ガンガン踏まれても大丈夫なメモリカードの耐久性の秘密についてサンディスクにインタビューしてみました
先日、新たな高速転送インターフェース「UHS-I」をサポートすることで、従来のSDHCメモリカードを大きく上回る毎秒最大45MBの超高速転送を実現したSDHCメモリカード「サンディスク エクストリーム プロ SDHC UHS-Iカード」をサンディスクが発表しましたが、過酷な状況にも耐える同社のメモリカードの強さの秘密やメモリカードの未来、「スマートフォンに最適化されたmicroSDカード」などについて、いろいろと聞いてみました。
実際にサンディスクのメモリカードを子どもがメチャクチャに踏みつけまくるムービーなど、詳細は以下から。
今回は品川に移転したサンディスクの新本社を訪れました。
インタビューに応じてくれたのはサンディスクコーポレーション リテールイメージング製品マーケティングディレクター スーザン・パーク(Susan Park)さんです。
同時通訳(右奥)を交えてのインタビューとなりました。
GIGAZINE(以下、G):
先日発表された「サンディスク エクストリーム プロ SDHC UHS-Iカード」は多くのアドバンテージを持ったカードだと思いますが、その中でも最も大きな「他社にないメリット」は何だと思われますか?
サンディスクコーポレーション リテールイメージング製品マーケティングディレクター スーザン・パーク(以下、スーザン):
やはりそれは「パワーコアコントローラー」の存在だと思います。これはサンディスクのメモリカードに採用されているさまざまな技術を可能にするもので、パフォーマンスだけではなく、カードの信頼性が高まります。さらにデータマネジメントシステムが上手く働くようになるので、カード全体のパフォーマンスを最適化することができます。
「サンディスク エクストリーム プロ SDHC UHS-Iカード」の本体。より高速な通信を実現する転送インターフェース「UHS-I」をサポートすることで、毎秒最大45MBの転送速度を実現しています。
同メモリカードに採用されている「パワーコアコントローラー」は4層のメモリーへの同時アクセスを可能にすることで、大量のデータを同時に処理できるというもの。
G:
エントリーモデルの登場もあって、デジタル一眼カメラが普及し始めている感がありますが、ハイエンド向けのメモリカードの売り上げも伸びているのでしょうか?
スーザン:
おっしゃる通りですね。エントリーモデルのデジタル一眼レフが普及してきたことによりまして、私たちが提供するハイパフォーマンスなメモリーカードの売り上げも高まっています。
G:
ソニー、ニコンと共同で毎秒500MBの転送速度と2TB以上の容量を実現する新メモリカード仕様を策定しましたが、実際に製品化されるのはいつごろなのでしょうか。
スーザン:
今はまだコンパクトフラッシュの標準化団体「コンパクトフラッシュアソシエーション(CFA)」の委員会に対して仕様を提案した段階ですね。まだ委員会が提案した仕様を検討しているところなので、検討が終わってから、実際に製品化していく予定です。
G:
つまり規格が標準化された場合に、実際に同仕様を採用したメモリカードを製品化するメドは立っているということでしょうか。
スーザン:
私たちが展開しているラインナップ上において意味があると考えれば発売をしますが、現在は評価中なので、今はまだ製品化についての決定を行っていません。このフォーマットに関してはソニーとニコンの方々をパートナーとして評価中です。
G:
今後メモリカードはどこまで高速化できるものなのでしょうか。
スーザン:
限界は無いと思います(笑)
……というのは冗談ですが、現在のSDメモリーカードで言いますと「UHS-1」では毎秒最大100MB、「UHS-2」では毎秒最大300MBの通信が可能になるとされておりまして、「限界のスピード」というのは規格次第だと思います。
スーザン:
規格に合わせて理論上のスピードはどこまで出せるのかといったことを考えるのですが、その場合もホスト(機器)とカードのコンビネーションなので、技術やメモリーのスペックといったさまざまな要因がありますが、今の段階では規格の限界値に依存している状況です。
G:
Androidスマートフォンの記録メディアとしてmicroSDメモリカードが採用されている例がほとんどですが、「スマートフォンで快適に利用できるように特化したメモリカード」などのリリースは考えているのでしょうか。
スーザン:
現在microSDメモリカードは主に携帯電話ユーザーに使われていますし、将来的にはスピードがどんどん重要になってくると思います。私たちはいろいろなパフォーマンスのSDカードをラインナップしていますので、microSDメモリカードでも高いパフォーマンスの製品を出すことは可能です。
今は将来についてのコメントはできませんが、もし製品を出す場合は大きなイベントをやって立ち上げたいと考えています。
G:
128GB以上の「SDXCメモリカード」のリリース予定はありますか?
スーザン:
もちろん私たちも高い容量の製品を出したいと考えていますので、技術面と市場的な問題が解消された時に発売すると思います。今は製品を出す予定が決まっていませんが、準備はいつもしている状態です。
G:
サンディスクは「5トントラックに踏まれても大丈夫」といったキャッチコピーで耐久性をアピールしていますが、過酷な環境で撮影する人からはどのような評価を得ているのでしょうか。
スーザン:
熱い砂漠や寒い気候、嵐の中でも実際に使用できるので、プロのカメラマンが働いているような環境でもサンディスクのメモリーカードが持つ温度への強さや防水性が役に立つと思いますし、実際に温度の問題で故障をした事実はありませんね。
最近ヨーロッパで記事がありましたが、カメラマンの方がカメラをトランクに入れたままにしていたら、その車が燃えてしまったということがありました。それでカメラは燃えてしまいましたが、メモリーカードを取り出してみると、中のデータを取り出すことができたという話です。
スーザン:
それ以外にも、例えば「カードを入れたまま洗濯機で洗ってしまってもデータは無事だった」というユーザーの声もありましたし、私たちのラボでテストのために熱いコーヒーの中にカードを入れてみたこともありました。
サンディスクは中国など、アジアの国々でさまざまなイベントをやっているのですが、現地のメディアの方を前にして「アイスの中にカードを入れてカクテルを作る」などのデモを行ったこともあります。実際に私の9歳の息子やその友達がカードを踏みつけている動画がありますのでお見せします。
これがその動画。子どもたちがよってたかってメモリカードを踏みつけるという、とんでもない内容です。
YouTube - 子どもたちから踏まれまくっても大丈夫なSandiskのSDメモリーカード
G:
すごい光景ですね(笑)
スーザン:
サンディスクメモリカードをこのように踏みつけても大丈夫なのは、パッケージング技術が良いからです。SDメモリカードの内部はモールド加工されています。
G:
ちなみに実際にはどのような耐久実験が行われているのでしょうか。
スーザン:
詳細な実験については企業秘密ですのでお見せできませんが、塩水に72時間漬けたり、先ほど言ったように熱いコーヒーにカードを入れるという実験も行っていますし、5メートルの高さからカードを落としたり、5トントラックを使った実験もしていますね。
サンディスク株式会社 マーケティング部ディレクター 大木和彦さん(以下、大木):
構造的にはプラスチックの中を全部モジュール化する「システム・イン・パッケージ」方式を採用しているので、そのおかげで水などに強いというわけです。「では他社も同じことをすれば高耐久性を実現できるじゃないか」という話になりますが、システム・イン・パッケージは基盤に打ち込むような従来の方法に比べてコストがかかります。
我々は世界で一番多くのメモリーカードを作っていますので、そのスケールメリットによって、システム・イン・パッケージを採用しつつ、製造コストを引き下げることに成功しているという側面もありまして、サンディスクの強みの1つであると思っています。
先日発表された「サンディスク エクストリーム プロ SDHC UHS-Iカード」の裏面。実は「SanDisk」というロゴが書かれた部分よりも上の部分だけでメモリーが完成しており、下はただのプラスチックとのこと。そして水に触れるのはコネクター部分だけであるため、高い耐久性を実現しているそうです。
G:
やはりメモリカードだけでなく、SSDや組み込み向けフラッシュメモリといった製品を総合的に手がけているという点もスケールメリットにつながっているのでしょうか。
大木:
そうですね。あとは他のフラッシュメモリメーカーのようにOEMでフラッシュメモリを提供しているだけでなく、ユーザーに直接メモリーカードを売っている部分も強みの1つです。市場と直接繋がることでユーザーからのフィードバックをダイレクトに受けることができるので、他社よりもユーザーの温度を正確に知ることができる……というのも大きいです。
G:
GIGAZINEでも実際に利用してレビューしたサンディスクの「永久保証」は非常に良いサービスですが、実際に保証を使う人は多いのでしょうか?
スーザン:
詳細のデータは調べていないので分かりませんが、時々使われる方がいらっしゃいますね。決して多くはありません。そして保証を求めている方にはカードをお渡ししています。
G:
実際に永久保証を利用するにあたって、結構手間がかかりましたが、これをもっと簡単にするような予定はあるのかをお聞かせ下さい。
大木:
保証の申請手順は国によって違うのですが、日本の場合は基本的に保証書と購入履歴の両方が必要になります。
日本で正規品を買ったお客様とそうではないお客様に対してフェアでいなければいけないので、どうしてもそういう点でご迷惑をおかけしている部分があるかもしれません。ただ、それを除いてもできるだけスムーズにサービスを利用できるようにしたいと心がけています。
G:
ありがとうございます。
後編ではフラッシュメモリの単価の下落についてスポットを当てたインタビューをお届けします。
<続きます>
フラッシュメモリーカードで世界をリードするサンディスク
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