富士山の過剰に連なる山小屋の実態、商行為と自然保護が決して結ばれない現実


「山小屋のオーナーになりたい」。楽な仕事ではありませんが、誰もが自由に国立公園の中で山小屋を経営できるわけではないですから、競争相手はいません。富士山であれば、黙っていたって客が来ます。そうした限られた競争の中で、誰が善悪の判断をつけるのでしょう。何か問題のある店は下界なら淘汰されますが、競争の少ない山小屋では期待ができません。彼らは商売のためなら、なんだってします。そうすると必ず自然は汚れます。こうした中で世界遺産登録は認められるのでしょうか?富士山が目指しているのは、「自然遺産」ではありません。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。働いてみるまで、富士山のことを知りませんでした。富士山に登ってきましたが、この記事もずっと書きたいと考えていました。

7月の初めから1ヶ月間の間、富士スバルライン終点の五合目(標高2305m)で働きました。ここも一応国立公園内なので、電気と水がありません。それでも売店や食堂があったりします。電気は大型の自家発電機で動かしていて、水は給水車で運んでいます。特に水は貴重で、トイレでも節水を促す張り紙をしていました。ただ、こんな所でもシャワーがあったりします。登山したあとに浴びるシャワーは最高でしょう。でも、それって変じゃないですか?「富士山メロンパン」という名物のために、オーブンがあります。郵便局があります。24時間使える自販機があります。ソフトクリームが食べられます。クレジットカードも使えます。電子マネーWaonも使えます。アウトドアブランドのモンベルのショップもあります。売るためには、何でもできるのです。臨時の交番もありますよ。「ATMはないですか」とよく聞かれたのですが、今後できるかもしれません。

富士山スバルライン五合目。ここはたくさんの観光客や登山客で賑わいます。


五合園レストハウス。


富士急雲上閣。


富士山みはらし。


こみたけ売店。


郵便局。


公衆トイレ。


パトカーが待機する臨時交番もあります。


マイカーで埋まる駐車場。


バス乗り場。


富士山には水と電気がありません。


しかし、お金を出せばシャワーが使えます。4分で500円。


繁忙期には4分700円に値上がりします。


国立公園内でわざわざ焼き上げる「富士山メロンパン」に違和感を覚えました。これがアリなら、各テーブルに鉄板を用意した「富士山噴火焼肉」、ベルトコンベアを用意して「富士山一周回転寿司」も出てきかねませんよ。


24時間動き続ける自動販売機。


缶が150円、500mlのペットボトルが200円です。


そして登山道の山小屋も折り重なっていて圧巻でした。まるでテーマパークのようです。自然を楽しむというより、山小屋を渡り歩く感じがしました。スバルライン五合目から頂上までには14軒もの山小屋が建っています。でも「雨宿りすらお代をいただきます」という山小屋には近づきづらいです。

山小屋では宿泊だけではなく、食堂や売店もあります。売店ではお菓子やジュースが売られていて、頂上に近づくにつれて値段が高くなっていきます。そして頂上にも売店がありました。400円もしますが、自動販売機まで動いています。登山道のトイレは有料で200円を払わないといけません。山頂にいたっては300円払うところもあります。お財布に小銭が必要でした。これらの山小屋や頂上の売店まで荷物をあげるのはブルドーザーの役割で、山肌に専用の道があります。

七合目「花小屋」


七合目「日の出館」


七合目「トモエ館」


七合目「鎌岩館」


七合目「富士一館」


七合目「鳥居荘」


七合目「東洋館」


八合目「太子舘」


八合目「蓬莱館」


八合目「白雲荘」


八合目「元祖室」


八合目「富士山ホテル」


八合目「トモエ館」


八合五尺「御来光館」


こうして連なる山小屋はテーマパークのよう。


宿泊のために干してある寝袋。


何もかもが高くなる山小屋の値段設定。


ビールも売っています。


たくさん積まれた行動食。


値段一覧。


売店の窓に置かれたインスタント麺。自分で用意すれば、何も必要はないんでしょうけどね。


ツアー客にぶつかると混雑します。


有料の六合目仮設トイレ。


登山道のトイレの大半は200円。


こちらも登山道のトイレ。


自然とは遠い人が住む場所。


たくさんの雨水タンク。


料理のためのガスボンベ。


天気がよかったので、頂上では布団が干されていました。


頂上にある郵便局。


山頂のトイレは300円。


頂上にまであった自動販売機。


値段は400円です。


連絡先住所がないのはなぜ?


山肌を削られたブルドーザー道。


登山客は立ち入り禁止です。


資材運搬の車両。


こうした富士山の売店や山小屋は過剰ではないでしょうか?

日本には知床や白神山地といった世界自然遺産があります。屋久島も世界自然遺産で、日本一周の際に宮之浦岳に登った際には自然の中を気持ちよく歩きました。富士山とは違います。「富士山を世界遺産」にという運動がありますが、進められているのは世界文化遺産への登録です。京都や奈良の寺社と一緒の文化遺産です。自然遺産への登録が見送られたのは、富士山の商業主義も一因でしょう。かつて富士山の山小屋のし尿は垂れ流しだったそうです。最近ですら、「6年前から富士山山小屋汚水垂れ流し9回にわたり200リットル以上 県が調査へ」とニュースになっています。

富士河口湖町の商業施設に掲げられた「富士山を世界文化遺産に」という幕。


富士河口湖町の富士急の駅でみかけた「富士山を世界遺産に」というポスター。


人が増えれば、それだけ自然に負荷がかかります。五合目では何でも売っていました。その分、ゴミを増やしていました。登山で使い終わった木の杖が店舗の裏で何十本も積み重なっていたり、ツアーのお客さんに無料で配っている軍手が頂上に落ちていたり。富士山の自販機にはゴミ箱はありません。そうして訪れる人もゴミを置いて帰ります。五合目の公衆トイレはゴミでいっぱい。登山道にもペットボトルなどが落ちています。

このトラックが満杯になれば下界へゴミを降ろします。国立公園で店が活動すれば、それだけゴミは出てきます。


目に付いた資材はゴミなのかどうなのか。


公衆トイレに置いていかれたゴミ。


洗面所にもゴミ。


登山道にもペットボトルが落ちていました。


頂上付近の柵の向こうに飛び出した青いゴミ。


「ゴミを持ち帰ろう」と促すポスター。


こちらは頂上にある立て看板。


富士山の自然を考えるのであれば、国立公園の入園料を取るべきです。そうすれば、必然と登山者の意識も高くなります。アフリカのボツワナの国立公園ナミビアの国立公園では入園料を払いましたし、世界三大瀑布の一つであるビクトリアの滝もそうです。登山道の整備やトイレの設置には税金も使われていますので、利用者が負担する形が望ましいのではありませんか?

「ここ最近で富士山で新規に建てられた山小屋はない」と電話で聞きました。そして「新規に建てるのも難しい」と。結果、限られた競争しかありません。その中で感じたのは、山小屋の常識は日常の非常識ということでした。富士山頂の売店で働く人たちが、少し離れた場所から空き缶に石を投げ入れて盛り上がっています。人が少ないとはいえ、登山者が通る道の真ん中を使ってですよ。寒気がしました。富士山スバルライン五合目では馬に乗れます。パイプ椅子にのけぞってお客を待つ人。これも驚きです。でも、これは途上国で見慣れた懐かしい光景でもあります。店先で麻雀をする中国の従業員、スーパーマーケットの前でトランプゲームするアフリカの従業員……。いや、でもここは日本で、富士山です。白い眼で見られるでしょう。

頂上にある売店。


「お釣りがありません」、働いていた所がそうでした。スーパーのレジなら、開店とともにお釣りも枚数がそろっています。でも、そうではなくて開店と同時に5千円札が足りなくなります。自分がアフリカを旅したときに出会ってイライラした問題を、日本で提供する立場となって申し訳なかったです。お米の水を目分量で測っていたのですが、常識なら計量カップを使います。休日なしで30日間働かされ、人が足りなかった前半は12時間労働、30分しか取れない休憩と、労働環境も唖然とするものでした。下界なら淘汰されかねない環境でも、競争がなければ大丈夫。利権にぶら下がれる構造がうらやましかったです。

2008年の一時帰国の際にも夏は北アルプスで働きました。「生ゴミは自然に還る?」「燃えるゴミはドラム缶?」「し尿の処理は川で大丈夫?」……そこで働いて以来、山小屋にはずっと疑問を感じていました。

多いときはこれだけの登山靴で靴箱が埋まります。


缶ビール600円、ペットボトル500円。


荷物の運搬にはヘリコプターが使われています。


水を運んでいるホース。


使われていないのに残されていたホース。


朝と夜に数時間ずつだけ動かす発電機。


燃えるゴミを燃やしていたドラム缶。


生ゴミは自然に還る?


競争のない山小屋の自由は、競争の中で暮らす一般の負担になっているのではないでしょうか?その負担を押し付けていることを山小屋のオーナーが自覚しているかは疑問です。旅から帰ってきて感じたのは、自由な競争が繰り広げられている日本の社会の強さでした。現状が少しでも良くなるように山小屋の口コミサイトでもあればいいんですけどね。口コミが集まれば、判断もしやすくなるでしょうし。

強いテーマですが、いろいろと意見をください。自分は、山小屋に頼らないテント泊の登山にあこがれます。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
)

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in 取材, Posted by logc_nt