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呼吸には生物の「大きさ」が多大な影響を与えている、その理由とは?


多くの生物が「呼吸」によって生存に必要な酸素を取り入れ、不要な二酸化炭素を排出しています。こうした呼吸には実は「体の大きさ」や「拡散」と呼ばれる現象が密接に関わっているということを、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがコミカルなアニメーションムービーで解説しています。

How Large Can a Bacteria get? Life & Size 3 - YouTube


生きるということは、絶えず何かを行うということです。人体の細胞は絶えず酸素を消費してグルコース分子を燃焼してエネルギーを生成しています。このエネルギーのおかげで、我々は生きることができているわけです。


酸素を細胞に届けるために人体が行っているのが、呼吸です。


生きとし生けるもの全ては、何らかの方法で外部から得た資源を体内の細胞に行き渡らせていますが、この方法はある要素に応じて著しく異なります。


この要素とは、「サイズ(体の大きさ)」です。


体の大きさに応じて、温度や微小重力、表面張力などの単純な物理法則の影響は異なります。これらの影響は体が大きければ無視していいレベルかもしれませんが、体が小さければ致命的になり得ます。


また、生きるために必要な物質も生き物によって異なります。


地球の歴史においてごく初期に誕生した生命体は、酸素分子を分解してエネルギーを生み出す能力を有していませんでした。そのため、原始の生命体は「エネルギーを使わずに必要なものを体内に取り入れて、不要なものを体外に吐き出す」という方法を編み出す必要がありました。


原始の生命体にとって幸運だったのは、「体が小さかった」ということ。原始の生命体は体が小さかったおかげで、「拡散」という物理法則を利用することができました。


拡散とは、液体分子や気体分子などの三次元的に絶えず動き回る分子がお互いにぶつかり合うことで、広範囲に散らばるという現象です。


拡散を理解するための好例が、角砂糖を水に入れるという例。


角砂糖が水に徐々に溶けるにつれて、水中では砂糖分子が水分子や他の砂糖分子に押され始めます。


時間の経過と共に全砂糖分子は水中に一様に広がり、砂糖水の濃度は場所に応じて均一化します。これが拡散というわけです。


生命にとって拡散の最も優れている点は、エネルギーなしで利用できるということです。重力や拡散、日光のように、エネルギーなしで利用できる要素は生命にとって最重要です。


ここで、地球において最も小さな生命体である「バクテリア(細菌)」の体表について考えます。


バクテリアの体表に存在する細胞膜は、特定の分子のみを拡散するという性質を持っています。


例えば、人類のように酸素を消費して二酸化炭素を生み出すバクテリアの体内では、酸素分子が乏しくなる一方で、二酸化炭素分子は余ります。しかし、これらの分子には拡散が作用するため、細胞膜の内外で徐々に分子の濃度が均一化され、体内で欠乏した酸素分子は体内に自動的に取り込まれ、余った二酸化炭素分子は体外に排出されます。


拡散を利用した酸素分子と二酸化炭素分子の移動は、呼吸に近いものだといえます。しかし、拡散による呼吸は、バクテリア(体長1~10µm)・ヒト細胞(4µm~0.1mm)・アメーバ(5~2000µm)や、ごく小さなクラゲ・海綿動物・扁形動物しか行えません。


昆虫は体内に存在する気管で非常にゆっくりと拡散を行っています。しかし、昆虫は気管を収縮させて呼吸を行っていると考えられており、多くの昆虫は気門や気嚢などの呼吸器官を有していることから、純粋に拡散のみで生きているわけではなさそうです。


このように、ある程度体が大きい生命にとっては、拡散は細胞を維持するエネルギーを得る速度が遅すぎるという問題があります。


拡散による呼吸の根本的な問題とは、分子の交換が体表付近でしか生じないことと、交換できる量が限られているということです。そのため、拡散による呼吸だけで生きられるのは、表面積が大きく体積が小さい生き物だけということになります。


ここで仮に、バクテリアをシロナガスクジラのサイズまで大きくできる拡大機が存在するとしたら、いった何が生じるのでしょうか。


シロナガスクジラのサイズになったバクテリアにとっての大きな障害が、「2乗3乗の法則」です。2乗3乗の法則とは、一辺の長さが10倍になった場合には、表面積は2乗の100倍、体積は3乗の1000倍になるというもの。


バクテリアの一種である緑膿菌とシロナガスクジラの比表面積を考えた場合、緑膿菌はクジラに比べて1000万倍も大きな比表面積を有しています。


言い換えれば、緑膿菌は体積に比べて表面積が巨大ですが、クジラは表面積に比べて体積が巨大ということ。


そのため、バクテリアをシロナガスクジラのサイズまで巨大化した場合には、表面積に釣り合う形で体積が増えるため内部のスペースが増加し、内臓と体表の距離が広がると考えられます。


内臓と体表の距離が広がった場合、拡散によって酸素を細胞に届けることが不可能になり、巨大化されたバクテリアは酸欠で死ぬことに。


体が大きいということは捕食されにくく、さらに他の生き物を捕食しやすいというメリットがあります。


しかし、拡散によって十分な酸素や栄養を内部に行き渡らせるためには、細胞の大きさがある程度小さくなくてはいけません。


細胞の大きさには制限があるため、生命は「細胞の数を増やす」という方向に進化しました。小さな細胞を多数有していれば、拡散の有効活用が可能です。


さらに細胞は、働きを共有したり、細胞ごとに働きを特化させたりという方向に進化。


加えて、全体としてより大きくなっても拡散に対応するために、中央に穴や空洞を空けたり、たたみ込まれたりというように、構造の面でも進化しました。


こうした構造の進化の代表例が肺です。人間の皮膚の表面積はおおよそ2m²ほどですが、肺の表面積は70m²にも達します。


人間の肺は、血管に取り巻かれた小さな風船でみっしり埋め尽くされたスポンジのような存在です。ひとたび息を吸い込むと、小さな風船の内部が新鮮な空気で満たされ、風船を取り巻く血管には二酸化炭素で満たされた血液が流れ込みます。


拡散が作用するのはこのときです。吸い込まれた酸素が拡散によって血液中に広がり、二酸化炭素は血液から肺に戻ります。その後、酸素は赤血球に拾われ、二酸化炭素も息を吐くことで体外に放出されます。


体内において拡散は1mmの距離にしか作用しません。これが、人体の全細胞が血管から1mm以内に存在している理由です。


人体の全毛細血管を1本につなぎ合わせた場合、その長さは地球を2周半できる10万kmほどに、その表面積は1000m²にも達します。


体積に比べて長さと表面積が大きいというのは、血管に限らず外部と何かを交換する全ての部位において同様です。食べ物から栄養を摂取する部位である胃腸の表面積は、バドミントンコートの片面に相当する40m²ほど


拡散が生じる場所の表面積が大きいというのは、日光と大気から糖を合成する光合成を行う木も同様です。2000枚の葉を持つオレンジの木の場合、葉を含めた表面積はおよそ200m²、バスケットコートの片面に相当しますが、実際に拡散が生じている葉の「表面の内側」の面積は6000m²に達します。


地球上にはさまざまな生命が存在しており、呼吸法も複数存在します。しかし、いずれの呼吸法も拡散という基本原理を利用しているという点だけは、何十億年も変化していません。体の小さな生き物も体の大きな生き物も、何らかの方法で不要な要素を排出して必要な要素を取り入れています。体の大きな生き物は、単に複雑な配管が必要というだけだとKurzgesagtはまとめています。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1k_iy

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