ボブ・ディランはたった1人の観客のためにコンサートをしたことがある

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アメリカのシンガーソングライターであり、歌手として初めてノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン氏は2014年のある日、「たった1人の観客のためのコンサート」で演奏しました。一体なぜディラン氏がそのようなコンサートで演奏したのか、コンサートの観客はどう感じていたのかについて、音楽ブロガーのレイ・パジェット氏が観客へのインタビューを基に記しています。
The Bob Dylan Concert for Just One Person - by Ray Padgett
https://www.flaggingdown.com/p/the-bob-dylan-concert-for-just-one

2014年12月、フィンランドのオンラインゲーム会社が、「ディラン氏がたった1人の観客の前で演奏する様子」を撮影した動画を公開しました。この動画は、普通は大勢でやることをたった1人でやるというコンセプトの「Experiment Ensam(1人で経験する)」という動画シリーズの1本で、観客に選ばれたのはスウェーデンのテレビ司会者であるフレドリック・ウィキンソン氏でした。
コンサート会場はアメリカ・フィラデルフィアの美しく古い劇場で、ウィキンソン氏の他は数台のカメラが設置されているだけでした。ディラン氏は通常のコンサートとは異なり、1950年代のカバー曲を4曲演奏しましたが、その中にはディラン氏がその場以外で歌ったことがない曲も含まれていたとのこと。
今回パジェット氏は、実際にコンサートの観客となったウィキンソン氏に、当時のことをインタビューしました。以下の写真は実際のコンサートを撮影したもので、客席にぽつんと座っているのがウィキンソン氏です。

ウィキンソン氏は「Experiment Ensam」の監督と知り合いであり、あるパーティーの場で、Experiment Ensamでは次に「ボブ・ディランのコンサート」をやると知らされたとのこと。ディラン氏の熱烈なファンだったウィキンソン氏は、たった1人の観客になるのは大ファンである自分以外にあり得ないとアピールし、見事にその役目に選ばれました。
とはいえ、本当にディラン氏がたった1人のためにコンサートをするのかどうかは最後まで半信半疑だったそうです。ウィキンソン氏はたくさんの関係者やディレクター、広報担当者との会議に同席していた間も、ずっと心の半分ではドッキリ番組かもしれないと疑っていたと語っています。
しかし、ウィキンソン氏がコンサート会場へ入って着席して待っていると、しばらくしてディラン氏がやってきて演奏を開始しました。ディラン氏がこれほど奇妙なコンサートの依頼を受けた理由について尋ねられると、ウィキンソン氏は「きっと大金をもらったんでしょう。その後、史上最高額のサウンドチェックだったとか、ちょっとしたうわさが飛び交いました。実際、あれはサウンドチェックみたいなものだったんです。彼はサウンドチェックで、たまに遊びで演奏するんですよね」と述べています。
ウィキンソン氏はコンサートが開かれるまで、「ディラン氏が居心地の悪い思いをするのではないか」「ディラン氏の1日を最悪なものにしてしまうのではないか」と不安だったとのこと。しかし、実際にディラン氏が演奏を始めると、そのような思いはすぐに消え去ったそうです。
また、ディラン氏がカバー曲ばかりを演奏したことについて、ウィキンソン氏は「彼は現在のセットリストを3、4曲演奏するだろうと予想していました。彼がそれ以前にも、その後にもほとんど演奏したことのない曲を演奏してくれたことは、私にとってこの上ない喜びでした。それが、このライブをさらに特別なものにしてくれたのです」と述べています。

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コンサート前は不安に満ちていたウィキンソン氏でしたが、バンドの演奏は非常に素晴らしいものであり、ディラン氏を含むメンバーが本当にいいコンサートにしたいと思っているのが伝わってきたとのこと。ウィキンソン氏は奇妙な状況の中でも普通に振る舞おうとして、「みんな、良い音してるよ!」と叫んでみたところ、ディラン氏は少しほほえんでくれたそうです。またディラン氏は、空っぽの部屋を見回してくすくす笑い、最後に「いつでも来てね」と冗談を言ってバンドメンバーと笑い合いました。
ウィキンソン氏はこのディラン氏の反応について、「あれで私の1日、1週間、1年が最高なものになりました。緊張もすべて吹き飛びました。『よし、これでいいんだ』と思えたのです。彼は彼なりに、この状況を気に入ってくれたのです」「音楽や体験全体もそうですが、何より彼を少し笑わせて、何かを言わせることができたという事実を、永遠に大切にしたいと思います」と述べています。
中でも印象深いのはディラン氏がハーモニカを吹いた時のことだそうで、「少し一般論を言うなら、それまでは歌詞がすべてだと思っていて、音楽的な側面を過小評価していたのかもしれません」「でも、彼が僕だけのためにハーモニカを吹いてくれた時は、特別な何かを感じました」「馬鹿げているように聞こえるかもしれませんが、この経験を通して、音楽が私にとってどれほど大切なものだったかを、私は過小評価していたのかもしれないと感じました」と語っています。
なお、ウィキンソン氏は、マネージャーを通じてディラン氏のサインをもらえるかもしれないと考え、どのアルバムを買っていこうかとCDショップで考えたとのこと。その結果、あまりにも深く考えすぎて「ディラン氏がレコーティングしたとのうわさがあるフランク・シナトラのカバーアルバム」を買ってしまったそうです。
そしてコンサートの後、ディラン氏のマネージャー経由でサインをもらえそうになったものの、マネージャーから「シナトラのアルバムにサインするなんて失礼なこと、ボブは絶対にしない」と断られ、結局サインをもらい損ねてしまいました。ウィキンソン氏はその日の夜、シナトラのアルバムをフリスビーのように遠くへ放り投げたとのことです。
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in メモ, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article Bob Dylan once performed for just one au….







