インタビュー

長寿命で高性能なSSD「SANDISK G3」を生み出したサンディスクに、SSDについて色々と聞いてみた


パソコンやデジタルカメラ、携帯電話においてもはや必須となった感のあるSDHCメモリカードやメモリースティックなどの「フラッシュメモリカード」で世界市場シェアNo.1を占めるサンディスクですが、実は同社の売り上げの半分を占めているのが、ネットブックやノートパソコンなどに内蔵されているSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)などのOEM(相手先ブランドによる生産)事業。

今回はサンディスクのOEM製品事情について、同社が2月に発売した、独自開発の高速化・長寿命化技術「ExtremeFFS」を用いることでHDDの6倍の寿命や高速転送、高い耐久性を兼ね備えたハイエンドSSD「SANDISK G3」シリーズを中心にインタビューしてみました。

10年の製品保証が付けられるなど、同社が自信を持って発売する「SANDISK G3」ですが、なんと今までは買い換えを余儀なくされていた古いパソコンも、HDDを「G3」に入れ替えることによって製品寿命を延ばすことが可能であるそうです。


また、SSDが手ごろな価格に値下がりする時期や、最近他社が発売に乗り出している1万円前後の安価なSSDへの対抗策などについても聞いてみました。

詳細は以下から。
今回インタビューを行ったのは、サンディスク コーポレーション SSD製品プロダクトマーケティング ディレクターのドリート・オーレン(Doreet Oren)氏です。出身大学のジョージ・ワシントン大学ではコンピュータ・サイエンスを専攻しており、世界中のさまざまな会議や講演会で講師を務めています。


GIGAZINE:
そもそもサンディスクがOEM(相手先ブランドによる生産)製品を手がけていることをあまり知らない人がいると思われますが、具体的にサンディスクのフラッシュメモリ製品はどのような製品群(ノートパソコンやネットブック、携帯電話、他社名で発売されるメモリカードなど)にOEM供給されているのでしょうか。

ドリート・オーレン:
サンディスクは自社名で販売しているメモリカードなどのリテール部門において知名度がありますが、OEM事業もかなりの成功を収めておりまして、2009年の売り上げ全体の50%を占めています。

サンディスクの2008年、2009年の売り上げ内訳。2008年は36%にとどまっていたOEM事業が2009年には50%に急増しています。


ドリート・オーレン:
日本メーカーや海外メーカーを問わず、基本的に多くのメーカーがOEM供給を受けていることを公にしたがらないため、あまり具体例は申し上げられませんが、ネットブック市場のトップメーカー10社のうち、ASUSやHP、ソニー、LG電子などの8社がサンディスクのSSD製品を採用しています。また、ソニーの薄型ノートパソコン「VAIO X」ASUSの「EeePC T91MT」などはサンディスクのSSDを採用していることを公表していますね。

これがネットブックなどに用いられている「pSSD」です。左はシリアルATA仕様で右はパラレルATA仕様となっています。


GIGAZINE:
以前サンディスクのバイスプレジデントでプロダクトマーケティングのエリック・ボーン(Eric Bone)氏へのインタビューで、フラッシュメモリカード製品が世界シェアNo.1であることをうかがいましたが、SSD製品でのシェアはどうなっているのでしょうか。

ドリート・オーレン:
ネットブックについては先ほど説明したとおり、ネットブックメーカーのトップ10社中8社が弊社のSSD製品を採用しており、最も多くのネットブックメーカー様に採用されているブランドであると認識しています。

一方で、ユーザーはネットブックに対して「安価なノートパソコンであること」を強く要求しているため、容量が大きく、安価なHDDが大半を占める結果となりました。ただ、AppleのiPadのようなタブレットデバイスが新たに流れを作り出しており、こちらに関してはネットブックよりもフラッシュメモリ製品への需要を高く望むことができるのではないかと考えています。

ノートパソコンにおけるSSDのシェアについては、最近OEM向けにサンプル出荷を開始した「SANDISK G3」によって、強いポジションを築けると考えております。まだ出荷したばかりなので、売り上げを出せる状態ではありません。

GIGAZINE:
高速化・長寿命化技術「ExtremeFFS」を採用することで、一般的なHDDの6倍にあたる長寿命なSSD「SANDISK G3」を2月に北米・ヨーロッパ向けに出荷開始しましたが、この製品はどのような層をターゲットにしているのでしょうか。

ドリート・オーレン:
いくつかありますが、SSDに関心を持っているユーザーや最新製品に飛びつきたい層、出張が多いビジネスマン、そして本当に価値があるものに対してはお金を惜しまないというユーザーを対象にしています。また、今はOEM供給しているメーカー向けにサンプルを提供して、検証してもらっているところです。

また、個人以外の場合では、社内に数多くのノートパソコンを保有していて、一気に買い替えるコスト負担が厳しいので、搭載されているHDDのみをSSDに変更したいという企業もターゲットにしています。

基本的にノートパソコンのパフォーマンスが落ちる理由としてはHDDの経年劣化が最も考えられますが、「SANDISK G3」に換装することで寿命が2年ほど長持ちするため、すでにアメリカでは入れ替えを検討している会社もあります。

そしてサンディスク内部でも古いノートパソコンのHDDを「SANDISK G3」に入れ替えようという動きがありまして、初期段階として社内のパソコンのうち30~40台を対象に入れ替えるテストを行ったところ好評だったため、さらに対象を70台に広げてテストしてフィードバックを得た結果も非常に満足のいくものでした。

HDDを「SANDISK G3」に入れ替えるということに関しては、私がプレゼンテーションを社内で行って実現したものであったため、このような評価を得られたことは個人的にとてもうれしいものでした。

これが「SANDISK G3」です。2.5インチタイプのHDDと同じ形状となっています。


裏面はこんな感じ


GIGAZINE:
また、2009年1月の正式発表から発売まで実に1年ほどかかっていましたが、製品化にあたって何らかのハードルはありましたか?

ドリート・オーレン:
ありましたね。想定よりも時間がかかってしまったのは、信頼性やパフォーマンス、耐久性を確保するためです。

SSDに最も良いパフォーマンスと高い耐久性を発揮させるためには、現在業界で標準として使われているフラッシュ管理である「ブロックベース」と呼ばれるアルゴリズムではなく、「ExtremeFFS」と我々が呼ぶページベースアルゴリズムの移行が必要でした。

「SANDISK G3」にはページベースのアルゴリズムが採用されていますが、このようなアルゴリズムの変更は10年に1度起きるかどうかというほどの大規模なもので、大半のフラッシュメモリメーカーはページベースのアルゴリズムへ移行できていません。

このような製品は「きちんと作ってから出す」というのが我々の考えであるため、ユーザーがしっかりと使えるようにするために時間をかけて作り込みました。完成した「SANDISK G3」に対して、私たちは満足しています。この技術に自信を持っているからこそ、リテール版の製品保証期間を10年にしました。

また、SSDの普及は世界的な景気の悪化やフラッシュメモリの価格高騰を受けて遅れていますが、だからこそ製品化を急がず、OSやアプリケーションなどを快適に利用できるユーザーエクスペリエンスを確保したいというねらいもありました。

パフォーマンスに関して、マイクロソフトの最新OS「Windows 7」に搭載された「Trimコマンド」をSSDがサポートすることで、より長い間初期のパフォーマンスを維持することができるようになりました。「Trimコマンド」にSSDメーカーが対応していない場合、パフォーマンスが時間が経つにつれて遅くなっていきます。

GIGAZINE:
ちなみに「ExtremeFFS」というページベースアルゴリズムは、いったいどのようなものなのでしょうか?

ドリート・オーレン:
ページベースアルゴリズムを説明する前に、NANDフラッシュメモリの特性と、現在一般的に使われているフラッシュ管理手法である「ブロックベースアルゴリズム」について説明させてください。

NANDフラッシュメモリはデータを記録する細かい「ブロック」の集合体で構成されていますが、フラッシュメモリはその性質上、ブロックの中の1部だけを上書きするようなことができないため、データを書き込む場合、ブロック全体をいったん消去します。

たとえ書き込むデータが1つのブロックの容量に満たない4KB程度の小さなものでも、ブロック単位で消去し、該当する部分のデータを書き換えたブロックを丸ごと新たな空き領域にコピーする必要があります。これではデータを書き込むために時間を要する上に、フラッシュメモリを必要以上に磨耗してしまいます。

これがフラッシュメモリのイメージ図。ブロックの中に色とりどりのデータが収録されていますが、従来の「ブロックベースアルゴリズム」では「赤色の部分だけを上書きする」ということはできません。


ドリート・オーレン:
さて、ページベースのアルゴリズムはというと、データを書き込む際に任意の空いた領域に記録して、古いデータには「無効」のマークを付けるだけで、ブロック全体のデータを消去をする必要はありません。これによって、ブロックベースで書き換える従来のSSDより高速で、磨耗をできるだけ最小限に抑える無駄のない処理が可能になります。

GIGAZINE:
古いパソコンでも利用できるパラレルATAモデルで高速タイプのSSDを提供する予定はありますか?

ドリート・オーレン:
すでにpSSDでパラレルATA製品を提供していますが、最新のパソコンは基本的にシリアルATAをサポートしていることと、アナリストによるとパラレルATA市場はあまり大きくないことから、「SANDISK G3」に関してはパラレルATAモデルを発売する予定はありません。

また、2.5インチHDDと同じ形状のモデルに加えて、さまざまなフォームファクターに合わせる形でSSD製品を提供しようと計画していますが、OEMメーカーが指定したデザインや厚みなどの要望を確認しています。

GIGAZINE:
やはり厚さやデザインを要望に応じて合わせられるというのは、HDDにはない強みなのでしょうか。

ドリート・オーレン:
そうですね。最初はHDDの形状に合わせていましたが、それは自動車が登場した当初、馬車と似たようなデザインであったのと同じようなことで、今ではスポーツカーやワンボックスカーのような、用途に合わせて形状が異なる自動車と同じく、求められるサイズに合わせて提供できるようになっています。

一般的な2.5インチタイプのHDDと同じ形状となっている「SANDISK G3」


中のメモリモジュールはこんな感じ。HDDと異なり、要望に合わせてサイズや形状を変更できます。


GIGAZINE:
OCZIntelがパソコンの起動ドライブ向けに、容量やパフォーマンスが限られる代わりに1万円前後で購入できる安価なSSDの発売に乗り出しましたが、サンディスクとしての対抗策はありますか?

ドリート・オーレン:
今は市場の動向を見極めている状況です。もし重要な市場であると判断した際には、対抗できるような強みを持つ製品を出していく必要があると思っています。

GIGAZINE:
IntelとMicron Technologyが2月に25nmプロセスを採用したNANDフラッシュメモリを発表するなど、競合他社の動きも活発化していますが、サンディスクが持つ他社に負けない強みなどをお聞かせ下さい。

ドリート・オーレン:
まずサンディスクには20年にわたってフラッシュメモリを手がけてきた歴史がありますし、数多くの特許を保持しているという強みがあります。例えばサンディスクの創設者で会長 兼 CEOのエリ・ハラリ(Eli Harari)はMLC(マルチレベルセル)のフラッシュメモリに関する一番最初の特許を取得した先駆者です。

一般的に製造プロセスの微細化(シュリンク)が進むにつれて、フラッシュメモリの管理はどんどん難しくなりますが、シュリンクが進めば進むほど我々が保持する特許やノウハウが生きてきます。

そしてSSD製品だけでなく、メモリカードなどのフラッシュメモリ製品群を手がけていることや、東芝との協業で工場を持っていること、そして自社でフラッシュメモリのコントローラーを手がけていることも強みですし、長い歴史を持った専門性のある企業であるため、今後もこの地位を確保し続けていくと思っています。

GIGAZINE:
実際のところフラッシュメモリ製品市場はどれだけ伸びているのでしょうか?

ドリート・オーレン:
これは多くのアナリストが予測していることですが、今後パソコンやモバイル向けのフラッシュメモリ製品市場は飛躍的に伸びるとされています。

最も伸びるのはモバイル向け製品で、その次がパソコン向け製品と予測されていますが、すでにサンディスクも今年の2月にモバイル向けフラッシュメモリとして最大64GBの「iNAND」をリリースしています。

GIGAZINE:
高信頼性や高耐久性という強みを持つSSDはサーバー用途に向いていると思われますが、実際サーバー向け市場は拡大しているのでしょうか?また、どれくらいのペース(前年比で何パーセントなのか)なのかをお聞かせください。

ドリート・オーレン:
サーバー市場は拡大していますが、サーバー向けには固有の仕様要件があります。現在販売している「SANDISK G3」ではいくつかのアプリケーションの要件は満たしています。しかしながら、サーバー向けに本格的に投入していくには、その市場向けの製品を開発する必要があります。現在我々が焦点を合わせているのはコンシューマーですね。

GIGAZINE:
サンディスクは三重県四日市市に半導体工場があったと記憶していますが、協業関係にある東芝が半導体の新製造棟として第5製造棟を建設すると発表しており、竣工時期は2011年春となっています。これによる影響はあるのでしょうか。

ドリート・オーレン:
東芝とサンディスクはパートナーですが、それぞれ別のビジネスストラテジーを持っておりますので、当社の将来のビジネスストラテジーに関してはコメントできません。

GIGAZINE:
まだまだHDDと比較すると記録容量あたりの単価で引けを取るSSDですが、より手ごろな価格まで値下がりする時期はいつごろになりますか?

ドリート・オーレン:
コストパフォーマンスについて論じる際に、よく1GBあたりの単価が引き合いに出されますが、アナリストの予測によると2011年ないし2012年には「1GB=1ドル(約92円)」になる見込みです。

アナリストによる予測。SSDは2011年から2012年にかけて1GBあたりの単価が1ドルになるほか、さらに2013年以降にはその1GBあたり0.5ドル(約46円)程度になると見込まれています。


GIGAZINE:
今後のサンディスクのビジョンを教えて下さい。

ドリート・オーレン:
NANDフラッシュメモリは今後も長く使用されると見込まれており、これからもフラッシュメモリを使用する数多くのコンシューマー向け機器が新たに発売されるため、市場は継続的に成長していくと考えられます。

また、向こう数年でモバイル機器向け市場に加えて、現在HDDが主流となっているパソコン向け市場も成長が見込まれるため、「HDDがあるところにフラッシュメモリを置き換えるチャンスがある」という考えのもと、今後もフラッシュメモリ製品を広く普及させるために尽力したいと考えています。

GIGAZINE:
ありがとうございました。

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in 取材,   インタビュー,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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