絶対にパンクしないスマートフォン向け放送局「NOTTV」開局、対応機種も3月から登場
これまでアナログ放送が使っていた帯域を使ったスマートフォン向け放送局「NOTTV(ノッティーヴィー)」が4月1日に開局することになりました。NTTドコモからこのNOTTVに対応する端末2機種が発売されるということで、本日、その発表会が行われました。
NOTTV開局・NTTドコモ新商品発表会 | NTTドコモ
まずはNOTTVが2012年4月1日開局であることが発表されました。
そもそもNOTTVとは……?
スマートフォン向けの放送局で、100%オンラインであることを生かした双方向ソーシャルTVとなります。
番組はリアルタイム型放送と蓄積型放送に分かれており、「nottv1」では情報番組やスポーツ、エンターテイメント番組を24時間放送。生放送の時間は1週間に284時間にも及ぶそうです。
利用料金は月額420円、一部のプレミアムコンテンツは追加料金が必要です。
放送エリアはまず開局時に南関東、愛知、三重、大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、福岡、沖縄でスタート。以後、じわじわと拡大していく予定。
どういったものが放送されるのか?
すでにスマートフォン向けに映像コンテンツを提供するサービスはいろいろとありますが、通信を利用しているので輻輳が発生すると途切れてしまったりしました。しかし、NOTTVはもともとアナログ放送が使用していた空き帯域を使用する「放送」なので、輻輳が発生しません。
番組としては、24時間ニュースとして10月までTBSニュースバードの番組提供を受けます。11月から翌3月には日テレNEWS24が提供されます。
スポーツ中継もJリーグ、プロ野球ともに行われます。たとえば横浜DeNAベイスターズのホームゲームは全試合生中継。プロ野球は最大で122試合を中継予定となっており、Jリーグも2チャンネルを利用して週末に最大5試合を同時中継。スタジアムにいる人が他チームの試合を見るという使い方も可能で、たとえ6万人が同時に接続してもパンクすることはないそうです。
これまでスマートフォンからはBSやCSの有料チャンネルは利用できませんでしたが、NOTTVでは有料チャンネルが利用可能。
アニメでは「偽物語」「妖狐×僕SS」など、1月開始のアニメの放送が予定されています。
4月開始の新作では「エウレカセブンAO」がラインナップされています。アニメの放送枠は平日22時30分という、地上波ではあまりアニメが編成されない枠。
3.11に代表される災害の時、身につけていたものと言えば携帯電話でしたが、通信ができない状況が多数発生しました。こんなときもNOTTVは「放送」という利点があり、電波が届けば必ず見られます。災害発生時にはノースクランブル放送となって、緊急情報の発信が行われます。
このNOTTVに対応した機種が、NTT DoCoMoから2機種発表されました。
スマートフォンとしてはAQUOS PHONE SH-06D。
4.5インチディスプレイ、高精細HD液晶、高画質エンジンを搭載しています。
カラーバリエーションは3種類。防水機能のほか、おサイフケータイやワンセグ、赤外線にも対応。3月に発売予定。
こちらはタブレット、MEDIAS TAB N-06D。
高音質ステレオスピーカーなどを搭載し、映像と音響をよりよい品質で楽しめます。
フルスペックの防水Xiタブレットで、発売は4月を予定。
このほかに2012年度上期に5機種が追加される予定です。
9月30日まではモニターキャンペーンとして、全国で2万台のモニターが2週間貸出されるとのこと。
質疑応答は以下の通り。
日経新聞:
目標はまず100万台の普及とのことでしたが、最大の課題は何ですか?また、電波獲得競争で指摘されていた、基地局の難視聴地域の電波対策などはどこまでできたのですか?
mmbi二木治成社長:
まずは端末の販売が大前提になってくるが、ドコモで100万台を超える台数を出していただけるとのこと。そして、NOTTVのサービスに入っていただかなくてはいけない。そのために、「NOTTVとはこういうものだ」というプロモーションをやっていきます。ドコモショップに行ったときに、スタッフの方が「NOTTVへの加入はどうですか?」と声をかけたら「ああ、あれね」と言っていただいて入っていただけるようにしたい。サービスは月額利用料を払ってもらうことになるので、月をまたぐときが解約に繋がるタイミング。なので、その次も見たいなとなるような編成を考え、入ったらなかなか抜けないようにしていって、100万契約につなげていきたい。サービス利用料の420円は(小牧常務が説明したように)決して高くなく、安いかも知れない。
基地局はやっと電波が出ている状態なので、これからいろいろ調査をしていきます。我々の計算と合ったり合わなかったりすると思うが、そこを整備していくことになります。今後、家庭の中で見るケースがあると思うので、調査をしながら必要な対策をうっていきます。
読売新聞:
ロンドン五輪が夏に開催され、NOTTVもサブライセンスを受けるのではと言われていますが?
mmbi小牧次郎常務
民放連に加盟すべく申請中です。それが終わらないと次にいけないので……(オリンピックの放映権が)欲しいかと言われると、すごく欲しいです、と。
読売新聞:
具体的に放送をやるとなったとき、民放がやらないような予選とかマイナー競技とかになるのでしょうか?
小牧:
仮定の話だとしても、すべてがこれからの話。仮定としても詰まっていません。
読売:
ロンドン五輪をやるとなったとき、民放連に加盟するのは必須ですか?
小牧:
ジャパンコンソーシアムがあるので、私の解釈としては、実況・解説をつけるということまで考えると、民放連加入が条件だと考えています。
共同通信:
「蓄積型放送」が特徴だと言いながら、ラインナップがすごく少ない。パンフレットには「新聞」ともうたっていますが、今後のスケジュールは?
小牧:
意外に難しい(笑) 最初は確実なところからスタートしようと思っていますが、すぐに追っかけて新聞や書籍などのコンテンツを出したいというのがあり、4月第1週ではないとしても、できるだけ早く出てくるタイプのものばかりです。新聞はやりたいです。今、最終調整中です。
共同
それ以外の、NOTTVで放送する番組を蓄積型にというのは?
小牧:
当初想定していた帯域の使い方としては、蓄積型の割合が大きかった。しかし、スマートフォンがこれだけ普及していくと、強みはやはりライブ、リアルタイムが有効であろうということで、多くの帯域をリアルタイムで使うことになって、残る蓄積型に使える帯域が狭くなった。帯域が狭くなると、1つのコンテンツを送るのに時間が掛かる。そのため、比較的スモールスタートになっている。帯域は13セグメントの中で自由に替えることができるので、今後はリアルタイムの反応、蓄積の反応を参考にして、一番いい形の帯域の使い方にしていきたいと思っている。
インプレス:
1日当たりのユーザー視聴時間はどれぐらいを想定していますか?また、どういったイメージで視聴するということですか、まとまってなのか、細切れなのか?スマートフォン、タブレット以外のカーナビなどへの展開はどういう時期になる予定?
小牧:
視聴時間の想定は特にしておらず、長ければ長いほどいいと思っています。利用シーンのイメージは、7時間連続生放送があったりするので、7時間ずっと見てもらってもいいが、途中から入ってきたり、あるいは途中で出ていってもいいと思っています。これまでモバイル向けコンテンツは短く切ってそれを見きる、5分なら5分という形式でしたが、我々はあくまでもリアルタイムのチャンネルという形式なので、どこから見てもらってもいいという考え方をしています。
よく質問されるのは「もっと短いコンテンツを並べるんじゃないの?」ということですが、すでに携帯端末は長時間視聴に耐えうるものになっています。なので、30分のアニメ、1時間のドラマ、2時間の映画でもできます。細かい時間を減らしたのは、どこから見てもらってもいいということだし、長く見てもらえればということです。
二木:
スマートフォンやタブレット以外の機器で、どうやってNOTTVの放送を受けてもらうかということがあります。受信機能を入れてしまうという方法もありますが、他に、スマートフォンやタブレットで受けたものをWiFiで流すというのもあるし、ルーター経由でやるというのもあります。これはいろいろ想定されるので、実現可能で利用しやすいものを開発したいと思っています。時期についてはお待ちいただきたいと思います。
読売:
経営計画として、投資額はどれぐらいで、どの時点で収支がとれるかというところを教えてください。
二木:
契約数が絡んでくると思うが、2015年、3年ちょっと先を一つの目安として、500万契約ぐらいを確保すれば単年度黒字になるだろうという見通しを立てています。ジャパン・モバイルキャスティングがやるインフラ部分と、mmbiがやる放送設備、投資ではないが番組を作っていく部分も費用がかかります。そういった意味ではインフラ設備については450億円ぐらいの投資が必要で、126局ぐらいを配置していこうと考えています。これは、以後の状況も見つつ、柔軟に対処していきます。
「完全に新しいメディア」と銘打った発表会で、自ら「カバー率が100%ではないこと」「独自の報道網を持っていないこと」と欠点も明らかにした発表会でしたが、Ustreamでのユーザーの反応はかなり冷ややか。ハードの普及もこれからというところで、どれだけの人がNOTTVに興味を持ち、加入していくのかはまったくの未知数です。コンテンツを提供する側でもあるAT-Xの岩田圭介社長はアニメ・ビジネス・フォーラム+2012の中でこのモバイルマルチメディア放送市場のデータに触れ、「業界内でも『これ苦しいんじゃないの?』『これはうまくいかないよ』という意見が圧倒的に強い」とコメントしていました。
しかし、携帯電話やタブレットの数が今年中に世界の人口を上回るほどに普及し、その通信量があまりに膨大なことから海外でパケット定額制が廃止されるケースがどんどん出てきている今、「通信」ではなく「放送」であるというのは大きなメリットかも。
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