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インタビュー

「牙狼」を創った男・雨宮慶太監督にインタビュー、「3Dになった牙狼はアクションの質で勝負」


好評を博した特撮テレビドラマ「牙狼<GARO>」の3D映画化が発表されたのは2009年7月のこと。それから1年を経て、いよいよ「牙狼<GARO> ~RED REQUIEM~」が10月30日(土)から新宿バルト9ほか全国劇場にてロードショーとなります。

今回は、その「牙狼」を創った雨宮慶太監督にインタビュー。雨宮監督はなぜ特撮を撮り続けるのか、そして、なぜ今回の牙狼は3Dなのか。色々詳しくお話を伺うことができました。

インタビューの中身は以下から。
雨宮慶太監督。


GIGAZINE(以下、G):
まずは、なぜ雨宮監督が特撮を撮る理由からお伺いしていきたいと思います。監督は幼少時から特撮がお好きだったとのことですが、その原体験は「仮面ライダー」ですか?

雨宮慶太(以下、雨):
いや、「ウルトラマン」の方で、最初は「ウルトラQ」だったかな。その前に、ゴジラの映画だったかもしれない。3歳のときに観た「キングコング対ゴジラ」が一番最初に観た映画です。おぼろげに憶えてるんですよね。

G:
それを観た理由というのは?

雨:
私は千葉県の浦安出身で、よく銭湯の帰りに映画館に行っていたのでそこで観ました。親父が割と映画好きだったんで、円谷さんの怪獣映画とかは公開時に観てたんじゃないかな。

G:
そこからずっと特撮系の映画の方が親しみ深いですか?

雨:
そうですね。僕は映画はジャンル的に二種類しかないと思っているんです。

G:
二種類というと?

雨:
「怪獣が出る映画」と「怪獣が出ない映画」(笑) 僕の持論なんですけどね。映画のジャンルはこの二つしかないんですよ。恋愛物だとかアクションとかホラーとかじゃなくて、「怪獣が出る映画」と「出ない映画」。この二種類しかない。

G:
いままでの作品を観ていると「なるほどな」と思います。もしかして巨大怪獣映画がやりたいという気持ちもありますか?

雨:
まあ、そうですね、やりたいなとは思います。けど、「ゴジラ」とか「クローバーフィールド」とか、結構表現はやり尽くされている感があるので、もうちょっと、地味にやっていった方がいいかなあと思っています。

G:
いま「クローバーフィールド」の話が出ましたけど、あれは観てどうでした?

雨:
おもしろかったですね。怪獣がかっこ悪かったですけど(笑) あれで怪獣がかっこ良ければ、最高だなって思いました。なんか怪獣がかっこ悪いですよね、アメリカの映画って。


G:
たしかにハリウッド版のゴジラも……。ハリウッド版ゴジラはどう思いました?

雨:
ゴジラじゃないですからね、あれは。ただのデカいトカゲというか……。特撮はすごかったですけど。日本以外には怪獣って概念が無いのかもしれないですね、モンスターとか怪物はあるんですけれど。怪獣というのはちょっと、どっちかっていうと天変地異に近いのかも知れない。

G:
「鉄甲機ミカヅキ」から5年ぶりの特撮が「牙狼」です。その間、ゲームのキャラクターデザインをやったり、「魔法少女隊アルス」の原作を務めたりしていますが、「牙狼」の企画はいつ頃から進め始めたのですか?

雨:
「タオの月」をやる前ぐらいから話はありましたね。オムニバス・ジャパンっていう「牙狼」のCGをやっているチームが面白くて、技術的に凄く優秀なんです。東北新社の会長(現、最高顧問)の植村伴次郎さんに「オムニバス・ジャパンはCSとか映画の下請けだけをやっているから、どうしてもスターになれない。あの技術がスターになるような企画を作ってくれ。」と延々ずっと言われていたんです。実は「魔法少女隊アルス」なんかもその流れで出発したんですけど、違うアニメ会社での制作になったりして……。


前から等身大のダークヒーロー的なものをやりたいなっていうのはずっとありました。なんとなくそれにギュっと近寄って行って、「牙狼」が出来たっていう感じでしょうか。初めにCGがありきで、僕がやりたかったダークヒーローがグっと近寄ってきたと。最初に声をかけて頂いた時から実現する時までに大分CGとかのワンカットあたりの単価が安くなってきて、テレビでそこそこ使えるぐらいになってきたんですよ。その辺で射程距離に入ってきたなっていう感じはしたんですけどね。

G:
当初は「牙狼」って子供向けとしてやっていたとお伺いしたんですが、中身は第一話からかなりダークな感じでした。どの辺りで方向転換したんですか?

雨:
最初はヒーロー物なんで、子供のコンテンツにしようというのがありました。ただ自分の中ではあんまり変わってないですね。「子供向けから大人向けになりました」っていって、中身が変わってるのかと言ったら実は変わってなくて。設定がちょっと変わったぐらいですかね。子供向けの時は陸海空のメカがあって馬と鮫と鳥、3つのメカを駆使する黄金騎士みたいなイメージがあって、大人向けでもそれで成立する表現は持っていたけど、ちょっと予算の問題もあり、馬しか出せないなと。しかも馬も毎回は出さない。

現実的な問題に直面して、それを予算だとかプロデューサーの思惑とかそういったもののせいにして出来ちゃう作品っていうのもあったりするけど、そういうスタイルは好きじゃない。そういうものを、最初から自分がやりたかったものに結び付けて着地させたいんです。「馬は毎回は出せない」という前提があっても、出すときにはきちんとドラマがあり、それはとてもスペシャルなものですと。主人公の馬が出ることによってドラマとして盛り上がっていく構造にしようという着地の仕方ですよね。そこはパズルと一緒で、表現できるものが明快になるとギュッとドラマになるんです。そこをなるべくポジティブに考えれば、どんなものでも着地できるはずなんですよね。

G:
まさに「プロ」って感じですね。
魔導輪ザルバ役には影山ヒロノブさんを起用しています。影山さんはOPを担当するJAM Projectのリーダーで歌手ですけど、起用した理由というのは?

雨:
影山さんは僕が東映でやってた「鳥人戦隊ジェットマン」の主題歌を歌ったり、ドラゴンボールでも歌をやっていたりして、僕の認識としては影山さんはアニメの主題歌をいっぱいやってるから声優とかもいっぱいやっているだろうという印象で(笑) 声優さんを改めて呼ぶのも金がかかるので、影山さんに頼めば安くやってもらえるかなって気軽に頼んでみたら「いいよ」って承諾してくださったんです。後で聞いたら、いくつかはあるみたいなんだけど、メインでの声優はやったことがないっておっしゃってました。でも、声優さんと同じような指示の仕方で芝居をしてもらいました。影山さんは今ではもう「ザルバしかやらない」って公言してくれていますね。

G:
初めはオープニング曲がインストゥルメンタルで、初めて歌が聞けるのは第12話のバトル中からでした。この構成にした理由は何かあるのですか?

雨:
あれは製作委員会的なものがあったからですね。最初から曲はできていたんですよ。僕はあんまりこだわらなかったんですけど、委員会的に言うと、曲があんまりチャイルディッシュじゃないかと。やっぱり大人向けのコンテンツとして始めるのを徹底したいなって意見があったんですよ。あの曲を使うか使わないかってとこまで実際揉めたんですよね。僕はあの曲はありだと思ってたんだけど、スタッフから「他のヒーロー物に近いんじゃないの?」というちょっとネガティブな声もあって。なら、この曲を一番好きに鳴らすためにはどうしたらいいかと考えて、一話から使うのではなくて一番盛り上がるところで使おうと考えました。なおかつ、あの曲が唐突に出るんじゃなくて、あの曲の欠片を一話から全部散りばめてやろうという構造にしたんですよ。最終的にはあの曲からオーケストラ版、ボレロにいくまでの流れを全部作ろうというとこで作っていったと。まあ結果論になっちゃうんですけど、それだけ、皆熱く新しいものを作ろうとしてたっていうのかな。

G:
ブログを読んでいると肩、首、腰とあちこち痛いように見受けられますが、大丈夫なんですか?最近作業がいっぱいあるせいで疲れているだけなのか、それとももうガタがきているのかどっちなのかなと(笑)

雨:
半分ガタがきてます(笑)

G:
「雨宮監督、大丈夫なのかな」ってくらい書いてあったので。

雨:
みんなに心配して欲しいんですよ。

G:
(笑) あんまり現場では心配されないんですか?

雨:
心配はされないですね(笑)

G:
「牙狼<GARO>~RED REQUIEM~」は2Dでの上映は一切しないというのはどういうこだわりがあるのでしょか?

雨:
こだわりというよりは、3Dで作った映画なのでそれを2Dでやる理由が見当たらないということです。

「3D作品を2D上映しても、得する理由が一個もない」と言い切った雨宮監督。


雨:
これには東北新社さんも同意してくれました。社内的には上映館数が増えるだろうということで2Dを推す声もチラホラあったのかもしれませんけども、そういうことを「牙狼」でやっていいのか、ということで最終的に「3Dだけにしましょう」となって、良かったです。

G:
完全に3Dで作ろうって決断したのはどの辺りですか?

雨:
決断というよりも、ぼくは受け身で、途中で「3Dにしてくれ」って言われたんですよ。

G:
言われた時はどうでした?

雨:
逆にしめしめと思いました(笑) これで大分劇場版のプレッシャーから少し呪縛が解けるっていうような実感です。


G:
作っていく中で、2Dと3Dの差を体感する場面はありましたか?

雨:
この映画が成立しているところが一番大きいんじゃないですかね。実は、今までの牙狼の中で一番アクションが少ないんですよ、3回ぐらいしかない。牙狼(の騎士姿)も2回しか出てこないですから。その間のドラマが、3Dだと結構もっちゃうんですよ。空間表現っていうか。芝生に多少立体感があったりして。これはテレビだと成立しないんですよ。「牙狼<GARO> スペシャル 白夜の魔獣」の後編は始まってちょっとしてからそのあと延々と30分くらい最後までずーっとアクションやってますから。それを映画でもやらなくちゃいけないのかと最初はゾッとしたんですけど、3Dになったので、そこでは勝負しなくてもいいんだなっていう気持ちがありました。アクションのボリュームではなくて、質で勝負できるから。


アクションの尺でいうと圧倒的にテレビシリーズに比べて少ない、こぢんまりとした作品なんですね。でも観終わってみると、それなりに観た感じがする作品になっています。

G:
最近の3D映画を観ていると手前に出てくる表現のものが多い気がしますが、牙狼の場合は奥行きが感じられる表現が多くて「上手いこと3Dをやっているな」と思いました。やはりあれは最初から3Dは奥行きを表現するものだろうというところがあったんですかね?それとも、たまたまああなったんですか?

雨:
半々ですね。どっちかというと奥行きしか表現できないんですよ。今の3D映画の上映環境で表現できる3Dというのは奥行きだけなんです。手前に来られるものは小さいもので、なおかつ立体認識が非常にしやすいものだけ。例えばガラスの破片であるとか、石であるとか、文字ですね。見慣れてないもの、例えば映画でしか出てこない非常に奇妙奇天烈な形をしたものとかはあんまり立体として認識されない。それが大きいものなのか、ミニチュアとして作っているものなのかっていうのを脳が錯覚してわからなくなるんですね、変なものは。


絶対的に認識できるものは見慣れてるものに限られる。もし新しいものを出すとしたら、ずっと画面に置いておくしかないんですよ。結局、3D映画だと飛び出さないと満足感が無いんです。目の前にものが置かれてる場合でも立体に感じるんですけど、根元がスクリーンの奥にいってるものの方がより立体的に感じられるんですよね。剣先だけ来るとか。例えば、文字の冠の部分はスクリーンの奥にいってるんだけど、下の跳ねの部分はスクリーンから出てるとか。

違和感のない3D映像を実現した「牙狼<GARO> ~RED REQUIEM~」。


今回は、立体に見えるような視差を延々とチェックして、素材を作ってどのカットに入れるかというのをやっていきました。

G:
今回の映画は、観ていると「牙狼」第一話の雰囲気に近い気がしました。

主人公・冴島鋼牙は今回、魔戒法師アカザ、弟子のシグト、そして烈花とともに使徒ホラーとの戦いに挑みます。


烈花の戦いぶりにも注目。


鋼牙と烈花は使徒ホラーを倒すことができるのか。


雨:
最初の1クールの、一話完結のホラーを倒す話にしたかったので、そういうテイストは入れようと意識しました。あと、テレビシリーズを観てない人がスッと入れる話にしたかったというのもあります。テレビ版を観てないとわからない設定とか人間関係とかっていうのがあんまり好きじゃないんで。そういうの一切止めちゃおっかなと。旅にしてしまえば他のキャラクターも出なくてもいいし。

ホラーといっても世界征服を企むとかじゃなくて、人間の肉を食べながら転々としてくっていう方がスッと入ってこれるだろうと。「牙狼」を全く観たことない人が、最初に観る牙狼的なものにしたいなと思って。それで映画を観て面白ければ、もしかしたら前のシリーズも観てもらえるかもしれないし。もう一回観れば、またちょっと見方も変わったりするかもしれない。唯一、神経を使ったのはそこですね。「牙狼」のシリーズを追いかけてきたファンの人が居る一方で、初めて観るお客さんにも気を配るというところ。

ホラー相手に立ち向かう鋼牙。


G:
「新しくやりたい企画のシナリオを書く時間が、なかなかとれない。実現したい企画が二つある。」とのことですが、どういった企画でしょうか?言える範囲で聞かせてください。

雨:
一個は「牙狼」的なアクション物で、戦い方が非常に特殊で誰もやったことのないジャンルのアクション物です。これは元気なうちに撮りたいなと。もう一個はアクション物じゃなくて妖精を題材にした非常に地味な話なんですけど。まあバトルのない鬼太郎っていうか、そういうちょっと淡々としたのを撮りたいなあと。


G:
なるほど、映像化を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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