは非常に凝った作りになっており、モーションデータを配布したりもしています。


会場ではディスプレイを用いての展示が行われていましたが、実際にサイトにアクセスするのがわかりやすいかも。

Perfume official global website
http://www.perfume-global.com/

あさっての森(三木俊一郎)

エンターテインメント部門優秀賞のSFコメディ、会場では映像を見られるほか、制作するにあたって作られた絵コンテやイメージボードなどを見ることができます。


作品はCMディレクターとして活動していた三木さんが、10年間の貯金と経験を注ぎ込み作った完全自己資本映画。イメージボードが非常に面白く描かれています。


これは実際に映像に出てきた変な生き物


こんな感じで動きます。


おじさんに吸い付くこのカットは、実際に作品中に登場します。


映像の一部はYouTubeでも見ることができます。本編は81分あります。

SHUNICHIRO MIKI "THE WARPED FOREST" 三木俊一郎 - YouTube


水道橋重工「KURATAS」(倉田光吾郎/吉崎航)

人が乗れるロボットとして製作が進められている「KURATAS」も優秀賞に選ばれました。


さすがに実物展示はなかったものの、現在は量産化計画が進められています。2月21日には国立新美術館の講堂にて受賞者プレゼンテーションとして、倉田さんと吉崎さんが「KURATASとは何か?」を語る予定。イベントは定員240名で、19日17時までの事前申込制です。


GRAVITY DAZE 重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動(外山圭一郎(GRAVITY DAZEチーム))

PlayStation Vita向けの重力アクションアドベンチャーゲーム。「まさに文化庁メディア芸術祭で評価すべきゲームそのもの」と絶賛されています。会場ではイメージボードなどのほか、実際にPlayStation Vitaが置かれていてゲームを体験することができるようになっています。


永野亮「はじめよう」(新井風愉)

新人賞を受賞したのは新井風愉さんが制作した、永野亮さんの楽曲「はじめよう」のミュージックビデオ。


このビデオはワイヤーや合成技術を使うことなく、アナログな手法で「空中浮遊」を実現しています。


実際のミュージックビデオはこちら。

はじめよう / 永野 亮 - YouTube


こちらは裏バージョン、ミュージックビデオとメイキングとを並べることで、どのように撮影されたのかがわかるようになっています。

「はじめよう」 裏バージョン / 永野 亮 - YouTube


メイキング風景も公開されています。空中に浮かぶ姿を撮るため、永野さんが台車付きの平行棒の上で移動しながら腕を踏ん張っている姿などがあって、アナログ手法ならではの苦労が見られます。

何度でも「はじめよう」/ 永野 亮 - YouTube


・アニメーション部門
火要鎮(大友克洋)

この部門で大賞に選ばれたのは「AKIRA」で広く知られている大友克洋さんが制作した短編アニメーション「火要鎮(ひのようじん)」。メイン会場では制作段階で描かれた設定画やイメージボードが見られるほか、サテライト会場のシネマート六本木では映像上映も行われます


予告編ムービーはこんな感じ。

COMBUSTIBLE 火要鎮 -A KATSUHIRO OTOMO FILM- SHORT PEACE PROJECT TRAILER - YouTube


グスコーブドリの伝記(杉井ギサブロー)

宮沢賢治の童話をますむらひろしが猫のキャラクターで漫画化し、それをアニメ化した作品。杉井監督は同じく宮沢賢治のストーリーをますむらひろしによる猫キャラクターで描いた「銀河鉄道の夜」の映画化も行ったことがあります。


アニメ映画「グスコーブドリの伝記」予告編 - YouTube


LUPIN the Third -峰不二子という女-(モンキー・パンチ/山本沙代)

「ルパン三世」シリーズとして27年ぶりのテレビシリーズで、女性監督は初という作品。


魔性の女としてルパンらを惑わす峰不二子に視点を据えて作られました。


会場には、モンキー・パンチさんによる原作マンガ版の原稿も展示されています。


従来のテレビシリーズに比べて、「峰不二子という女」はかなり原作寄りのキャラクターデザインとなっていたことがうかがえます。


おおかみこどもの雨と雪(細田守)

狼男との間に「おおかみこども」を授かった母親が田舎で子育てをする姿を描いた作品で、映像としての総合力が評価されて優秀賞となりました。


会場では絵コンテのほか、各キャラクターの設定画も見られます。


人と狼、どちらを選んで生きていくのかというのは作品のテーマの1つ。


ちょうど細田守監督が取材を受けていました。


・マンガ部門
闇の国々(ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン 訳:古永真一/原正人)

マンガ部門で大賞に選ばれたのはバンド・デシネの人気シリーズ。これまでに10言語に翻訳されており、2012年からは日本語版全4巻の刊行がスタートしています。


原稿の一部


カラーイラスト


原作者2名のサインも。


岳 みんなの山(石塚真一)

ビッグコミックオリジナルで2003年から2012年にかけて連載された作品で、高い水準を保ったまま完結に至った総合力が評価されて、優秀賞を受賞しました。


GUNSLINGER GIRL(相田裕)

2002年から2012年まで、約10年間にわたって月刊コミック電撃大王に連載。サイボーグ手術を受けてテロとの戦いに身を投じる少女たちの姿を描いているものの、単なる戦闘美少女ものではなく、少女たちと担当官との疑似兄妹の間に疑似兄妹関係があり、それが洗脳の結果なのかどうか、日常で感じている「幸せ」は真実なのかといった、人間の尊厳について問いかけることが評価されています。


カラーイラスト


イラストラフ


ネームの展示も。


こちらは作画資料、ぬいぐるみとトイガン。


ましろのおと(羅川真里茂)

「津軽三味線」をテーマに、月刊少年マガジンで連載中の作品。このテーマは羅川さんが描きたいとあたためてきたものだそうです。


原稿


こちらはイラスト、どうやらノートに描いていたもののようです。


千年万年りんごの子(田中相)

2011年12月号から「ITAN」で連載の始まった作品で、舞台は昭和40年代。青森のリンゴ農家に婿入りした主人公が、寝込んだ妻のために知らずに禁断のリンゴを食べさせたことから60年前に絶えたはずの祭儀が蘇り……というお話。


ネームから原稿へとだんだん完成に近づいていく様子が見られます。


作画資料のぬいぐるみは自画像としても描かれています。


凍りの掌 シベリア抑留記(おざわゆき)

父親のシベリア抑留経験を核として取材を重ね、2年半かけて3冊の同人誌としてコミティアで頒布されたという作品。2012年には再編集され、一般書籍として刊行されました。


ぼくらのフンカ祭(真造圭伍)

火山の噴火で過疎の町が温泉街として生まれ変わるという劇的な変化を遂げる中で、変化を受け入れられないクールな富山と、変化にノリノリな桜島の友情を描いている。ビッグコミックスピリッツで2012年17号から連載が始まり、33号で連載終了済み。


・功労賞
大河原邦男(メカニックデザイナー)

日本のメディア芸術界に大きな貢献を果たした人に贈呈される「功労賞」。今回は4名が選ばれましたが、そのうちの1人がメカニックデザイナーの大河原邦男さん。ここにある「機動戦士ガンダム」や「勇者王ガオガイガー」といったロボットのデザイナーとして有名ですが、そもそも「メカデザイン」という仕事をそれまでの美術や作画監督の分担から独立させた先駆者です。


ガンダム、ザク、ホワイトベース、ハロ……


さらには「ヤッターマン」のヤッターキング、闘士ゴーディアンなど、40年間も第一線で活躍を続けています。


これは大河原さんがデザインしたという、「装甲騎兵ボトムズ」に出てくるスコープドッグのターレットレンズ風卓上ルーペ。


さらに、ガンダムのフェイスマスク風サングラスとサングラスホルダーも。


小長井信昌(編集者)

集英社で「別冊マーガレット」編集長を務めた小長井さんは、1973年に白泉社の創立に参加。「花とゆめ」「LaLa」「ヤングアニマル」「MOE」などを創刊し、少女マンガに多大な貢献をしました。


歌手が台座に固定されて歌いつつぐりぐり傾けられるミュージックパフォーマンス「Pendulum Choir」


文化庁メディア芸術祭の受賞作品展示は2月13日から24日まで。メイン会場は国立新美術館、サテライト会場はシネマート六本木、東京ミッドタウン、スーパー・デラックスとなっており、それぞれ参加は無料です。

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in 取材,   動画,   アート, Posted by logc_nt

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