マーライオンのような活躍が期待される那覇市の龍柱を見てきた
4本爪は属国の証、中国に事業費が流れる……など何かと物議を醸していた那覇市の龍柱がついに完成しました。海を向いた2本の龍柱は那覇空港や大型客船からやってくる観光客を出迎えてくれます。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンは沖縄で越冬中です。しばらくは暖かな日が続いていたのですが、つい1月下旬に日本全国を襲った大寒波ではこちらも随分と冷え込みました。夜中にパラパラと屋根を叩くような音で窓を空けるとみぞれ。地元の人もベランダに飛び出しました。
そんな冷たい風が吹いていた2016年1月24日に、何かと論議を読んだ龍柱の完成を祝う式典が行われました。
◆龍柱とは?
中国福州市との姉妹都市締結30周年を記念して、那覇市の新たなシンボルとして計画されたのが、龍の彫刻をあしらった「龍柱」と呼ばれる石の柱を立てることでした。現沖縄県知事の翁長雄志氏が那覇市長時代に「シンガポールのマーライオンに負けないような、あるいは匹敵するような……」とも語った肝入りの事業です。いざ計画が進みだしたものの、工期が間に合わなかったこともあって、国からの一括交付金の繰り越しを断念し、那覇市が新たな予算を組んで完成させました。投入された税金はおよそ3億3000万円という代物です。
龍柱があるのはここ。マックスバリュ若狭店が近くにあります。
その龍柱が完成したというニュースを受け、1月26日に足を運びました。12月にも見学していて、2度目の訪問です。
このように2つの龍柱が立っていました。
西側に位置するのが、口を開けた阿形の龍柱。
龍はコミカルな表情をしていました。ここはマーライオンにも似た可愛らしさ。
根元はビニールシートでぐるぐるにされています。
これは、龍柱設置に反対した人物が落書きしたため。公共物を汚したりしてはいけません。
道路を渡った東側には、口を閉じた吽形の龍柱が立っています。
この龍柱の説明なんでしょうが、こちらもビニールシートに覆われていました。
何かと話題に上がる4本爪。
だるま落としのように、幾つものパーツを積み重ねているので、龍柱にはこのような繋ぎ目が残っています。
吽形の背中。
龍柱設置にあたり那覇市議会における討論の中で観光シンボルの例に上げられたのはシンガポールのマーライオン、厳島神社の大鳥居、パリの凱旋門といった建造物。どこも写真に映える素敵な場所でした。
一方の龍柱ですが、どうにも写真が撮りづらい……。
東側の交差点から取った1枚。吽形の龍柱の背後にピンクの看板が見えますが、あの辺りはラブホテル街なのです。
西側の交差点から取った1枚。やはり電柱、街灯、標識とゴチャゴチャしています。
角度をつけると、幾分かマシかも。
記念写真を撮りたくても、どこに立てばいいのか分かりません。いい場所があるようであれば「沖縄へようこそ」のような看板でも立てて欲しいものです。
この2つの龍柱から歩いてすぐの所に、大型クルーズ船が立ち止まるターミナル港があります。
真っ白で巨大なビルディング。
近くにいた大型バスの運転手さんに話を聞いてみたところ、「クルーズ船が立ち寄った時には、港から繁華街の国際通りまで、大勢の観光客が歩いて行く」とのこと。そういう時こそ、観光シンボルとして賑わう龍柱の姿が見れるのでしょうか。那覇港クルーズ客船の入港スケジュールは埋まっているので、そのときのレポートが欲しいところ。
◆歴史・文化地区
那覇市の都市計画としても、ターミナル港がある若狭海岸から国際通りを経て首里に至る道を、都市の歴史、文化を結ぶシンボルロードとして整備することになっています。龍柱を更に南へ進んだら福州園や孔子廟といった観光スポットが並んでいました。
那覇市制70周年と中国福州市との姉妹都市10周年を記念して作られたのが福州園です。福州をモチーフにした中国式庭園が公開されています。
塔まで作ってありました。実に絵になる景色。
この丸い入口に中国っぽさを感じたり。
ここにも龍柱がありました。港近くの龍柱とは違って、龍が柱に巻き付いています。
福州園の近くには、儒教の始祖である孔子を祀る霊廟もありました。
首里城にも似た赤い建物。
◆気になった点
・中国産の石材
日本の税金を中国に垂れ流したかのように騒がれていますが、石材の購入費は6600万円だったと那覇市議会の議事録に残っています。つまり、残りの2億6700万円は地元への支払いです。ただ、これにしても誤解を受けるのは当然で、誰に幾ら払ったのかという記録が見つかりません。どこにあるか教えて下さい。
あれだけ巨大な石柱ですから、中国企業への支払いは値段相応でしょう。ただし、クオリティもそれなりのようで、ヒビが入っていたという報告も出ています。
・一括交付金の使途
泊まっているゲストハウスに届く地元紙が、沖縄の子どもの貧困を取り上げているのもあって「箱物より先に福祉に回すべきでは?」と疑問でした。これについては那覇市議である屋良栄作氏のFacebookに説明がありました。
(なぜ福祉や教育に使わなかったのですか?)
一括交付金制度がスタートしたのは2012年度からです。初年度の那覇市には約54億円が割り当てられており、私は当局に必ず使い切るようにと檄を飛ばしていました。使わなければ国に返還になり、次年度以降減額される恐れがあったからです。そんな中、この交付金は福祉や教育などには使えないというのが分かり、文化や観光分野、戦後処理事業に使い道が集中するようになりました。また単年度主義の予算なので、当局を弁護するわけではありませんが、じっくり考える余裕がなかったはずです。仮に基金に積んでもいいという制度であれば、数年かけてじっくり使い方を検討していくこともできたと思います。爬龍船や大綱挽きの大綱、2体の壷屋焼き大シーサーなどのモニュメント作りがなされた背景には、制度的な縛りの側面があり、龍柱もその背景から生まれた事業の一つでした。龍柱の最初の予算案が上程されたのは2012年12月議会でしたが、この時は松山公園に1本建てる予定でした。走りながら考えたからか、半年後には若狭緑地に2本と変わりました。
なお現在では、教育や福祉にも使えるように変わってきています。
と予算ありきの事業だったようです。
・龍柱
沖縄は日本の一部ですが、かつて琉球王国として栄えた歴史がある以上、独自の文化を持っています。獅子のような姿のシーサーも一例。街の各所で、沖縄の人たちを見守っています。シーサーほどメジャーではないものの、龍柱も那覇市内に多数あるようでした。観光について大事なことは、そこに行きたいと思わせること。だからこそ、龍柱を使っての地域振興もありな気がしました。ただし県政を率いる翁長知事に対して、龍柱が反米親中の象徴ともなって、多くの批判を集めているのも事実。
このようにいろいろな意見がありますが、既に龍柱は完成しました。そこにある以上、シンガポールのマーライオンに匹敵するような観光シンボルになって頂くしかありません。愛らしい顔をしていましたし、シーサーに並ぶ人気キャラクターを目指して欲しいものです。
ちなみに私が沖縄のシンボルとしてお勧めしたいのは巨大なヤンバルクイナの展望台で、本島最北端の辺戸岬の近くに立っています。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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