メモ

中国で「独身の日」が20兆円規模の経済効果を生み出す行事になった理由とは?


毎年11月11日は中国で「独身の日」と呼ばれ、独身者向けにさまざまな販促活動が行われます。コロラド大学ボルダー校で心理学を教えるピーター・マグロウ氏は、一体どうして独身の日が生まれたのか、こうした販促活動はアメリカでも実施可能なのかについて論じました。

Singles’ Day is a $150B holiday in China. Here’s why I think ‘11/11’ will catch on in the US
https://theconversation.com/singles-day-is-a-150b-holiday-in-china-heres-why-i-think-11-11-will-catch-on-in-the-us-266566


独身の日は1990年代に南京大学の学生たちがバレンタインデーに対抗して始めたものとされています。あるときから大手ECサイトがこのイベントに乗じて販促活動を行うようになり、今や年間1500億ドル(約23兆円)もの経済効果を生み出す一大イベントへと拡大しました。

自身も独身者であるというマグロウ氏は、「独身生活が消費行動と市場力学をどう変容させているか」について研究しており、独身の日あるいはそれに類するものがアジア地域を超えて世界中に共鳴し得ることを確信したとのこと。その理由は、世界中で独身者が増えているためだといいます。


独身の日が中国で生まれたのは偶然ではありません。1980年から2015年まで実施された一人っ子政策により、多くの家庭が息子を望むようになり、男女比の歪みが生じ、何百万もの男性が潜在的な結婚相手を失いました。同時に、教育とキャリア機会の拡大により、多くの女性が伝統的な結婚を完全に放棄して自立する機会を手に入れたため、女性の結婚に対する価値観も変わりました。

こうした傾向は東アジア全域で見られます。日本では、単身世帯が子どもを持つ夫婦世帯数を上回り、韓国では2023年に単身世帯が約36%に達し、過去最高を記録。こうした変化が相まって、日本では「お一人様」、韓国では「혼족(ホンジョク:ひとり族)」と呼ぶ文化が台頭するようになりました。


アジアの企業はこの機会を捉え、一人用カラオケブースや単独客向け映画館など、独立したライフスタイルに対応したサービスを提供しています。独身の日もビジネスチャンスの1つで、毎年アジアの小売業者はテーマ別のプロモーションや先行販売を行いこの日を盛り上げます。Xiaomiは限定スマートフォンを発売し、ナイキは毎年新スニーカーを発表。航空会社も参入しており、シンガポールのジェットスター・アジアは11万1111席の割引航空券を提供し、一人旅をエンパワーメント体験として位置付けました。「独身の日」は巨大な購買意欲をかき立て、独身を「嘆くもの」ではなく「祝うべきもの」と再定義するようになりました。

一方、アメリカや世界の多くの地域では、企業には「結婚は万人の宿命」という価値観があります。マグロウ氏はこれを「時代遅れの価値観」だと見なしています。

というのも、アメリカでも独身者が多く、成人の半数が未婚であり、その半数は交際相手を求めていないからです。1960年には、生涯独身でいるアメリカの成人はわずか10%でしたが、2025年では29~44歳のミレニアル世代の25%が結婚しないとの予測があります。初婚年齢は1960年には21歳でしたが、2025年では29歳まで上昇しています。


マグロウ氏は「独身者の多様な目標やライフスタイルを理解することで、アメリカの企業も競争優位性を獲得できるはずです」と指摘。数十年にわたって変化し続けた結婚への価値観が、アメリカの大半の企業から依然としてほとんど見過ごされていると述べました。

ただし、近年では改善の兆しも見られるそうです。例えば2021年、MVNOのVisible Wirelessは「家族向けプラン」を「友人・家族向けプラン」へと変更。2024年には、ノルウェージャン・クルーズラインが一人旅客向けスタジオキャビンを導入し、長年問題視されてきた「一人客追加料金」の解消に取り組みました。同様にIKEAも、2024年にはカップル限定のバレンタインディナーを提供しましたが、2025年は「大切な人、親友、家族全員を連れてきてください」という包括的なプロモーションに転換しました。

しかしこれらは例外であって一般的な傾向ではないため、マグロウ氏は「この成長市場にアピールするため、全ての独身者がロマンスを求めるわけではないという価値観を学び、独身者向けイベント、独身ライフスタイルを反映した非恋愛的な体験を創出しましょう。一人で生活し、一人で行動する人々向けにサービスを最適化してください。独身者は至る所に存在しますが、二人組を前提に構築された世界では依然としてほとんど見過ごされています。アジアにおける独身の日の台頭は、企業が独身層を真剣に捉えた結果です。アメリカも遅かれ早かれ追随するでしょう」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「独身の日」に中国のアリババが仕掛けたオンラインショッピングイベントの取引総額が3兆円弱に到達 - GIGAZINE

「独身の日」の売上記録をAlibabaが更新、秒速4000万円で物が売れまくる - GIGAZINE

わずか1時間で1兆4000億円の売上を記録する「独身の日」セールがスタート - GIGAZINE

「独身の日」セールで7兆9000億円の売り上げをアリババが記録 - GIGAZINE

「独身の日」セールで超人気ストリーマーの「口紅王子」が1日で2000億円以上の商品を売りさばく、消費者爆増でシステム故障も - GIGAZINE

in メモ, Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article Why has China's 'Singles Day' become….