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タトゥー除去レーザーの仕組みはどうなっているのか?


一部の人々はファッションや自己表現の手段としてタトゥー(入れ墨)を入れますが、タトゥーが入っているとMRI検査が受けられないケースがあったり、温泉施設の利用を断られたりといったデメリットも存在します。そんなタトゥーを消すために行われるレーザー治療の仕組みについて、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しています。

Tattoo Removal Is Insane - YouTube


タトゥーを入れている人の4人に1人はタトゥーを入れたことを後悔しているそうで、アメリカでは2500万人がタトゥーを入れるべきではなかったと考えているとのこと。


特に若者は、現代のカルチャーを反映したイラストや人生の節目を記念したメッセージ、自分の個性をアピールするような図柄、集団の一員であることを示すマークなどをタトゥーで表現することがあります。


しかし、年をとるにつれてタトゥーのメッセージが自分にそぐわないものになったり、価値観が若い頃と変わったり、タトゥーが汚いものに感じられたりして、タトゥーを消したくなってしまうことも多いとのこと。今日ではレーザーによるタトゥー除去を望む人が急増しており、歯科医の受診と同じくらい一般的になっています。


タトゥーをレーザーで除去することは、「身体に対して行える最も金属的な行為」のひとつだそうで、強い痛みを伴うハイテクな処置だとKurzgesagtは述べています。


そもそもタトゥーでは大きな針で傷口を作り、インクを真皮の奥深くまで注入することで肌に着色します。


体はタトゥーインクを除去しようとするものの、インクの粒子は免疫細胞が運び去ったり飲み込んだりするには大きすぎます。そこで応急処置として、線維芽細胞とともにインクをその場にとどめます。これにより、タトゥーの色が定着するという仕組みです。


タトゥー除去レーザーは、定着したインクの粒子を破壊することで機能しますが、人体に大きなダメージを与えずにインクの粒子を破壊するのは困難です。


タトゥー除去レーザーは基本的にX線や紫外線、Wi-Fiなどと同じ電磁放射線であり、これらは光の速度で空間を移動する光子です。エネルギーが強いほど周波数が高くなり、パンチ力も増します。


人間の肌をゼリー、インクの粒子を焦げたトーストのかけらだと考えてみます。電灯で照らしてみると、ほとんどの光はゼリーを通り抜けますが、焦げたトーストのかけらはより多くの光を吸収するため、はっきりと見えます。


同様に、特定のレーザー周波数はほとんど皮膚にダメージを与えることなく通過しますが、暗いインクの粒子はこの光を吸収します。なお、インクの色によって吸収する色は異なるため、消したいタトゥーの色によって異なる色のレーザーを用いる必要があります。


近年では、1兆分の1秒ほどの非常に短いパルスで照射されるレーザー(ピコレーザー)を用いてタトゥーを除去するケースが増えています。


実際にタトゥー除去レーザーを照射した時、何が起きているのかを見てみます。


高エネルギー光子のパルスがほぼ光速で腕に当たり、皮膚を通過して真皮にまで到達します。ほとんどの細胞はレーザーのエネルギーをあまり吸収しないため、ほぼ無傷のままです。ところが、そのまま光子が進んでインクの粒子に衝突すると事態は変わります。


高エネルギーの光子がインクの粒子にぶつかる時間は、たった1ナノ秒(10億分の1秒)だけです。しかし、光子がインク粒子の分子にぶつかると、光子は分子中の電子に吸収されて消滅します。つまり、光子のエネルギーがすべて電子に移されるというわけです。


この突然のエネルギー流入は行き場のない熱に変換され、インク粒子の温度は瞬く間にセ氏200~600度に上昇。突然の熱に圧倒されたインク粒子は急速に膨張し、強力な物理的ストレスによって激しく裂け、爆発するかのように砕けるとのこと。


こうして、タトゥーが入っている場所では、水が沸騰するほど熱い大量のインク粒子の破片が生み出されます。


これが皮膚の中で起きるため、周辺組織や細胞内の水分は瞬時に蒸発し、急速に膨張します。これは細胞を引き裂き、皮膚の内側に熱い蒸気の泡からなる空洞を作ります。さらに、突然の膨張による衝撃波が近くの組織を破壊し、さらなる混乱と損傷を引き起こすとKurzgesagtは解説しています。


これまでタトゥーを維持していた細胞たちは大混乱に陥り、小さなインク粒子を内部に保持していた細胞は引き裂かれ、大きなインク粒子を取り囲んでいた細胞も深刻なダメージを負います。また、その部位にある小さな血管は激しく引き裂かれ、出血するとのこと。タトゥー除去レーザーは繰り返し照射されるため、こうした出来事が局所的に何度も起きるというわけです。


治療を受ける人は感電したような鋭い痛みを感じたり、焦げた髪の毛のような臭いを嗅いだり、パチパチと何かが割れるような音を聴いたりします。


レーザーが当たったタトゥーの部分はすぐに白くなります。これは、皮膚の下で熱いガスの泡が膨張するためです。痛みを和らげるために、照射した部分をしばらく冷風で冷やすこともあります。


レーザー照射後の体内では、加熱されて引き裂かれた細胞の破片が熱されたインク粒子の破片や水蒸気の中に浮かび、多くの細胞が傷ついて化学的シグナルを発しています。これはまるで、体内でやけどが発生したようなものだとのこと。


レーザー照射を受けた部位には大量のマクロファージが流れ込み、汚れを一掃します。この際に炎症が誘発され、血管が開いて水が流れ込みます。その結果、傷ついた皮膚は腫れ上がって赤くなります。


また、インク粒子の破片は体液によって流されたり、マクロファージによって捕食されてリンパ節に運ばれたりします。


可能であればインク粒子はさらに分解され、尿とともに体外へ排出されます。そうでない場合はリンパ節の中に集められ、そのまま生涯にわたってとどまるとのこと。


しかし、1回のレーザー照射ですべてのインク粒子が処理されるわけではなく、インク粒子の大部分は依然として大きすぎるか、処理するには多すぎる量が残っています。


そのため、ある程度のインク粒子はレーザー照射後もその場にとどまり続けます。これが、レーザー照射でタトゥーを除去するには5~12回のセッションが必要となる理由です。照射のたびにタトゥーの一部が除去され、次第に薄くなっていきます。


タトゥー除去レーザーの照射を受けると、最初に数時間ほどでタトゥー周辺の皮膚がひどい日焼けのように赤く腫れ、チクチクした感じになります。多くの場合は水ぶくれになって腫れ上がりますが、そのままにしなくてはなりません。


数日間は傷口が赤く腫れて痛みを感じたり、かゆみを覚えたりします。


約1週間後には傷ついた皮膚が新しいピンク色の皮膚に置き換わり、傷口がかさぶたになります。


タトゥーは次第に薄くなっていき、経験豊富な専門家による治療を受ければ、2カ月ほどでほぼ完全にタトゥーが消えるそうです。


しかし、非専門家による治療を受けたり古い治療法を選択したりすると、わずかな傷跡が残ったり皮膚の色が変化したりすることもあります。


Kurzgesagtは、「誰にレーザーを照射してもらうのかを決める際には、よく調べてください」とアドバイスしました。

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in 動画,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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