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「ISPは著作権侵害の責任を負わない」と最高裁判所が判断した一方で海賊版サイトを取り締まるための新法案提出が進んでいる


アメリカの最高裁判所は2026年3月に「著作権侵害の疑いのある加入者にサービスを提供したことでISPが責任を負うことはない」という判決を下しました。この判決を受けて「ISPが海賊版サイトをブロックする理由がなくなる」と取り締まりの鈍化が懸念される中、アメリカの議員らはISPとDNSリゾルバに海外の海賊版サイトを遮断することを義務付ける法案の作成を進めています。

U.S. Lawmakers Work on Unified Site-Blocking Bill to Counter Online Piracy * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/u-s-lawmakers-work-on-unified-site-blocking-bill-to-counter-online-piracy/


電話通信会社のコックス・コミュニケーションズは2018年に「著作権侵害を繰り返すユーザーを完全に排除できず、海賊行為から利益を得ている」として大手レコード会社グループに提訴されました。2026年3月26日に最高裁判所は、ISPに責任を問うにはサービス提供者が著作権侵害を意図していたことを証明する必要があり、証明するためには「サービス提供者が積極的に侵害行為を誘発した」または「当該サービスに実質的な非侵害用途がない」のどちらかに該当する必要がありますが、コックス・コミュニケーションズの場合はどちらにも当てはまらず、「コックス・コミュニケーションズは海賊版利用者の著作権侵害行為について共同責任を負わない」と結論付けています。

著作権侵害の責任をISPにも求めた裁判で最高裁判所が「サービス提供だけでは幇助にならない」と判断 - GIGAZINE


この最高裁判決は、著作権侵害や児童ポルノ法違反などのオンライン犯罪において、サービスを提供するISPやプラットフォームに悪意が確認できる場合を除いて責任を求めるべきではないと判断したものであり、サービス提供側の大きな勝利と言えます。実際に、Xは「著作権侵害ユーザーを意図的に見て見ぬふりをしていたためXに責任がある」としていた2024年の判決から継続している訴訟について、コックス判決に基づいて棄却を申請しています。

一方で、審理に参加した一部の最高裁判事が「ISPに対し著作権侵害の停止を義務付ける『セーフハーバー条項』を時代遅れにし、ISPが自社のサービス内で行われる海賊行為に対して何らかの措置を講じる動機がなくなってしまう」として判決を批判したように、サービスを提供するISPやプラットフォームにオンライン犯罪の責任を求めないという判断は、取り締まりを鈍化させる可能性があると懸念されています。


アメリカ議会下院議員のゾーイ・ロフグレン氏は2025年1月に、外国の事業者が運営していると見られる海賊版サイトを対象とした遮断命令をISPとDNSリゾルバに下すことができる「外国デジタル著作権侵害対策法案(FAPDA)」を提出していました。また同年9月には、上院議員であるトム・ティリス氏が複数の超党派議員の指示を得て、サイトがブロッキング回避のためのドメイン名やIPアドレスを変更した場合に新しいドメインに既存の裁判所命令を修正できる動的ブロッキングを含めた「Block BEARD法案」の草案を発表していました。

2025年時点では両院の取り組みは連携していない個別の法案でしたが、TorrentFreakが入手した情報によると、ティリス上院議員とロフグレン下院議員は2026年前半からそれぞれが個別に提案しているサイト遮断に関する法案を1つの法案にまとめる草案を作成してきたそうです。


ロフグレン氏は、2011年に提案されその後廃案になった「オンライン海賊行為防止法案(SOPA)」に対し「ブロッキングはオープンなインターネットを脅かす」と強く反対した議員の1人でした。今回の新法案はブロッキングを推奨するものになるため、ロフグレン氏の立場が当時から転換したことを示しています。ロフグレン氏は「FADPAの提案は、適正手続きに配慮し、言論の自由を尊重しつつ、限定的かつ的を絞った阻止手法を用いる『賢明で的を絞ったアプローチ』だと考えています」と語りました。

情報筋は「ティリス氏の任期が2027年1月に終了する前に草案が提出される必要がある」と述べたのみで、草案の中身や具体的な提出時期については記事作成時点で公表されていません。予想される内容としては、FAPDAとBlock BEARDを複合する形で、ISPと大手DNSプロバイダの両方に海外の海賊版サイトをブロックすることを義務付けることを目指していると考えられます。

さらに、下院司法委員会の裁判所・知的財産・インターネット小委員会の委員長であるダレル・イッサ議員からも「アメリカ著作権保護法(ACPA)」という別の提案が出されています。ACPAは「通常の地方裁判所の管轄権に頼るのではなく、米国司法会議が著作権侵害訴訟を審理する指定裁判官のリストを維持する」ということを提案しているもので、2025年6月頃から草案の形で検討されていますが、正式には提出されていません。

これらの法案が単独の法案として提出されるのか、包括的な法案に盛り込まれるのかなどの詳細は不明ですが、コックス判決により法的な状況が大きく変化したことで、ISPやDNSプロバイダ、権利保有者を取り巻くサイトブロッキングのルールについて大きな注目が集まっています。

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in ネットサービス, Posted by log1e_dh