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殺人犯になる可能性が高い人物を特定できる「殺人予測システム」をイギリス政府が開発していた


イギリス司法省が殺人犯になる可能性が高い人物を特定するための「殺人予測システム」を極秘に開発していると、イギリス市民団体のStatewatchが明らかにしました。この取り組みは2023年1月に当時のリシ・スナク政権が「殺人予測プロジェクト(Homicide Prediction Project)」として始めたもので、将来誰が殺人を犯す可能性が高いかを予測することを目的としています。

Statewatch | UK: Ministry of Justice secretly developing ‘murder prediction’ system
https://www.statewatch.org/news/2025/april/uk-ministry-of-justice-secretly-developing-murder-prediction-system/


UK creating ‘murder prediction’ tool to identify people most likely to kill | Crime | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk-news/2025/apr/08/uk-creating-prediction-tool-to-identify-people-most-likely-to-kill

この殺人予測プロジェクトは、Statewatchが情報公開請求を通じて入手した複数の公文書に記されていたものです。入手された文書には、司法省の「データ保護影響評価」、「内部リスク評価」、そしてグレーター・マンチェスター警察との「データ共有合意書」が含まれていました。


殺人予測プロジェクトはイギリスの刑事司法制度において使用される「犯罪者リスク評価システム(OASys)」の改良を試みるもので、データサイエンスの手法を活用して殺人のリスク評価を向上させることを目指しており、最大で50万人分の個人データがこのツール開発のために共有されていました。

司法省の広報担当者は「殺人予測プロジェクトは研究目的のみで実施されています。刑務所・保護観察サービスと警察が保有する有罪判決を受けた犯罪者のデータを使用し、保護観察中の人々が重大な暴力犯罪を犯すリスクをより良く理解するためのものです」と説明しています。

しかし、Statewatchによれば、データには犯罪の容疑者や被害者、目撃者、行方不明者、保護の対象となっている人々の情報が含まれていたとのこと。加えて、「健康マーカー」と呼ばれる精神健康、依存症、自傷行為、自殺、障害に関するデータが「重要な予測力を持つ」と期待されていることも判明しました。


Statewatchの研究者であるソフィア・ライアル氏は、「殺人予測プロジェクトは政府が犯罪予測システムを開発しようとするものであり、冷酷でディストピア的です」と批判しています。実際、イギリス法務省が発表している(PDFファイル)過去の研究でも、アルゴリズムが白人に対しては高い精度を示す一方で、アジア系や黒人、混血の被告には予測精度が劣るという結果が報告されており、Statewatchは「殺人予測プロジェクトで開発されているシステムは無罪推定の原則や基本的人権に反する差別的なものであり、大きな問題がある」と主張しました。

ライアル氏は、「このようなシステムにリソースを投入することは、支援や福祉の充実といった根本的な安全保障策とは対照的です」と述べ、技術による安直な解決策に依存することは、かえって社会の安全と人々の福祉を損なう結果になると警鐘を鳴らしました。

なお、イギリス日刊紙のThe Gurdianによれば、当初このプロジェクトは「殺人予測プロジェクト」と呼ばれていましたが、途中で「リスク評価を改善するためのデータ共有(sharing data to improve risk assessment)」という名称に変更されたそうです。

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in ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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