銀河の自転方向に偏りがあることをジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が発見、「宇宙はより大きなブラックホールの内部」との理論が強化される

「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機として開発された超高性能宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」はこれまで、渦巻銀河の構造を明らかにしたほか、観測史上最古の銀河の撮影にも成功しています。新たに、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が無数の銀河を観測した結果、多くの銀河が時計回りに回転していることを発見しました。研究チームによると、これは「シュワルツシルト宇宙論」を強化するものとのことです。
distribution of galaxy rotation in JWST Advanced Deep Extragalactic Survey | Monthly Notices of the Royal Astronomical Society | Oxford Academic
https://academic.oup.com/mnras/article/538/1/76/8019798

Study finds Milky Way rotational velocity should be factored in deep space observation
https://www.k-state.edu/news/articles/2025/03/lior-shamir-james-webb-space-telescope-spinning-galaxies.html
Is our universe trapped inside a black hole? This James Webb Space Telescope discovery might blow your mind | Space
https://www.space.com/space-exploration/james-webb-space-telescope/is-our-universe-trapped-inside-a-black-hole-this-james-webb-space-telescope-discovery-might-blow-your-mind
地球や月、太陽が自転するように、銀河も自転しており、その方向は時計回り・反時計回りの2種類があります。もしも宇宙が完全にランダムだった場合、銀河の自転方向の割合は時計回り・反時計回りともに50%となります。しかし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、対象となった263の銀河のうち3分の2が時計回り、3分の1が反時計回りに自転していることが判明しました。

カール・R・アイス工科大学のリオン・シャミール准教授は「自転方向の偏りが発生する明確な原因は分かりませんが、1つの可能性としては『宇宙が自転した状態で生まれた』というものがあります。これは、全宇宙があるブラックホールの内部であると仮定するシュワルツシルト宇宙論と一致しています」と説明しています。
シュワルツシルト宇宙論とは、人間が観測可能な宇宙は、より大きな宇宙に漂うブラックホールの内部であるという理論です。ブラックホールには「事象の地平面」と呼ばれる境界面があり、それを超えると光でさえも逃れることはできません。言い換えると、ブラックホールの内部に存在する人間が事象の地平面を超えて外部を観測することはできないということです。
この宇宙は丸ごとブラックホールの中にあると主張する「シュワルツシルト宇宙論」とは? - GIGAZINE

ブラックホールは大質量星が崩壊した時に生まれる天体で、その中心には既知の宇宙のモノをはるかに超える密度を持つ物質が存在しています。ブラックホールに引き込まれた物質は「特異点」と呼ばれる重力が無限大となるような場所に落ちていくことになりますが、ニューヘイブン大学の理論物理学者であるニコデム・ポプラウスキー氏の理論では、特異点に落ちていくにつれ、物質のねじれや回転、物質同士の結合が非常に強くなり、ある一点を超えると、物質は崩壊を止め縮められたバネのように反発し、急速に膨張を始めるとされています。また、急速な膨張の過程では無数の粒子が生成されることになり、ブラックホール内の質量は指数関数的に増加することになるそうです。
ポプラウスキー氏はこうしたブラックホール内での物質の跳ね返りによる反動が「ビッグバン」と呼ばれる現象につながったと提唱しています。
そのため、ポプラウスキー氏は銀河の自転方向の偏りについて「我々の宇宙を内包するブラックホールの回転方向が銀河の自転方向に影響を与えた可能性があります。一方で、残り3分の1の反時計回りに自転する銀河はブラックホールの特異点を回避し、新たな宇宙を作り出すメカニズムを担っています」と説明しました。

ポプラウスキー氏は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による銀河の自転に偏りがあるという発見は、ブラックホールが新たな宇宙を創造するという理論を支持するものであり、これらの理論がいつか認められることを願っています」と述べています。
一方でシャミール氏らの研究チームは銀河の自転方向の偏りについて「天の川銀河自体の自転の影響」という可能性も指摘しています。従来の宇宙論では、天の川銀河の自転速度は非常に遅く、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測には影響をもたらさないと考えられてきました。シャミール氏は「今回の観測結果が天の川銀河の自転速度によるものという事実が確認されれば、深宇宙の距離測定を再調整する必要が生じます。距離測定を再調整すれば、宇宙の膨張率の違いや宇宙より古い星の存在など、宇宙論におけるさまざまな問題を解決することにつながるかも知れません」と語りました。
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in サイエンス, Posted by log1r_ut
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