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クレームや議論に直面したとき相手をヒートアップさせない心理学的なテクニックとは?


学校や職場などで、意見が合わなかったり態度が攻撃的だったりと、あまり好ましくない人とぶつかってしまうことはありがちです。そのような場合に役立つ心理学的なテクニックについて、専門家が解説しています。

What verbal de-escalation techniques are used in complaint handling? - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378216623003053

How to Talk to the Most Difficult People | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/why-bad-looks-good/202502/the-words-that-can-disarm-difficult-people


オンラインでのコミュニケーションにおいて、攻撃的な言葉や「レスバトル」と呼ばれるような言い争いなど、強い言葉の量はどんどん増加しています。オランダのラドバウド大学でコミュニケーションや文体についての研究をしているマルゴット・ ヴァン・ムルケン氏が2024年1月に公開した論文では、オンラインで寄せられるクレームに対応するウェブケアでどのような言葉が用いられているか研究しています。

研究では、X(旧Twitter)で行われた苦情と応答のサンプルを調査し、議論をデエスカレーション(沈静化)する言語的および修辞的特徴を特定しました。その結果から、研究者らは苦情を送ってきた人の感情をデエスカレーションするのに役立つテクニックを3種類に分類しました。

1つ目のカテゴリは「共感性」です。論文によると、苦情を送ってきた人をヒートアップさせないフレーズには、顧客との感情的なつながりを伴うものが多かったとのこと。これには、感謝を述べること、共感や同情を表現すること、肯定的なボキャブラリーなどが含まれています。


2つ目は「信頼性」。信頼性とは「従業員の反応が個人的であり、かつ本物であること」が重要であるとするものです。自動化された機械的な回答は、仮に状況に合った内容であったとしても、議論をヒートアップさせてしまう傾向にあります。優れたウェブケアの従業員は、「本当に」「とても」といった「アップグレーダー」や「たぶん(低い確信度)」「~するべき(願望)」といった「モダリティ・マーカー」、間投詞、感嘆詞などを文章に入れることで、応答が自動化されたものでも、スクリプト化されたものでもないことを証明して自発的でリアルな回答をしていると相手に感じさせます。

アップグレーダーは表現の強さを増すための表現で、たとえばクレーム対応の際に「申し訳ありません(I'm sorry.)」と書くよりも、「本当に申し訳ありません(I'm really sorry.)」と書いた方が、誠実な態度が伝わりやすい傾向にあります。また、モダリティ・マーカーは、話し手がどのように考えて発話しているかを示す言語的な要素であるため、対応がより人間らしく、機械的にではなく「個別に対応してもらっている」と感じさせる効果があると論文では述べています。

3つ目の戦略は「適応性」です。社会心理学者のハワード・ジャイルズ氏が1991年の論文で提唱した「コミュニケーション適応理論」では、「人は相手との関係を良くするために、会話のスタイルや言葉遣いを適応(調整)する」ということが示されました。ジャイルズ氏によると、人が会話を調整する方法には相手の話し方に近づいて言葉遣いや口調をまねる「収束」と、相手とはあえて異なる話し方をすることで自分の立場やアイデンティティを強調する「分岐」があるとのこと。ウェブケアの場合は、顧客と対立しないように「収束」を意識することが重要で、顧客の言葉遣いや考え方に合わせて会話を進めると、顧客は「この担当者は自分のことを理解している」と感じて対応がスムーズになりやすくなります。


適応性の具体的なテクニックとして、論文では以下のような例が挙げられています。

・顧客の話し方や文体をまねる
「〜がひどすぎる!」と怒る顧客に対して、「その点が問題であるのは」と言い換えるのではなく、「その点がひどいのは」と同じ言葉を使うことで共感を示します。

・対話を促す
「具体的にどの点が気になりましたか?」など、顧客にさらに話してもらうよう促すことで、対応が丁寧だと感じさせます。また、「さらに疑問があったら返信をお願いします」のように、継続的な対応を約束することでも、顧客の安心感を高めることができます。

・共通点を強調する
相手が指摘する部分を共感することで、相手対こちら側の対立ではなく、「同じ問題点に立ち向かうチーム」という感覚を生むことができます。

検察官でメディア研究家のウェンディ・L・パトリック氏は、ムルケン氏の論文を踏まえた上で、自身の経験と合わせてウェブケア以外でも役立つ「好ましくない相手との議論を和らげるための方法」をまとめています。パトリック氏によると、まずしっかり相手の話を聞くことで、コミュニケーション適応理論を活用するための下地を得ることが重要とのこと。その上で、一般的な理論ではなく個人に合わせた対応を練る必要があります。また、ヒートアップした相手には、まずじっくり耳を傾けながら少しずつ適切な言葉をかけて、気持ちを落ち着かせることが理解と支援の意思を示す第一歩です。パトリック氏は「積極的なリスニングと言語学を組み合わせることで、困難な会話を緩和し、関係構築と信頼関係を通じて提案された解決策に誘導することができます」と語っています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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