なぜ高層ビルからネズミとゾウを落とすとネズミだけ生き残るのか?
地球上にはさまざまなサイズの生物が存在しており、サイズが異なると高いところから落下した時の結果や、生命の脅威となる対象まで異なってきます。そんな生物によって異なるサイズの影響については、「高層ビルからネズミとゾウを落とすとどうなるのか?」などを例にアニメーション付きで分かりやすく解説したムービー「What Happens If We Throw an Elephant From a Skyscraper? Life & Size 1」を見るとよくわかります。
What Happens If We Throw an Elephant From a Skyscraper? Life & Size 1 - YouTube
生き物は種類によってサイズが異なります。
ネズミ・犬・ゾウというサイズの異なる3種類の生き物を、高層ビルの屋上から投げ出すとどうなるのでしょうか。
落下地点にはマットレスが敷かれており、ネズミが着地すると、少しの間気絶して、突然高層ビルから投げ出されたことに腹を立てながら、走って逃げていくでしょう。
犬は全身の骨を骨折して死亡します。
ゾウは着地の衝撃で骨から内臓までを派手にぶちまけて爆発し、バラバラになってしまいました。
なぜそれぞれ結果が異なるのか、それは「サイズ」が関係しています。
生き物は3マイクロメートルという極小なものから、30メートルを超える巨大なものまで、さまざまなサイズをしています。
なぜ生き物の種類によってサイズが異なるかについて解説するには、高層ビルから投げ出された3種類の動物に戻って考えていきましょう。
ネズミが生き残れたのはサイズが小さいためで、サイズが小さくなればなるほど、重力の影響が少なくなります。
例えばノミのような小さな生き物は、ネズミ以上に高いところから落下しても、致命傷を受けることはありません。
これを説明するため、シャボン玉くらいのサイズをした球体の生物が存在すると仮定します。球体であるため、高さ・表面積・体積を簡単に調べることができ、球体の内部には内臓や筋肉が詰まっているものとします。
この球体生物の高さを、約10倍となるバスケットボールまで大きくすると、どうなるのでしょうか。
すべての数値が同じ10倍になるのではなく、表面積は100倍になり、体積は1000倍になってしまいます。
体積は体重を表わしています。動物は体重が増えれば増えるほどに地面に衝突する時の運動エネルギーが大きくなり、衝撃が大きくなります。
表面積が広くなるほど、着地した時の衝撃が拡散されて和らぐことになり、さらに空気抵抗も大きくなって落下速度が減速します。ネズミが高層ビルから投げ出されて死ななかったのは、高さ・表面積・体積のバランスが良く、落下のダメージが小さかったため。
一方でゾウは体積に対する表面積が小さすぎたため、空気抵抗による減速の恩恵を受けられず、大量の運動エネルギーが発生し、猛烈な衝撃に表面積が耐えきれずに爆発してしまったわけです。
昆虫は小さな体積に対して大きな表面積を持っています。
そのため、高層ビルどころかフライト中の飛行機から投げ出されても、重大な被害を被ることはありません。
一方で、人間などの生き物にとっては脅威ではないものの、昆虫にとっては「ひとしずくの水滴」が危険な存在となります。
なぜなら、水は「凝集性」という性質によってお互いを引き付けあっており、表面は見えない皮膚のような張力を生み出しているため。
この「見えない皮膚」の力は人間にとってはとても弱いものであるため、ほとんど気付くことはありません。
プールから上がってびちょびちょの人間の体に800gの水滴がついているとすると、人間の体重の約1%の水を身につけていることになります。人間にとっては気付かないほどの重さですが、サイズが小さい動物ほど水の影響を受けやすくなります。
水からあがったネズミの体に3gの水滴がつくと、それは体積の10%に匹敵します。
人間でいうと、シャワーを浴びる度に1リットルの水を入れたボトルが8本も絡みついているようなもの。
ネズミよりさらに小さい昆虫にとって、水の表面張力は無視できない脅威となり得ます。
もし人間がアリサイズになり、葉にたまった水滴に触れると……
水はまるでのりのような吸着力であなたを取り込んでしまうでしょう。アリのサイズでは「見えない皮膚」を自力で壊すことはできないため、溺れて死んでしまいます。
しかし、多くの昆虫は水の性質に対処するため、撥水性を持つように進化しています。例えばカブトムシの外羽はワックスがけした自動車のように、部分的な撥水性を持っています。
ハチのような昆虫は、水のバリアーとなる無数の小さな毛を持っています。これらの毛は表面積を大幅に増加させる役割を持ち、外骨格に水が浸入する前に水滴をはじき飛ばすことができます。
この表面張力に対抗するナノテクノロジーは、人間が生まれる数十億年前に生み出されたもの。
いくつかの昆虫は、1平方ミリメートルあたり100万本以上の撥水毛を持っており、水中に入っても空気の皮膜を保つことができます。しばらく水中にいると、二酸化炭素の気泡だけが被膜の外に排出され、代わりに水中から新しい酸素だけが通り抜けます。潜水可能な昆虫は肺の外で呼吸できる仕組みを備えているため、水中で溺れることはありません。
アメンボが水面をスイスイ移動しているのも同じ原理で、足にある撥水性の毛を用いて空気の被膜を作り出しているわけです。
さらにサイズが小さくなると、空気すら危険なものになることがあります。世界最小の昆虫である「ホソハネコバチ」は、塩のわずか半分にあたる0.15mmというサイズを持っています。
ホソハネコバチにとって空気は薄いゼリーのようなもの。
空を飛び回るのは容易ではなく、鳥のように滑空するのではなく、空気を握って飛行しています。
そのためホソハネコバチは通常の昆虫の羽を持たず、大きな毛の生えた腕を使って、空気をつかみながら飛んでいるわけです。
地球上には数々の進化を遂げ、さまざまなサイズになった生物が数多く存在するわけですが、なぜ馬と同サイズのアリや、ゾウと同サイズのアメーバは存在しないのでしょうか。この点については、続編となるムービーのパート2で解説されるそうです。
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