サイエンス

「謝罪」は「怒り」の衝動は消せるが「不快感」は抑えられないことが明らかに

By yllan

基本情動の1つである「怒り」のメカニズムを研究した結果、謝罪が有効なのは「怒り」の持つ「攻撃性」の側面であって、「不快感」には有効ではない、ということが東京大学 大学院総合文化研究科の岡ノ谷一夫教授と、JST戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「岡ノ谷情動情報プロジェクト」の久保賢太研究員らによって明らかになりました。

共同発表:「謝罪」の効果を複数の指標で分析し、その有効性を解明―「怒り」の衝動は消せるが、不快感は抑えられない―
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120323/index.html


まず、一般的に考えられているとおり「怒り」が謝罪によって抑制できることはこれまでの研究でも知られていたものの、謝罪が怒りの中の「何を」抑制するのかについては、実は良く分かっていなかったそうです。

この点を解明するために、怒りに伴う身体的反応について複数の指標を同時に測定、つまり、怒りの中枢神経系反応として「脳波」を、自律神経系反応として「心拍」や「皮膚電気反応(汗)」を、また心理反応として質問紙で回答を求める心理テストである「主観指標」を用いた結果、相手に攻撃や介入をしようとする強い衝動(攻撃性)は抑制されるが、不快感は抑制されないことが分かったとのこと。


要するに、謝られると怒りの衝動をぶつけようという気持ちは抑えられるが、気分が良くない感じは継続していることになり、このことから怒りは「攻撃性」と「不快感」などの成分に分けることができ、従来は怒り全般の指標であると考えられてきた「心拍」と「皮膚電気反応(汗)」が、それぞれ怒りの「攻撃性」と「不快感」に関連づけられる可能性を示した、ということです。

「左右脳活動の不均衡状態」:謝罪を受けた謝罪群に比べ、受けなかった怒り群は怒りの接近動機の生起を表す左右脳活動の不均衡状態が増大しています。


「自律神経系反応の結果」:Aが心拍反応、Bは汗の反応を示し、謝罪の効果は心拍反応では認められたが、汗の反応では認められません。


「快・不快尺度(PANAS)」(日本語版)と「状態攻撃性尺度(STAXI)」(日本語版)の結果:謝罪の効果は攻撃状態を反映する心理尺度にのみ認められ、不快な気分状態を反映する心理尺度には認められなかった、とのこと。


今回の成果は謝罪の有効性とともに、情動メカニズムの解明につながり、将来的には、インターネットなどで文字だけのやり取りが誤解を生むようなことがないように、非対面時のコミュニケーションをサポートする情動インタフェイス(他人の情動を判断し提示するツール)の開発への応用などが期待される、とのことです。

なお、本研究は、本プロジェクトの情動インタフェイスグループのグループリーダーである名古屋大学 大学院情報科学研究科の川合伸幸准教授との共同研究で行われ、本研究成果は、2012年3月22日(米国東部時間)発行のオンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載されるそうです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse

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