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創業2年で旅を愛する人たちから絶大な支持を得たスーツケースメーカー「Away」とは?


2015年に創業したスーツケースメーカー「Away」が2018年6月にシリーズCの投資ラウンドで5000万ドル(約90億円)の資金調達に成功しました。創業3年の新興スーツケースメーカーは、225ドル(約2万5000円)という比較的安価なスーツケースを武器に、320億ドル(約3兆5000億円)という巨大な旅行用カバン市場で躍進し続けています。

Up, up, and Away: the luggage upstart taking on industry giants
https://www.fastcompany.com/40590583/up-up-and-away-the-luggage-upstart-taking-on-industry-giants

Fast Companyのエリザベス・セグラン氏は、バカンスでイタリア旅行に出かけました。カフェでマキアートを飲んだり、美術館に行ったりと、休暇を満喫したセグラン氏は、フィレンツェやアトランタ、フロリダの空港などいたるところで「Away」ブランドのスーツケースを持つ旅行者を見かけたそうです。2015年までAwayというブランドが存在していなかったという事実を考えれば、わずか2年半でスーツケースメーカーとして築き上げたAwayの存在感は驚くべきものだとのこと。


この新興のスーツケースメーカーAwayを創業したステフ・コーリー氏とジェン・ルビオ氏は、メガネブランド「Warby Parker」で働いていたころに知り合いました。コーリー氏がサプライチェーン構築を、ルビオ氏がソーシャルメディアを手掛けたWarby Parkerは、驚くべき速度でオンラインのメガネ販売として、規模を拡大することに成功しました。

「旅行」という共通の趣味を持つ二人はすぐに意気投合すると、いつしか「簡単には壊れない手ごろな価格のスーツケースが欲しい」という互いの欲求を共有し、その情熱のあまり二人で旅行者のためのスーツケースメーカーを立ち上げることになりました。こうしてできたのが「Away」です。

左がルビオ氏で右がコーリー氏。


旅行向けスーツケースの市場は大きく二つに分かれています。一つは、Rimowaに代表される高級ブランドが出す1000ドル(約11万円)クラスの高価格スーツケース。そして、もう一つが100ドル(約1万1000円)強の低価格スーツケースです。旅行好きの二人にいわせると、この間の価格帯には、手ごろな代替品がないとコーリー氏とルビオ氏は感じていました。「私たちの周りには、自分のスーツケースを心から愛している人はいませんでした。これは私たちにとっては不思議なことでした。消費者に真に訴えかけ、消費者が愛着を抱くブランドはなかったのです」とルビオ氏は述べています。

二人はForerunner VenturesやAccel partnersから250万ドル(約2億8000万円)の出資を受けると、コーリー氏をCEOに、ルビオ氏を副社長兼チーフブランドオフィサーに据えてAwayを創業しました。2016年1月に最初のハードシェルタイプのキャリーオン・スーツケース4色を価格225ドル(約2万5000円)で発売しました。これはTumiのスーツケースの約半額で、SamsoniteAmerican Touristerなどのものと同等の価格ですが、「生涯保証」というユニークな特典がつけられました。旅行者にとって壊れるリスクを気にすることなく末永く使えるという安心感を得られる生涯保証は魅力的で、最初の1年間に5万台のスーツケースを売ることに成功したとのこと。


創業1年目から利益を上げているという事実は投資家たちからの出資を引き出しやすい条件でもあり、AwayはシリーズCラウンドで5000万ドル(約55億円)の資金調達にも成功。Awayはわずか2年半で8100万ドル(約90億円)の出資を得ることに成功しています。

セグラン氏によると、デジタルネイティブとして創業したメーカーにとって、ブランド力を高めることは非常に難しいものだとのこと。多くのデジタルネイティブメーカーは、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアに広告費を投じています。そして可能ならば、テレビCMや看板などにも広告費を割いています。しかし、そのマーケティング費用は非常に高く、次から次へと商品を開発し販売するシーズン商品の場合にのみ広告は有効に機能します。一度購入すれば永く使うことが前提で、頻繁な買い替えを想定してないスーツケースを販売するAwayにとっては、多額の広告費を費やすことは有効ではありません。

そこでブランディング戦略としてAwayは「Here Magazine」という旅行雑誌を出版しました。Hereは文化的なレポートや写真、エッセイ、有名な旅行者へのインタビュー、都市ガイド、地元のクリエイターの紹介など旅行者にとって価値のある情報を提供する雑誌です。Awayのスーツケースを宣伝するためではなく、旅行者と価値観を共有するために発行されています。共通の価値観を持つHere読者は、Awayの価値を理解してもらえるだろうと考えたというわけです。


そして、Awayはスーツケースを購入した顧客に、再びスーツケースを売るのではなく、別の商品を売るという戦略を採用しました。それは、スーツケースに収める梱包袋や衣料バッグ、トイレタリーバッグなど旅行に必要なものを販売すること。Awayは「travel uniform」と呼ばれる旅行に必要なもの一式をAwayブランドとして取りそろえることにしました。ルビオ氏は「Awayの顧客が、他社の旅行携行品を投げ捨てて、Awayへ再びエンゲージしてくれるのを見るのは、本当に素晴らしい体験です」と述べています。


コーリー氏は資金調達に明け暮れているときに、「スーツケースなんて気にしていない」という多くの投資家に出会ったとのこと。そして、ミレニアル世代を潜在的な顧客としてみていないスーツケース業界を「時代遅れ」に感じたそうです。コーリー氏とルビオ氏によると、Louis VuittonやRimowaのような高級ブランドは、確かに「旅行のロマンス」を製品としての形に変えようとしていましたが、あまりにも高価だったとのこと。一方で、SamsoniteやAmerican Touristerのような確立されたブランドは、あまりにも機能性にフォーカスしていたとのこと。ここに、巨大な機会損失があると考えたそうです。


「私たちはミレニアル世代が『モノ』から『体験』へと価値観を変化させているのを見ました。これは、彼らが本質的に『もっと旅をする』ということを意味していました。古くからあるブランドはこの価値観を拾い上げませんでした」とルビオ氏は語ります。Awayの目標は、スーツケースメーカーになることではなく、「旅行のプラットフォーム」になることだとのこと。

投資家のダニエル・グラティ氏は、225ドル(約2万5000円)のスーツケースを買う余裕があって旅行を愛する人は世界中に多くおり、Awayの販売網は今後、アメリカからヨーロッパ、アジアにシフトするとみています。「Awayは顧客に寄り添い、彼らが望むものを追い求め、買いたいと思うモノを作ることに興味を持っています。もしも旅行者が、旅行を計画し、ホテルに滞在しようと考えているなら、Awayには多くのことができるでしょう」と述べ、スーツケースという物理的な製品販売からスタートしたAwayが、旅行という市場で今後さらに活動を広げていくと予想しています。

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