サイエンス

1人で過ごす時間を「孤独」ではなく「自分時間」と呼ぶとポジティブな気分になれるという研究結果


1人で過ごす時間は孤独でさみしいものだと考えている人もいるかもしれませんが、近年は「自分時間」という言葉で1人の時間を肯定的に捉える動きもあります。新たな研究では、1人で過ごす時間のことを「孤独」や「1人の時間」といった言葉で呼ぶよりも、「自分時間」と呼んだ方がポジティブな感情が増し、1人で過ごす時間を肯定的に考えられるようになることがわかりました。

Full article: From “isolation” to “me-time”: linguistic shifts enhance solitary experiences
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02699931.2024.2445080


Labeling alone time as “me-time” enhances positivity and well-being
https://www.psypost.org/calling-time-alone-me-time-boosts-positive-feelings-and-improves-perceptions-unlike-labeling-it-isolation/

人々が自分の経験をどのように捉えるのかは、感情・意思決定・社会的相互作用を形成する上で重要な役割を果たしています。過去研究では、同じ内容であってもそれを指し示す言葉を変えることにより、人々の知覚や感情に異なる影響を及ぼすことがわかっています。

今回、アメリカのミシガン大学で心理学を研究するミカエラ・ロドリゲス氏らの研究チームは、1人で過ごす時間を指し示す言葉を変えることにより、人々の知覚や感情にどのような変化があるのかを調べるために2つの実験を行いました。


1つ目の実験ではアメリカに住む500人の成人に対し、無作為に「Me-Time(自分時間)」「Time Alone(1人の時間)」「Solitude(孤独)」「Being Alone(1人でいる)」「Isolation(孤立)」の5つどれかを割り当てて、それぞれの言葉についてさまざまな質問をしました。

質問の内容は「○○はあなたの健康と幸福にとってどの程度いいですか、あるいは悪いですか?」「○○はどの程度ポジティブですか、あるいはネガティブですか?」「○○を減らしたいと思う頻度はどれくらいですか?」「『アメリカ社会は○○をもっと評価するべき』という文言にどの程度同意しますか?」といったものでした。この「○○」に、それぞれの被験者が割り当てられた言葉が入ったとのことです。

回答を分析したところ、被験者は言葉は違うものの実際には同じ経験について尋ねられているにもかかわらず、割り当てられた言葉によって有意に異なる評価を下したことが判明。「自分時間」は一貫して最もポジティブで望ましいものだと評価され、被験者はそれが幸福にとって有益であり、積極的に経験したいものだと認識していました。対照的に「孤立」は最も望ましくないものだと考えられており、その他の言葉も「自分時間」ほどポジティブなものだとは捉えられていませんでした。


2つ目の実験では、ミシガン大学の学部生176人を被験者として募集し、実際に自宅や研究室などで30分間にわたり「1人の時間」を過ごしてもらいました。被験者は30分間の実験中、対面またはデジタルで他者とのコミュニケーションが取るのを控え、物理的な距離も保つように求められました。なお、被験者はコミュニケーションを含まなければ、読み書きといった非社交的な行動に従事できました。

研究チームは、被験者に1人の時間を過ごすように求める際、ランダムで「自分時間」あるいは「孤立」といった用語を用いました。「自分時間」に割り当てられた被験者には「さて、次の30分間は『自分時間』を過ごしてください」と指示が与えられ、「孤立」に割り当てられた被験者には「さて、次の30分間は孤立した状態で過ごしてください」と伝えられたとのこと。


被験者は30分間にわたり1人の時間を過ごす前後で自分の感情を評価し、30分間でどのように感じたのか、どのような行動をしたのか、何を感じたのかについて回答しました。そして最後に、1人で過ごす時間がどのようなものであるのか、「みじめなのか、それとも楽しいのか」「悪いことなのか、それともいいことなのか」「退屈なのか、それとも面白いのか」「不健康なのか、それとも健康的なのか」といった項目について評価しました。

実験の結果、被験者は「自分時間」を過ごすように言われるとポジティブな感情の増加を報告しましたが、「孤立」するように言われるとポジティブな感情の低下を報告することがわかりました。また、「自分時間」に割り当てられた被験者は、実験後のアンケートでは1人で過ごすことについてよりポジティブに考えていました。

興味深いことに、被験者に割り当てられた言葉によって、1人の時間に従事する活動に大きな変化はみられなかったとのこと。しかし、「孤立」した被験者は学業について考える傾向があった一方、「自分時間」を過ごした被験者は自分の成長について考える傾向が強かったそうです。


研究チームは、「これらの実験は、人々が1人の時間をどのように経験するのかを形成する言語の役割について、予備的ではあるものの新しい洞察を提供します。非常にシンプルで比較的簡単にできる言葉の変更ですが、1人でいる時間を『孤立』ではなく『自分時間』と呼ぶことで、1人でいる時間の感情的影響や人々の信念に大きな変化がみられました」と述べています。

心理学系メディアのPsyPostは、「これらの発見は心理的経験の形成における言語の力を強調し、孤独な経験を改善するためのシンプルで実践的な介入を提供するものです」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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