取材

なんと京都芸大の入試に「週刊少年ジャンプ」が登場、その裏事情と真の意味を探ってみました


2月25日(木)・26日(金)・27日(土)に行われた2010年度京都市立芸術大学美術学部美術科の入試がこれまでとはかなり傾向の違う問題が次々と出題され、なんと「週刊少年ジャンプ」が着彩の対象物として出題され、受験者の間に衝撃が走ったとのこと。

編集部で調査したところ、実際に出題された問題を入手することに成功しました。また、なぜ公立の芸大でマンガ雑誌が問題として利用されたのかという裏事情についてもある程度の考察を得ることができました。単純に奇をてらって週刊少年ジャンプを選んだわけではないようです。

詳細は以下から。
まず前提として、京都芸大の入試は3日間にわたって行われ、公式サイトにある平成22年度京都市立芸術大学美術学部学生募集要項細目のPDFファイルを見ればわかりますが、以下のようになっています。

センター試験:国語(200点)+外国語(200点)+数学・理科(100点)+地理歴史・公民(100点)=合計600点を400点に換算
描写:250点(鉛筆描写力、いわゆるデッサン)
色彩:250点(第1課題と第2課題の2つを行う)
立体:250点

センター試験は既に1月に行われており、残り3つの「描写」「色彩」「立体」を3日間にわたって実技テストするわけです。

まず第1日目、2月25日(木)に行われた「描写」はこんな感じ。


そして第2日目、2月26日(金)午前に行われた色彩の第1課題がこれ。「雑誌」と「アスパラガス」。このうちの「雑誌」が週刊少年ジャンプだったというわけ。ちなみにアスパラガスはまだ課題としてはカンタンな方なのですが、もう1つの週刊少年ジャンプは難易度が極めて高いとのこと。


実際に使われたのは、入試の前週に発売された「週刊少年ジャンプ」2010.Vol.11で、以下のような表紙となっています。


なぜ難易度が高いのかというと、問題文をよく読むと条件として「鉛筆・色鉛筆・消しゴムは下描きも含めて一切使用しないこと」となっており、なんと透明水彩絵具で一発で描けという高難易度に設定されています。

さらに実際の受験者に取材したところ、当日の第1課題終了後の提出時にほかの受験者の課題提出も一緒に見ることができ、週刊少年ジャンプの表紙を描ききった受験者は非常に少なく、中にはあの表紙を描くことを避けるために表紙ではなく裏表紙の広告部分を描いてしまった人もいたとのこと。しかし、その広告部分はモノクロベースであり、第2日目は「色彩」であるため、この表紙を避けた時点でアウトになるという仕組み。


そもそも、これまで京都芸大ではマンガに対して「一段低いもの」として見下している教授陣が大部分だったはずなのですが、やはりここ最近の時代の傾向などから、こういうのもアリになったのではないか?という見方も可能なわけですが、実際に調べてみるともっと複雑な裏事情があることがわかってきました。

今回、週刊少年ジャンプが出題された最大の理由は芸大受験予備校の存在、特に「京都アートスクール」、通称「アスク」の存在があると推測されています。というのも、芸大受験予備校では徹底的に受験合格を目指した「技術」がノウハウとして教えられており、特にここ最近は「こういう場合はこう描け」というような決め打ちパターン分類の受験対策が徹底して行われ、中には東京から通ってくる学生がいるほどの評判で、実際に京都芸大に入学する学生もかなりの部分がこのアスク出身者であったこともあるとのこと。結果、入試には合格したが、それはあくまでも入試に合格するだけのスキルだけしかなく、実際の実力が伴っていないケースが年々増加し、全体レベルの低下を恐れた芸大側がこれ以上看過できないということを示すため、これまでとは打って変わって、「アスクなどの芸大受験予備校では教えていないパターン」を出題してきたようです。

ちなみにこれが午後からの第2課題。午前中の第1課題がこれまではあり得なかったパターンの問題であったため、動揺した受験生がかなり多かったとのこと。


芸大受験予備校対策が露骨に出てきたのが最終日の「立体」。以下がその内容です。


どこがポイントかというと、「ケント紙」のサイズとストロー太10本、さらに粘着両面テープ。そもそも京都芸大などの芸大系入試は実技試験であるため、その試験用の素材を揃える必要性があるわけですが、予算が無尽蔵にあるわけではありません。そのため、ある程度の予算内で受験者全員に配ることが可能で、なおかつ各自の実力が見極められるモノ……ということで過去30年ぐらいの出題内容はある程度事前に予想されてしまうことが多かったわけです。

ところが今回は週刊少年ジャンプの「前週」のものを第2日目で使用しています。今週分の週刊少年ジャンプは定価販売ですが、それより前の週刊少年ジャンプで未発売分は回収されます。どうやらそうやって回収されるはずの週刊少年ジャンプをどういうルートを使ったのかは不明ですが、業者から引っ張ってきたらしく、かなりコストを抑えることに成功。そうやって余った予算を使って第3日目の「立体」の課題では割と高価な材料を使ってきたようです。

写真撮影はできなかったのですが実際に立体素材の一部を見せてもらったところ、特にこの「ストロー太10本」というのはストローと言うよりも、通常のストロー6本ほどを束ねたぐらいの太さで「パイプ」に近く、材質もこれまででは考えられないぐらいの強度。加えて「粘着両面テープ」は通常の両面テープではなくかなり強力なもので、一度くっつければはがすのは割と困難。しかもめちゃくちゃ幅が細く、量も少ない状態。そしてケント紙は例年よりもサイズがかなり小さくなっていたとのこと。

なぜこのようなことになっているのかというと、芸大受験予備校では、とにかく立体は「閉鎖系」を作れというように習っており、今回の材料ではそういうパターンでは太刀打ちできないようにあらゆるモノが準備されていたわけです。まず例年だとテープではなく「ボンド」が通例でしたが、それを排除。ケント紙もサイズを小さくし、さらにストローなどを組み合わせることで閉鎖系立体を作れないようにしており、材料費も上げることによってこれまで練習してきたような素材ではない素材を用意しています。つまり、第2日目の週刊少年ジャンプでは「奇をてらったのか?」程度の推測に過ぎなかったものが、第3日目になってついに「これは完全に芸大受験予備校対策なのだ」ということがわかってきた、という次第です。

なお、合格発表の日程は平成22年3月9日(火)午後3時に京都芸大学内にて掲示され、さらに4月1日から4月30日までの間に限って受験者本人からの試験成績照会が可能となっており、今後の芸大入試において、今回の京都芸大の課題は「芸大受験予備校に行っている者は入学させない」という意志を事実上表明した形となっており、来年度以降の各芸大入試に影響を与えると予想されています。

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in 取材,   マンガ,   コラム, Posted by darkhorse

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