「AIが生成した芸術作品は著作権で保護できない」とアメリカの控訴裁判所が判断

2025年3月18日に、アメリカの連邦控訴裁判所がAIが生成した芸術作品に対する著作権保護を求める裁判を棄却しました。裁判所は「人間の入力なしにAIによって生成された芸術作品は、アメリカの著作権法では保護できない」と判断しています。
United States Court of Appeals FOR THE DISTRICT OF COLUMBIA CIRCUIT Argued September 19, 2024 Decided March 18, 2025 No. 23-5233
(PDFファイル)https://media.cadc.uscourts.gov/opinions/docs/2025/03/23-5233.pdf
US appeals court rejects copyrights for AI-generated art lacking 'human' creator | Reuters
https://www.reuters.com/world/us/us-appeals-court-rejects-copyrights-ai-generated-art-lacking-human-creator-2025-03-18/

今回の裁判の上訴人であるコンピューター科学者のスティーブン・セイラー氏は、DABUSと呼ばれる独自のAIシステムを開発・利用し、2018年に視覚芸術作品「A Recent Entrance to Paradise」を作成。アメリカ合衆国著作権局に対してこの作品への著作権を認めるよう申請しました。
しかし、著作権局は2022年2月に「AIが生成した画像には著作権によって保護されるのに必要な基準である『人間の著作権』の要素が含まれていない」との判断を下し、セイラー氏の申請を却下しています。
「AIが作った芸術作品に著作権はない」とアメリカ著作権局がAIの著作権を否定 - GIGAZINE

セイラー氏はこの判断を不服として、ワシントンの連邦地方裁判所に訴えています。これに対し連邦地方裁判所は「人間の著作者は何世紀にもわたる確立された理解に基づく著作権の根本的な要件である」として著作権局の判断を支持しました。
さらに、2025年3月18日にはコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所が「人間の入力なしにAIによって生成された芸術作品は、アメリカの著作権法では保護できない」と判断しました。裁判所のパトリシア・ミレット判事は「アメリカの著作権法は、何をおいても人間が著作することを義務付けています。著作権法の規定の多くは、著作者が人間である場合にのみ意味を成します。そのため、著作権で保護されるためには人間の著作者が必要です」と語っています。
これに対しセイラー氏は「DABUSは自身の感覚を元に開発したAIシステムで、このAIシステムが独立して作品を生成した場合、著作権による保護を受けられるべきです」と主張。セイラー氏の弁護士であるライアン・アボット氏は「判決に強く異議を唱えます」と述べ、さらなる控訴をほのめかしました。一方、著作権局は「裁判所は正しい判断を下しました」と述べています。
なお、セイラー氏は2019年にもDABUSが発明者した「形状が変形する食品容器」と「非常用懐中電灯」のプロトタイプの特許出願申請を行っています。
しかし、アメリカ合衆国特許商標庁とバージニア州連邦裁判所は2020年4月、「アメリカの特許法では、発明者は人間でなければならない」と判断し、セイラー氏の発明に対する特許出願を却下しました。
「AIは特許申請時の発明者として登録できない」とアメリカ特許商標庁が公式見解を発表 - GIGAZINE

この判断を不服としたセイラー氏はアメリカやオーストラリアで「AIを発明者として認めるか否か」に関する訴訟を展開しました。しかし、合衆国連邦巡回区控訴裁判所は、特許商標庁と連邦裁判所の判断を支持する一審判決を下しています。
「AIを発明者とは認めない」という判決がアメリカで下る、他方オーストラリアは「認める」 - GIGAZINE

また、最高裁判所は2023年4月に、これらの下級裁判所の判決に対するセイラー氏の控訴を棄却。最高裁判所は「特許は人間の発明者にのみ発行が可能で、セイラー氏のAIシステム『DABUS』は、今回の2つの発明の法的な発明者とは見なされません」と判断しています。
「AIは特許申請時の発明者として認められない」という判断をアメリカの最高裁判所が下す - GIGAZINE

・関連記事
「AIが作った芸術作品に著作権はない」とアメリカ著作権局がAIの著作権を否定 - GIGAZINE
アメリカ著作権局が「創造的なプロセスの支援にAIを用いた場合は著作権で保護される」と宣言 - GIGAZINE
「AIで作成したコミックの絵は著作権で保護されない」とアメリカ著作権局が宣言、作者は「素晴らしいニュース」と歓迎 - GIGAZINE
AIの作ったアートに初めて著作権登録が認められる - GIGAZINE
AIが生成した絵や文章に著作権は認められるのか?アメリカ著作権局がガイダンスを発表 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in メモ, Posted by log1r_ut
You can read the machine translated English article US appeals court rules that AI-generated….