生き物

マダガスカルで絶滅危惧種のキツネザルが食用にされている

© Ed Louis

独自の進化をとげたユニークな生態系で知られるマダガスカル島。世界第4位の面積を持つこの島には、世界の全植物・動物の種のうちなんと5%もが分布していて、そのうち80%はマダガスカル固有種です。希少生物の宝庫であり、多くの絶滅危惧(きぐ)種にとって最後の楽園とも言えます。

しかし現在マダガスカル共和国では、2009年1月から3月にかけて勃発したクーデターを受けて政情が不安定な状態にあることから密猟などの違法行為が横行し、絶滅危惧種のキツネザルが乱獲され、高級食材としてレストランに売られているそうです。

詳細は以下から。Lemur poaching on the rise due to unrest in Madagascar: Scientific American Blog

The pillage of Madagascar – the International Community must act now - Conservation International

マダガスカル共和国の2009年初頭の政治危機、非民主主義的手段による政権交代はアフリカ連合の加盟資格停止処分や各国からの経済支援の中止につながり、自然保護活動の資金が絶たれることになりました。その結果、森林伐採やペット用動物の捕獲・輸出などの違法行為が横行し、さらには食用としてキツネザルが密猟されるという事態まで起きていると、ワシントンD.C.に本部を置く自然保護NPOのConservation Internationalとパートナーの現地NPOFanambyは報告しています。

現在確認されているだけで亜種を含め約100種のキツネザルがマダガスカルに生息し、そのすべてが固有種です。IUCN Red Listではそのうち7種が「Critically Endangered(絶滅寸前)」、19種が「Endangered(絶滅危機)」、41種が「Threatened(危惧)」と記載されています(参考)。食用に密猟されているとして問題となっている種にはレッドリストで「Endangered」とされているGolden-crowned Sifakaと「Vulnerable(危急)」とされているCrowned Lemur(カンムリキツネザル)が含まれます。

カンムリキツネザル。マダガスカル島の北端のおよそ2万平方キロのみに分布します。

© Ed Louis

キツネザル下目インドリ科シファカ属に属するGolden-crowned Sifaka。生息域はマダガスカル島北端の5千平方キロのみです。

© CI/photo by Haroldo Castro

Conservation Internatinalの代表ラス・ミッターマイヤー氏によると、マダガスカル島北部のSava地域では、大規模な保護努力のおかげで近年は主立ったキツネザルの密猟は見られなかったそうです。「密猟は政治的破局の結果です。政情が不安定になるとすぐに地元の犯罪組織は森林を伐採しにやってきて、金になる物は何でもはぎ取っていきます。天然資源をあっという間に根こそぎにしてしまうのです」とキツネザルの世界的権威でありレッドリストの作成にもかかわったミッターマイヤー氏は語ります。

これまでに15人が密猟されたキツネザルを販売していて逮捕された、とFanambyのSerge Rajaobelina氏は語ります。「仲介業者は密猟者にキツネザル1匹あたり千アリアリ(約50円)程度払い、8千アリアリ(約400円)で地域のレストランや市場に売るのです」

マダガスカルのレストランで高級食品として供されるキツネザルのバーベキュー。(クリックでモザイクが外れます)

© Fanamby/photo by Joel Narivony

これがすべて密猟されたキツネザルです。

© Fanamby/photo by Joel Narivony

キツネザルを保護し、広範な環境犯罪を止めるためにも、自然保護活動や開発努力への支援を再開するべきだ、とConservation Internationalは国際社会へ呼びかけています。「国際社会は今こそ、この世界的に貴重な資源を守るため、地域で野生生物の保護に心血を注いでいる人々を、支援すべきです。今こそ行動を起こすべきです」とミッターマイヤー氏はスピーチの中で呼びかけました。

「こういった政治的問題が起きるといつも、主要な援助資金供与者はすぐに支援を打ち切り、結果として貧困にあえぐ人々や野生生物を痛めつけることになります」とミッターマイヤー氏。「金銭援助の打ち切り以外の手段で政治的圧力をかけることはできるはずです。援助を絶つことは地域の人々にも、そこで活動しているNGOにも痛手を与えます」

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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