取材

NEXT11として経済発展が期待されるナイジェリアの現況とこれからの可能性


こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。アフリカ最多の1億5000万人を超える人口を抱え、豊富な石油資源が存在するナイジェリアは「NEXT11(Next Eleven)」として今後の発展が期待されています。

道路や水道、電気とインフラの整備はまだまだですが、その中でも工業化は進み確実に力をつけているようでした。これほどの巨大市場を外国資本も放ってはおきません。今回は実際に旅をして感じたナイジェリア国内の現況と、これからの可能性についてまとめてみました。ナイジェリアの発展はアフリカの貧困を変えるかもしれません。


世界を旅していると「BRICS」(Brazil、Russia、India、China、South Africa)の活躍が嫌でも目に入ります。旧ソ連構成国を中心したロシア、アフリカを中心として南アフリカ、旧イギリス植民地を中心に、加えて医薬品にも強いのがインド。すべての商品がメイド・イン・チャイナと世界の工場になった中国。アメリカ大陸に行ってないのでブラジルは何ともいえませんが。北京、リオデジャネイロ、ソチと、オリンピックも開かれるBRICSの勢いは本物です。そのBRICSに続いてNEXT11といわれる国々が既に動き出しています。

NEXT11とは、アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスがBRICSの次に急成長が期待されるとしている11の国家のことで、イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコの名前が挙げられています。このうち、実際にイラン、インドネシア、トルコ、ベトナムといった国々は旅したのですが、それらの国々の国内経済の動きは力強いものでした。かつ、BRICS同様に第三国でこれらの国々の商品をみかけました。トルコ産のお菓子や、インドネシア産のインスタント麺、石鹸……。世界一の歯ブラシメーカーであるColgateの歯ブラシもベトナム産です。加えて、韓国やトルコは既に先進国だったりします。広大な人口を持ち、これからの活躍が楽しみなNEXT11には目が離せません。期待されていないエチオピア(人口約8200万人)も気にかけてやってください。

このNEXT11に名前を連ねているナイジェリア。1億5000万人を超えるアフリカ随一の人口を抱え、豊富な石油資源が存在するこの国はいったいどうなっているのでしょうか。

最初にナイジェリア経済を支える通貨・ナイラ(NAIRA)を紹介します。ドルの$記号や円の¥のように、Nに=(二重線)が入った記号「₦」が使われています。


こちらがナイジェリアの紙幣。1000ナイラ、500ナイラ、200ナイラ、100ナイラが紙の紙幣で、50ナイラ、20ナイラ、10ナイラ、5ナイラはプラスチック紙幣です。硬貨はありませんでした。この紙をプラスチック紙幣に、プラスチック紙幣を硬貨にすればいいと思うのですが……。なお、1000ナイラが最高額紙幣で、日本円にすると約500円になります。


ベナンのコトヌーのマーケットで手に入れたナイジェリアナイラの束。


ちょっとこれを見てください。裁断に失敗したのか紙幣がずれています。


こちらも同じくずれています。他にも、1000ナイラ紙幣のインクが滲んでいたりしていて、両替の時には偽札の心配で気が気ではありませんでした。実際に入ってみると一切のチェックがなく、それはそれでまたびっくりしたのですが。


ナイジェリアといえば世界有数の産油国です。だからガソリンが安い。そのほとんどを輸入に頼る日本にとってはうらやましい限りです。


「Petrol」はガソリン、65ナイラ(約33円)。「Diesel」は軽油で150ナイラ(約75円)。「Kerosene」は灯油、50ナイラ(約25円)。この安いガソリンによって国内をたくさんのトラックが行き交っている……と繋げたかったのですが、トラックはディーゼルですよね。ただ、ナイジェリア国内の物流には力強さを感じました。経済の起点となるラゴスを心臓として、トラックに乗った物資が、道路という血管を通って国内の隅々まで届いているようです。

道路を行き交うたくさんのトラック。


タンクローリーもたくさん見かけました。


IbadanからMokwaまでの道路はラゴスからの物資を北部の大都市SokotoやKaduna、Kanoへと運ぶ大幹線になっており、自転車で走るには大変でした。


大きなトラックの脇をすり抜けて。


ただ、この物流を支えるトラックは至るところで故障してたり、事故を起して道脇に放置されています。

止まっているトラック。


横転したトラック。


延焼したタンクローリー。


まさに横転している現場。


道路の真ん中にこんなコンテナが放置されていて道をふさぎます。


コンテナをかわして走らないといけません。


次々とトラックが倒れてる様は戦場のようです。ガードレールにはたくさんのぶつかった跡があり、橋を渡ればあるはずの柵が見当たりません。これも整備不足のトラックと、補修が行われてない悪路が原因でしょう。特に走行中のパンクは怖いもので、よく破裂音を聞きました。穴ぼこの道路は巨体がゆえ慎重に進むトラックより、小回りが聞く自転車の方が早かったりもします。Ibadan-Ogbomosoのように新しく高速が通った所もあるんですが、道路網の整備はこれからの課題でしょう。

首都アブジャに限れば市内でも道路はしっかりと整備されています。


田舎はこんなのですけど。


舗装されていても、剥がれかかったりしています。


道路だけでなくインフラ不足は水道と電気にも及びます。

街から街への電線はありますが、電気自体はなかなかありません。これもラオスの山中やギニアみたいに「何時からは電気が来る」といった計画的なものではなく、いつ電気が来るのかはっきりしないので余計に大変でした。たいていの宿では夜中に自前の発電機を回していました。水道もあるみたいなのですが各家庭にまでとはいかず、水を満載にした15リットルくらいの黄色いポリタンクを10個くらい積んだリヤカーをよく見かけました。公共の水道はあるみたいので、そこで汲んでいるのでしょうか。

お化けみたいな発電機が動く安宿。


しっかりとした発電機が置いてあった宿。


そんな頼りないインフラにも関わらず、大都市ラゴスを中心に民間企業の工場は動いているみたいです。食品や日用品はたいてい生産されていました。ナイジェリアで作られているものを紹介します。

コカコーラと……


ペプシコーラ。


西アフリカを旅して、たいていの国でコカコーラは展開されていましたが、ペプシコーラはモロッコ、ガーナくらいでしか見ていません。そんな中、ナイジェリアにはペプシがありました。ペプシコーラとしても、人口大国で将来が有望なナイジェリアを放っておけないということでしょう。コカコーラ、ファンタ、スプライトといったラインナップに、ペプシコーラ、ミリンダ、セブンアップという面々で全面対決していました。瓶の500mlが70ナイラ(約35円)、300mlが50ナイラ(約25円)と安かったです。

どこにでもみかけたナイジェリアブランドの「La Casera」という炭酸ジュース。500mlが100ナイラ(約50円)


はまっていた乳飲料は「Viju Milk」(ビジュミルク)。500mlが100ナイラ(約50円)


ガーナ、トーゴ、ベナンに続いてファンアイスがありました。首都アブジャでしか見ていませんが。70ナイラ(約35円)


粉末ココアの袋、キャドバリーはイギリスの菓子メーカー。30ナイラ(約15円)


ネスレのミロもみかけました。30ナイラ(約15円)スキムミルクは10ナイラ(約5円)


全部ナイジェリア国内で作られているクッキー。10ナイラから40ナイラ(約5円から約20円)


キャンディ200gが120ナイラ(約60円)、箱クッキー500gは150ナイラ(約75円)


「インスタント麺はインドミーが開発しました」とナイジェリアの人は思っているかもしれません。インドミーのインスタント麺ははナイジェリアで広く受け入れられています。インドミーという名前なのでインドのメーカーのようですが、実はインドネシアのメーカーです。120gが50ナイラ(約25円)


トイレットペーパーが50ナイラ(約25円)、歯磨き粉50mlが100ナイラ(約50円)。


洗濯粉は一袋20ナイラ(約10円)


JISマークみたいなNISマークを発見しました。


「Nigerian mark of Quallity」と記載されています。このNISマークは信頼の品質といったところでしょうか。


コカコーラ、ペプシコーラ、インドミー、ネスレ、キャドバリーと外国資本も将来を見据えているのかナイジェリアに生産拠点を設けて活動を行っています。加えて、国内資本でも幾つかのメーカーは確実に力を付けているでしょう。そうして工業化していくナイジェリアは輸出にも強くなるはずです。アフリカ一の人口を持つ国内市場を満たすために、生産品の価格は押し下げられるはずでしょうから。加えて、隣国ベナンやニジェールの通貨西アフリカセーファーや、チャド、カメルーンの通貨中央アフリカセーファはユーロに固定されています。基軸通貨となった強いユーロより、独自通貨で弱いナイラは輸出には有利に働くでしょう。実際にベナンやカメルーンにはナイジェリアからの物資が入ってきていました。

ただ懸念として民族対立、宗教対立があります。

ナイジェリアにはヨルバ、イボ、ハウサと3つの部族を中心に多数の民族が暮らしています。民族の言葉の違いを埋めるのが、共通語としての英語です。民族対立は1960年代後半にイボ族による独立国家の建設を起因としたビアフラ戦争を引き起こしました。

そして北部を中心としたイスラム教徒と南部を中心としたキリスト教徒における宗教対立も目立ちます。双方がそれぞれの教会やモスクを破壊、それどころか信徒の殺害まで行われているというのが悲しい現状です。2011年大統領選挙における候補の二人もそれぞれを代表した形でした。敗れた北部のイスラム地域では暴動が起こっています。

首都アブジャにある大モスク。


同じく首都アブジャにある大聖堂。


民族対立と宗教対立はナイジェリアが一つの国として在り続けるならば乗り越えないといけない壁でしょう。

明るい兆しもあります。独立から軍部による強権政治というイメージが強かったナイジェリアも、2000年代に入りようやく文民政権が誕生して、その流れは今も続いています。軍部による圧政は経済制裁となってナイジェリアの人々を苦しめてきました。2006年にはオバサンジョ大統領の3選を可能にする憲法改正が否決されました。多くの独裁国家では、この3選禁止の憲法を改正して長期政権が続いています。ですがナイジェリアではそうはなりませんでした。最近では政治家の資産公開という公約が実現され、現職大統領であるグッドラック・ジョナサンの資産は公となっています。

ナイジェリアの人たち。


アフリカの可能性を握っているのがナイジェリアかもしれません。北部アフリカはヨーロッパから、南部アフリカは南アフリカか発展が広がっています。そして中部からこのナイジェリアを中心に動いていけば、ニジェールやチャド、中央アフリカ、コンゴ民主と貧困国といわれる周りの国々も変わっていくでしょう。

ナイジェリアの未来と一緒に。


(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
)

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in 取材, Posted by logc_nt

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